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そこで、お茶を飲んでいた俺は

 そこで、お茶を飲んでいた俺はお茶を派手に噴き出してしまった。開戸兄の歌はオドロオドロしかったらしい。


「いや、私も部屋の四隅に盛り塩があった隊舎で寝泊まりしたこともあります。自衛隊にはこの手の怪談話は多いんですわ。特に先の大戦で戦死した英霊たちが帰国してきたという話は枚挙にいとまがありません」


「怪談話も盛り上がっているんですけど、話を戻しますと、日ノ本の兵器は他国を圧倒しているわけではないんですね。そうなると、今後のドラゴンの攻撃は他国のように基地中心に変わるということですか?」


「そういうことですわ。ドラゴンは自衛隊を警戒して遠慮していたみたいですけど、いつドラゴンの蹂躙が始まるのか分からんし、蹂躙が始まれば、他国同様止めるすべはないゆうことですわ」


「そうなると、いつ頃、先ずどこから狙われるでしょうか?」


「ドラゴンの知能がどんなもんか分からないんで、そこはなんとも……、ただ、他国の状況から、日ノ本では基地の規模から言って沖縄、富士山、北海道あたりですかね」


 あとは、それぞれの基地の規模や配置されている戦闘機や戦車などの装備の話になっていった。その保有火力はドラゴンを迎え撃つには絶望的という結論に達していた。小銃はもちろん重機銃や空対空ミサイルは竜のウロコの前にほぼ無力、誘導弾は竜の機動力の前に命中率はかなり低い。


 まあ、それは俺も見てきた事実だから仕方がない。


 大体、俺たちは残りの第一チャクラと第二チャクラの封印を解放しなければ、惑星ニビルに対抗できない。せめてドラゴンは軍隊で何とかしてもらいたい。


 テレビを見ながらそんなことを考えていた。


 テレビの方もアナウンサーがまとめに入ったようで、ゲストに感想を貰っている。


 この人は確か大戦ゲームが大ヒットしたIT企業の社長だ。


「さっき出た軍歌の話です思ったんですけど、ゲームの設定でもあるんです。圧倒的な戦闘力を持つチートな主人公ものが流行りだけど、味方を強化したり敵を弱体化したり、バフとデバフ能力を持つ強力な後方支援者が主役で、この主役を上手く使うことで、勝利に導くというゲームも多いですよ」


 このコメンテーターは真理をついている。このドラゴンとの闘いは俺のゼミ生「後方支援者」をどう生かすかだけど……、そのことを誰にどう伝えればいいか……。


「歌声の主がゲームじゃなく、実在していると心強いですね。そうであることを心より願います」


 そんな風にアナウンサーが話を纏めて、番組は終わってしまった。


 テレビを消してベッドに転がる。消灯時間になったのか蛍光灯が消えた。


 暗くなった天井を眺めながら、誰にこのことを相談すべきか? ゼミ生の顔が思い浮かぶけど……、そういえばあいつら、一度も見舞いに来ていない!!


 悲しくなる事実に気が付いた時、スマホが鳴った。表示を見ると根戸となっている。噂をすればなんとやらだ。俺の独り言が届いたのか? 俺はすぐに電話に出た。


「もしもし」

「あっ、先生ぇ~、元気にしてた? 骨折してるのに元気もくそもないよね? それより、病院でもテレビは見れるんやろ?」


 いきなり、何を聞いてくるのやら……、一度でも見舞いに来ていれば分かることだ。もっともテレビカードを買わないと、テレビは見れないけど……。


「ちょっと、待て」

 小声で話して、スマホを掴むと病室を出て、松葉杖で電話ボックスに飛び込む。


「悪い、電話室に来た。病室じゃ禁止されてるから。それより、もちろんテレビは見られるぞ」


「じゃあ、さっきHHK(日ノ本放送協会)の番組みた?」


「見たぞ!『ドラゴンの襲来、自衛隊は国民を守れるか?!』ってやつだろ」


「うちら、あの話を聞いて、いいこと思いついたんや!」


「なんだ良いことって? 大体、みんなそこにいるのか?」


「開戸さんとこに集まって、お見舞いに行く相談をしてたの」


「また、つまらん話のために、部屋を提供してしまった」


「兄貴、ここにみんなで集まったのは初めてでしょ。それに良いことも思いついたでしょ」


「全く、声を掛けたわいのおかげやな。先生、明日見舞いに行くから」


 一週間ほど合わなかっただけなのに、根戸、瀬戸、開戸兄、開戸妹、吹戸の声に懐かしくて涙が出そうだ。声が詰まりそうになった。もちろん、嘘だけど……。


「……」


「先生、どうしたん、泣きそうなんか? 泣いていいええよ」


「バカか根戸。それで、何を思いついたんだ?」


「テレビで云っていた、バフ、デバフ効果のある開戸兄の軍歌をドラゴンの出たところに都合よく派遣する方法ですよ!」


「そんな方法があるのか?」


「あるんです。私たちもよく使っている方法が……、ほらネットで…」


 声を潜めて瀬戸が話す。なるほど、その方法ならあるいは……。


「それなら行けるかも?! 今から試すから、念のため風呂場で実験な」


 俺の言葉に、電話口からドタドタという足音が聞こえてきた。


「風呂場に来たよ。後どうすれば?」

「じゃあ、スマホをスピーカーにして、風呂の方に向けてくれ」

「向けたよ」

「……ほむら」


 スマホに向かって囁いた。もちろん指向性を持たせ、瀬戸の持っているスマホ先の暗黒粒子に作用するように意識した。


「わあっ!! 先生、ちっちゃい炎がでた。バスタブの水に入って消えた!!」

「「すげぇ!!」」

「想定通り!! 後は実行あるのみ!!」


 みんなのはしゃぐ声がスマホの向こうから聞こえてくる。どうやら、スマホの向こうでも鬼法が発生したようだ。科学が進んだ現代では幽霊が電子音を通して生きてる人間に訴えてくる怪談が増えている。たとえば、貞子とかリンクとか……。


「見舞いなんて来なくていいぞ。あと一週間で退院できるから、退院祝いでカラオケに行こうか~」

「「「「「うん!!」」」」」


 俺の意図が伝わったように、全員が頷いた。


「消灯時間が過ぎているから、もう切るぞ」

「えっ、そうなんだ。迷惑になるといけないから切るよ。おやすみなさい」

「ああっ、おやすみ」


 電話を切って、病室に帰っていく途中、退院が待ち遠しくなったのだ。


 ◇ ◇ ◇


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