この開戸兄が歌う軍歌の効能は
この開戸兄が歌う軍歌の効能は、自衛隊を通してアメリカ軍にも知らされていた。そして、アメリカ軍を通して同盟国側にも……。最初は半信半疑だったアメリカ軍も、連戦連敗のアヌンナキ相手に藁をもつかむ気持ちだったのだが……。
その戦果は劇的だった。初めて相手の火力と性能を上回る戦力で、ついに制空権を取り戻したのだった。
それに遅れをとったのがC国とR国だ。アヌンナキの科学力と暴力の前に主要都市は壊滅状態。日ノ本やアメリカでは無かった巨大円盤型母船の都市から都市への移動を許していた。
他国の情報やネット情報で初めて軍歌のことを知り、それでも、コピーやダミーなど玉石混交のネット情報から本物をチョイスできた時には、都市も軍隊も相当な被害が出ていた。それこそ、今後100年は戦争ができないくらいには叩かれたようだ。
これも、戦争後西側が有利に立つための国際的な駆け引きだったのかもしれない。
もちろん、アヌンナキたちの攻撃もこれで終わりではない。補充戦力がニビルから巨大円盤が地球に向かって飛んでくるし、軍事衛星から迎撃のためのICBM弾が発射されても、円盤からは迎撃光線が乱射され、その爆発はキノコ雲を宇宙空間に咲かせている。
音のない宇宙空間では軍歌の歌声も届かず、逆に円盤からのレーザービームで軍事衛星は撃ち落され、成層圏の制空権を地球側は失っていた。
そんな断片的な情報を駐屯地で確認した後、俺たちはヘリポートに案内された。 そして、面食らっているうちに無理やりヘリコブターに押し込まれた。
八尾駐屯地から飛び立ったヘリは一四名乗りの多目的ヘリが五機、その五機を守るように左右にアパッチ型戦闘ヘリが2機、編隊を組んで六甲の山奥、速佐須良神社に向かっている。
BGMで流れる曲は「陸軍分列行進曲」だ。「ワルキューレの騎行」よりも日ノ本軍には合っているな?!ってどうしてこうなった?
俺たちは速佐須良神社まで送ってもらえると聞いて、駐屯地まで戻ってきたんだけど……。危険だけど、花形さんを含む函館テレビのスタッフは仕方ない。だけど、四〇名の自衛隊員まで付いてくるとは……。
アニメで見たことがある銃剣を装備した小銃や機関銃さらにはパンツァーファーストを抱える鍛えられた上半身の胸にはウイングにパラシュートのワッペンが!
感動的だ! これって陸自最強と言われる第一空挺団じゃないのか?
噂では、賭けで五階(一〇メートル以上)から飛び降りて無傷で賭け金を総取りしたとか、新宿で八九三狩りをしたとか、そんな武勇伝がゴロゴロある部隊だ。でも、確か習志野部隊のはずだけど……。
そんな疑問は花形アナウンサーの空挺団にするインタビューを盗み聞ぎして納得した。
今回の主戦場は航空部隊とミサイル部隊で、地上作戦が無いのでヤキモキしていたのだ。そこに「速佐須良神社奪還作戦」はドラゴンや宇宙人との血肉沸き立つ肉弾戦あり、さらに最重要作戦だという。そこで志願したらしい。「速佐須良神社奪還作戦」っていつ命名されたんだ?
そんな話の間中、大阪や神戸の上空は、ドラゴンが数十匹も飛び交っている。
ドアガンを装備した重機銃をドラゴンに向けて撃ちまくっている。戦闘ヘリに積んだ機関砲が火を吹き、対戦車用ミサイルが爆発して、轟音が耳をつんざく。
「とばり!! 矢ふせ!! 」
俺もドラゴンの吐くブレスを鬼法で防ぐ。BGMは『加藤隼戦闘隊』で俺たちに力を与えてくれる。ドラゴンが血しぶきとウロコをまき散らしながら、片翼を無くし錐揉み回転しながら落ちていった。
「轟沈!!!!」
歌詞に合わせて、拳を振り上げる。
遂に群がるドラゴンを振り切って、六甲山の上空から深い谷間に入っていく。六甲って武庫を六甲と当てて、音読みしたらしいが、うん、物騒な上に、六に四(死)を足すと特攻となる。
嫌な予感が胸をよぎる。
険しい谷の中ほど、眼下に土塁の上に石塁をドーム状に作られた遺跡が見えてきた。
「あれは神籠石じゃないか? 六甲にこんな遺跡があるとは……」
「そう、あの空洞の中にうちはおったらしいねん。たまたま速佐須良神社の祭りがあった日で、神主さんがこの奥の院にやって来たから、発見されただけで、祭りがなかったら、うち、どうなってたか?!」
確かに秘境だろう。あの神籠石まで行こうとしたら、崖に張り付いた梯子を上等にした非常階段のような物を一〇メートル以上登らないといけない。
両側は谷で、障害物とかを考えると、これ以上高度を下げるのは危険だ。ここから、神籠石まで、まだ一〇メートル以上ありそうだ。
「この辺りにはヘリを着陸させるところがないんで、飛び降りてもらうことになります」
一緒に乗っている隊長ぽい人がさらりというのだが……。




