第10話 クライマックス!
「さあ、レースもいよいよ後半戦! 一体誰が優勝するのか!?」
現在の順位は、ゲンブが一位。
その後ろをレイアとセド王子が追いかける。
コンドと謎の女性が背後に居る限り、油断出来ない状況だ。
「ゲンブ……。思った以上に速いな……」
セド王子が不安そうな声を上げる。
ゲンブ選手の走りは圧倒的だ。
一度もブーストをしていないのに、トップを維持している。
魔法で妨害する手段もあるが。レイアは妨害魔法が苦手。
セド王子はそもそも攻撃する余裕がない。
「そろそろ遊びは終わりにするか……。アイアー!」
背後からブーストの音が聞こえてきた。
レイアが振り返ると、謎のレーサー。
アイアーが加速しながら、レイア達の脇を通り過ぎる。
目の前には急カーブが迫っている。
アイアーの速度では、曲がり切るくことは難しいだろう。
「おおっと! アイアー選手! 最後尾から突然のブーストだ!」
カーブに差し掛かり、逆に加速していくアイアー。
レイア達はこの状況に、見覚えがあった。
――まさか……。レイアは冷汗が流れる。
「スピンファイヤー」
アイアーは体を回転させながら、速度を上げた。
急カーブをインコースで曲がり切る。
減速していたゲンブに、一気に近づく。
「これは!? レイア選手の大技だぁ! アイアー選手、一気に距離を詰めるぞ!」
アイアーは回転しながら、ゲンブに近づく。
魔道具の魔力が切れたら減速するが。
アイアーの狙いはゲンブを抜くことじゃない。
ゲンブに回転しながら、体当たりをする。
ゲンブは背後からの奇襲に対抗できず、バランスを崩す。
「なぜ私の技を……?」
レイアが呆気に取られていると、隣にコンドが現れた。
「当然だ。アイアーはお前のレプリカなのだから」
「レプリカ……?」
「お前の技を全て吸収した、人口生命体だ!」
アイアーはレイアと同じ、走り方をしていた。
仮面の下はレイアと同じ顔が、隠されている。
「唯一の違いは、俺への忠誠心のみ!」
カーブを抜けた直後、コンドはブーストを発動した。
高速でゲンブに近づき、アイアーもろとも吹き飛ばす。
ゲンブは体勢が崩れていたのもあり、スピンした。
同じく引かれたアイアーは、魔道具が大破。
爆発に巻き込まれて、コース外に吹き飛ばされる。
「なんという事だ! コンド選手、味方もろともゲンブ選手を吹き飛ばした!」
コンドはトップに躍り出た。ゴールまもうすぐそこだ。
最後の直角カーブを曲がり切ると、コースを一周する。
「この勝負。俺の勝ちだが。念のために……」
コンドはセド王子に、黒い球体を飛ばした。
王子はカーブを曲がった直後で、回避出来る体勢ではない。
初心者はカーブの直後、体を上手く扱えないのだ。
「王子!」
レイアが軽いサイドアタックで、セド王子を吹き飛ばす。
代わりに自分が球体に直撃して、背後に吹き飛ばされる。
「かかったな、レイア! 王子を狙えば、必ずお前が庇うと思ったぞ!」
レイアは大きく差を広げられた。
「レイア!」
王子が背後を振り向き、体を反転させようとする。
「来ないで! 私は直ぐに追いつく! だから貴方は……。前だけを見て!」
レイアは王子に叫んだ。正直な話、追いつける自身はない。
前半でドアを吹き飛ばした時、魔力を消耗した。
ブーストは出来て、後一回と言う所。
ならば魔力を温存した、王子に託すしかない。
レイアは体の痛みに耐えて、立ち上がる。
傷が完治していないかった。怪我をした部分が、再び痛み始める。
「レイア……。それじゃあダメだ! 俺は、君が居ないとダメなんだ!」
セド王子はレイアを無視して、彼女に駆け寄った。
ふらつく体を、支えてくれる。
「王子……。どうして……?」
「俺は非情になれないらしい。俺は君を見捨てて、一人で走れないよ」
セド王子は、レイアを引っ張りながら走り出す。
レイアは怪我の影響で、最高速度を出せない。
逆に王子の足を引っ張っている。
既にコンドからは、大きく離されてる。
――このまま逆転は難しい……。
「レイア。この状況で勝つ方法が、一つだけある。そうだろ?」
