「「「「無理、無理、無理!!!!」」」」
「「「「無理、無理、無理!!!!」」」」
真っ青な顔で頭を振るゼミ生とテレビクルーの面々を横目に……。
俺たちのヘリを守るように飛んでいたヘリからロープが垂らされ、ロープを伝って降下していく隊員が見える。半分本気だった?!
「じゃあ、順番にお願いします」
ウインチから出ているワイヤーを滑車に掛け、フックを持ってこちらを見ているのだ。俺たちがさっき装着したボンテージベルトはこれのためだったのだ。
「男からお願いします」
「まあ、俺は飛び降りられるけど!」
無慈悲な言葉に、さらっと返した俺に全員が疑問の目に……。
「こんな時に、冗談もほどほどにしとけや!」っていう目だ。
「君、ほんとに行けるの?」
自衛隊員の質問に返事を返さず、俺は開けっ放しのドアから躍り出た。
「もののふ!! 飛び浮石!!」
俺は風で創った浮石を飛んで、神籠石の前に飛び降りた。先に降下した隊員たちもここまでは登ってきていない。
石塁がドーム状になった祭壇?の中を覗き込む。奥行き1メートルほど縦1.5メートル横1メートルぐらいの一枚岩が扉のようにそこにあった。
扉にはクサビ型文字が彫られている。やはり、開戸妹がいないと読めない。
俺が飛び降りたヘリから今度はワイヤーにつるされて開戸兄が降ろされている。
そして、驚いたことにヘリを振り出したのだ。開戸兄はブランコのように振り回されて悲鳴をあげている。さらにヘリのドアから上半身を乗り出しワイヤーを大きく揺すってっているのは隊長さんだ。
振り子のようにふり幅が大きくなって、こちらまであと少しというところで、階段を上っていた俺に追いついた隊員が、鳶口(とびぐち:江戸火消しが破壊消火のために、鳶のくちばしのような鉄製の穂先を長い柄の先に取り付けた道具)で開戸兄を引っかけて引き寄せた。
そして、素早く開戸兄を素早く確保すると、自分の持つロープで非常階段をワイヤーに結び付けて、ヘリに向けて合図を送った。
そこからは早かった。ワイヤに滑車を滑らせて、次から次へとゼミ生たちやテレビクルーを降下させたのだ。
そして、最後に隊長がワイヤーを滑り降りてくる。さすが本職、スピードが違う。的にならないためにもスピードは重要だ。
隊員たちはいまだに腰が抜けたように動けない開戸妹をはじめとする女性たちをおぶって神籠石のところまで上がって来た。
救助は女性たちだけのようだ。
「開戸さん、これはなんて書いてあるんだ?」
まだ、目がうつろで焦点があってない開戸妹に促した。ちなみに今流れているBGMは「月月火水木金金の起床ラッパ」だ。早く目を覚ませや!ゴラァ!
「うーんと、この門をくぐる者、一切の希望を捨てよ?」
なぜ、疑問形? この言葉は「ダンテの神曲」の地獄の門に書かれていた一節と同じだ。
デ〇ルマンの元ネタだと聞いたことがある。最下層で悪魔が氷漬けになっていたはずだ。しかし、「ダンテの神曲」にも元ネタがあった。シュメール神話のイナンナの冥界渡り、ただ、メソポタミア神話のイシュタルの方が有名かもしれない。
みなさん、扉の先は地獄だと宣言されましたけど……。
しかし、さすが最強の空挺部隊、ビビることなく、扉岩の下にバールを突っ込み、梃の原理で岩を持ち上げ、そのまま、奥へと押しやり扉を開けてしまった。
バールまで装備しているとは……。そこは俺の仕事を横取りされた気がする。
外から覗く穴は壁がぼんやり明るく、直系2メートルぐらいの先の見えない曲がりくねった洞窟だ。
そこで隊長が指示を飛ばし、この洞窟に突入するのは三小隊三〇名、他の一小隊はここで、ドラゴンの襲来に備え、戦闘ヘリとともに待機。作戦を指示すると……。
「時間を合わせる」
隊長がそういうと、四〇人全員がスマホを取り出し、函館テレビのヴィチューブにセット。すべてのスマホが同じ曲を同じタイミングで軍歌を流し出した。




