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医者もびっくりする回復力で

 医者もびっくりする回復力で、ギブスはまだ取れないけど退院の日が来た。病院の待合室にゼミ生がみんな勢ぞろいしていた。


「先生~、サプライズ!」


 そう言いながら、花束を渡されて思わず目頭が熱くなる。小さいころに両親を亡くしてからは、こんなイベントは無かった。さらに、こいつらを守ってやりたいという気持ちが強くなった。


 でも、それは俺だけじゃ無理だ。金龍の加護を受けた彼等の力も必要だ。

「ありがとう。お礼に今日のカラオケは俺のおごりな!」


「「「「「やった。カラオケの後の全快祝いの飲み会もよろしくお願いします!!」」」」


 全くこんな時だけ声が揃うんだから。


 確実に世界は破滅に向かっている。これが冗談(実際は冗談ではなく奢らされた)か強がりかどうかは今日の出来次第だ。


 気合を入れてやってきたのはカラオケボックス。


 リクエストは今流行りの曲でも、アニメでも俺の得意な二〇二〇年代の懐メロでもない。士気テンションの上がる軍歌オンリーだ。


 唄うのは俺が「形代」で鬼法を与えた開戸兄だ。今まででて来た「抜刀隊」「軍艦行進曲」「予科練の歌」に加えて、「雪の行軍」「歩兵の本領」「出兵兵士を送る歌」「愛国行進曲」などなど。


 それをスマホで録音して、盛岡で録画したドラゴンと自衛隊の戦闘シーンのBGMにして、ヴィチューブをはじめとするソーシャルメディアにアップする。


 表題は『自衛隊VSドラゴン 逆襲に至る取扱い説明書トリセツ』だ。


 どこがトリセツか?だが、盛岡での自衛隊とドラゴンの交戦を偶然に捉えた映像です!! HHK特番で話題になったバフ、デバフ効果のある軍歌も同時に撮れていました。不思議なことにこの音楽は遠くに離れていても、スマホのスピーカーを向けるとボリュームを変えることなく軍歌が聞こえるのです。


「もし、あなたがドラゴンと自衛隊とのバトルを目撃したら、どうか、スピーカーをドラゴンや自衛隊に向けて軍歌を流してください。それがあなたの生き残るための分岐点です」とビデオの冒頭に表示されるのだ。


 この動画は全国で注目を浴びたようだった。


 事実、盛岡でのドラゴンの映像は放送局が破壊されたため、残っているのは大騒ぎの中で撮った素人ビデオで、構図も出鱈目で対象もちゃんと取れておらず、挙句の果てに騒ぎ立てるビデオの周りの人々の声が、もろ入っていて人間の本性が垣間見える不愉快な映像でもあった。


 ところが、このビデオは怪獣映画のエンタメと言われても納得できるクオリティで、各国が苦戦しているドラゴンを圧倒する自営隊に、見ている人もスカッとする。


 この動画がアップされた翌日、松島基地に八体のドラゴンが現われた。


 日ノ本では初めての軍事施設への攻撃。今までの偵察と違って間違いなく宣戦布告だ。しかも、一敗地に塗れた松島基地へのリベンジ、ウロコが固く土を扱う土竜さえ基地のすぐ近くに生えた巨大竹のゲートから出現した。


 地面を走り、街並みを破壊する土竜を迎え撃ったのは仙台駐屯地の高機動車に搭載された重機銃と地対地誘導弾だ。しかし、鋼のウロコはそんな弾丸を物ともせず、岩の塊を散弾のように吐き出すブレスが高機動車を襲う。


 そんな救いようのない状況に奇跡が起こる。


 一発のパンツァーファーストが土竜の横っ腹に風穴を開けたのだ。飛び散る血に染まるウロコと、初めての痛みに錯乱したような怒号を上げる土竜。


 怒りに任せて吐き出されたブレスは明らかに最初と比べて弱くて遅い。高機動車が華麗なステアリングで躱しながら、重機銃の一斉掃射を見舞う。その軌道、その連射、その威力、完全にスペックを超えている。


 ドッドッドーーーーン !!!!!


 土竜が横倒しになり、その瞳は光を失った。


 空を見上げれば、ブレスを避けるようにF15戦闘機が性能の超えた急角度の錐揉み急降下から空対空ミサイルで空飛ぶドラゴンを地面に縫い付ける。そこに高速道路を走れる一六式機動戦闘車群が急行し、ドラゴンに一〇五㎜ライフル砲のスロラーム射撃で止めを刺す。


 逃れようとする敵の機動性を足止めする重機銃の一斉掃射と鉄壁の連携は次から次へとドラゴンを撃墜し、すべてのドラゴンは霧のような粒子になり消えていった。


 あちこちから上がる大歓声。そして、突き上げる手にはスマホが踊っている。


 それは自衛隊隊員はもちろん、固唾の飲んで見守っていた市民の人たちも同じだった。

 彼、彼女たちは、ヴィチューブにアップされた軍歌をドラゴンや自衛隊に向かって流していたのだ。


 松島基地は、唯一、士気の上がる軍歌の後押しを受けて戦いドラゴンを退けた部隊でもあった。生死の狭間で聞いた軍歌の歌声は忘れることができなかった。そんな時、たまたま見たサムネに惹かれ見たヴィチューブは、夢にまで見た軍歌の歌声だった。


 直ちに自衛隊に打電が走った。出撃時にスマホの携帯を指示されたのだ。それに、最初のドラゴンの襲来の時、その歌を聞いた盛岡市民はたくさんいた。ヴィチューブの動画に希望を持った人たちもたくさんいた。


 それでドラゴンに襲われた時、みんな紹介文に書かれたいたことを信じて、動画を流しながら、祈りを込めてスマホをドラゴンや自衛隊に向けたのだ。


 その祈りは天に通じた。兵器の火力はドラゴンを圧倒して、松島基地を守ったのだ。


 その模様は、テレビでも放送された。それは初めて世界に向けて発信された人間の勝利だった。


 その放送の中で、当然ヴィチューブ動画が話題になった。母音が多い独特の発声は奇跡の歌声とマスコミは囃し立てた。


 その放送を見ながら、思案にふける女性が一人。


「ドラゴンに圧勝したのは、盛岡が最初じゃないのよね……。それにあの母音が多い独特の発音は、歌詞が戦前の言葉で違和感がないけど、古い言葉、いわゆる大和言葉に使われていた発音系だったはず? 確かあの人もあの時大和言葉を使っていた。大人しく入院していたと思ったらこんな動画を作っていたなんて……


 そして、スマホを取り出し、電話帳をスクロールしだした。


◇ ◇ ◇


軍歌「歩兵の本領」は、甲子園で箱根東高がブラバンの応援歌で使われています。

この歌が甲子園で聞くことができるとは……、感激でした。さぞかし士気が上がったことと思います。

読んでいる時のBGMは軍歌がお勧めです。


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