「コンビネーションブースト……」
レイア達が必死で特訓して、編み出した合体技だ。
だが技を使ったら、最終カーブを曲がれなくなる。
最後のカーブすぐ傍だ。曲がった後に使ったのでは追いつけない。
「おおっと! ゲンブ選手、持ち直した!」
ゲンブが再び前に出る。それでも遅れを取り戻すのは難しい。
コンドは既にカーブに差し掛かっている。
完璧な走り方だ。今からじゃ到底追いつけない。
「レイア。俺のアレンジを覚えているか?」
「!? でもあの技は一度も……!」
「君の走りに問題はない。あったのは俺の方だ」
セド王子は強く、レイアの手を握りしめた。
反対側の手でレイアを持ち、彼女と向かい合う。
「でも今なら出来る気がする。君と一緒なら、何でも」
「王子……! 分かりました! やりましょう!」
レイア達は互いの魔道具を、同調させた。
魔力を共有することで、一つの巨大な力を生み出す。
その力でブーストすること。それがコンビネーションブーストだ。
速度が上がる代わり、二人分の曲がり難さがかかる。
普通に発動したら、カーブを曲がり切れないだろう。
だが王子はその弱点を克服する方法を編み出していた。
「いくぞ! レイア! コンビネーションスピン!」
「フルパワー!」
二人は同時にブーストしながら、手をつないだまま回転した。
一気に速度を上げて、カーブに差し掛かる。
スピンブースと合わせる事で、曲がり難さを克服する。
だが王子にまだスピンブーストは出来なかった。
レイアも怪我が痛み、曲がり切れるか賭けだった。
それでも二人はお互いを信じて、体を回転させ続けた。
「アハハ! 俺の勝ちだ!」
カーブを曲がり切り、最後のブースト準備にかかるコンド。
その背後から、ゲンブを抜き去り近づく竜巻。
カーブをインコースで曲がり切り、コンドに迫る。
「なに!?」
コンドが気づいた時は、既に遅かった。
赤い竜巻がコンドの魔道具に接触する。
彼ごと側面に吹き飛ばし、地面にバウンドする。
「バカな! 俺の野望が! ぬおおおお!」
コンドの魔道具が地面と接触し、爆発を上げた。
レイア達は回転しながら、ゴールラインを着る。
「ゴール! 何と言う技だ! レイア選手、セド王子! まさかの大技で逆転優勝だ!」
回転を止めて、レイアは観客に手を振った。
傷が痛むのに、その様子をファンには決して見せない。
セド王子は彼女の横顔を見ながら、フッと笑った。
自分も歓声に手を振りながら、彼女の体をそっと支える。
そのままピットに入り、ふらついた彼女を座らせた。
「王子……。ナイスレースでした」
「ああ。全部君のおかげだ……」
王子は微笑みながらも、涙を流していた。
「ここまでこれたのも。もう一度立ち上がれたのも。全部レイアのおかげだ……!」
セド王子は頭を下げた。
「だから……! これからもずっと、俺の傍に居てくれないか?」
「王子……。はい!」
レイアとセド王子は、互いを支え合うように抱き合った。
その様子を影で微笑みながら見つめる者が。
三位でゴールし、レイア達の様子を見に来たもの。
「良いレースだった。よく頑張りましたね」
その人物は何も告げず、その場から立ち去った。
~ビャッコ先生の解説教室~
やあ。物語のクライマックスは面白かったかな?
私の解説は、今回が最終回です。
最後はコンドの野望について、解説しよう。
実は彼、裏で悪事を働く犯罪組織のボスだったんですよね。
元々は親がのし上がるために、悪人と繋がっていたそうですが。
その地盤を引き継いで、悪の組織を結成しちゃった訳です。
自分達が力を増すために、傀儡に出来そうなドアを利用したわけですね。
ちなみに、ドアを諭してセド王子を襲ったのも彼の組織です。
他にも余罪は沢山あります。レイアさん達に敗北した彼は、一体どうなるのでしょうか?
それはエピローグまでのお楽しみです。
無様な最後を向かえてくれると、面白んですがね~。
レイアさん達の物語は次回で完結します。
それでは皆さん、またどこかでお会いしましょう~。




