他国では、ドラゴンが頻繁に現れるのは軍事施設だ
他国では、ドラゴンが頻繁に現れるのは軍事施設だ。ブレスが飛び交う中、パトリオットミサイルなど最新鋭の兵器で迎撃する。そんな重火器をものともせず、施設内の戦力や兵器を破壊し尽くしていく。
テレビで見ている限り、ドラゴンは玉砕覚悟の特攻攻撃で各国の戦力を削っていく。ドラゴンの死骸も重なっているが、それ以上に軍事施設の被害は大きい。
テレビで放映される映像を、俺は苦々しく見ていた。テレビで色々と憶測が飛び交っているが、その理由が至極簡単なことを俺は知っている。
ニビルが地球の公転軌道に現れ、アヌンナキが本格的に地球を蹂躙する前に、ペットをけしかけ、兵器を減らしておきたいのだ。
生態系のトップに立つドラゴンさえ使い捨てにするだけの力が、アヌンナキにはあるということだ……。
俺の怪我が全快したぐらいで、どれだけいるか分からないドラゴンの侵略を止められるのか……。そんな考えが頭に浮かび鬱になる。
世界中の都市が破壊され、関西方面に行くのに絶望的になっていく中で、それでも、俺金龍を解放しなければ……、俺は両手で両頬を叩いて気合を入れた。
テレビでは画面がスタジオに代わり、自らを自衛隊OBの軍事評論家と名乗っているおっさんが自営隊について語っている。
「自衛隊が怪獣と戦うのはウルト〇マンからの伝統ですわ。それで残念ながらアッと言う間にやられてしまうのもお約束ですわ」
掴みはもう一つだけど、次に吐いた言葉に他の出演者からの質問が相次いだ。
「ドラゴンの初交戦となった盛岡で、伝統どおり最初はあっさりやられそうになったんですわ。それが突然、形勢逆転。自衛隊がドラゴンを倒しちゃったんですよ。
今だとほとんど効かない空対空ミサイルでダメージを与えたり、当たらない対戦車用誘導弾が命中したり、機銃や自動小銃なんかもドラゴンのウロコを削って足止めしたらしいんです」
「ええっ、ドラゴンが出現したこと事態、信じられませんでしたが、最初の報道はそうでしたね」
「考えられるのは二点、盛岡に出現したドラゴンは弱かったか、兵器が性能以上に威力が上がったとゆうことですわ」
「なるほど、最初の説は分かりますが、後の説はあり得ないでしょ」
「それが、スクランブル発進したF15戦闘機がスペック以上の飛行能力でドラゴンと渡り合ったと搭乗していた操縦士がゆうとったんですわ。それに火器の威力についても同じことを言う隊員が多いんです」
「あの空中戦の映像を見て、みなさん驚かされましたよね」
「そうなんですよ。F15戦闘機っていうのは製造が七〇年代で、他国の最新鋭に比べると時代遅れでねえ、自空も云ってますから「他国の戦闘機とドッグファイトはしたくない」って。でも、あの映像、私も見ましたけど、最新鋭がキリキリ舞いさせられているドラゴン相手に空中戦で互角以上にやり合ってましたし、あの動きF15の動きじゃないですよね。ゼロ戦にジェットエンジンを積んだらあんな感じになるんとちゃいますか?」
「へえ~、自衛隊の戦力って、各国と比べても遜色が無いって日ノ本の国民は思っていますよね。ネットでも優秀だって」
「それは贔屓目ですわ。実際は世界から10年以上遅れている、それが現実ですわ。それが最新鋭の兵器以上の性能を見せたんで、各国の軍隊は、羊の皮を被った中身は日ノ本の技術の粋を集めた狼だって……、自衛隊に各国から問い合わせが来ているらしいですわ。
そら、あのドラゴンと渡り合って撃退してるんですから。でも、神に誓って言いますが、全くそんな事実は無いんです。一番疑心暗鬼になってるのは自衛隊ですから」
「じゃあ何なんですか? 撃退できたのは奇跡ってことなんですか? これからはドラゴンのやりたい放題ってことなんですか?!」
おっさんの言葉に、切れ気味にアナウンサー食い下った。それも当然だろう。あの盛岡の映像を見た人は多い。ネットの反響を見ると、それを心の拠り所に、希望を見出している人だって多いみたいだ。それがあっさり否定されれば「あの時のドラゴンの行動はじゃれているだけ」と言った外国の研究者の言葉に信ぴょう性が出てくる。
「ただね……、兵器が異常な性能を発揮しだした時に、軍歌が聞こえたって話なんですよ。見事なアカペラで、どこで歌っているかも分からない。高機動車だけじゃなく戦闘機に乗っていた隊員まで聞こえたってゆうんですわ。信じられへんわ」
「軍歌ですか?」
「そうそう、聞こえてきた軍歌は『予科練の歌』だって。自衛隊員、相当テンションが上がったらしいのよ」
ほおっ~、このおっさん、本当に自衛隊に情報提供者がいるよ。この事実を知っているのは、現場にいた自衛隊員だけだ。俺が感心しているとさらに話を続けたのだ。
「聞こえたのは盛岡の時だけで、風に乗って、かすかに聞こえてきたそうですわ」
「なんなんでしょう? そのオカルトめいた話は……、聞こえてきたのが軍歌なんでしょ。なんだか気味の悪い話ですね」
「まあ、自衛隊の中だとよくある話なんですわ。駐屯地の隊舎で寝てたら、外で行進する靴音が聞こえたとか、驚いて外を覗くと包帯をグルグル巻きにした兵隊がほふく前進でこちらに向かって来たとか……、なんか軍歌も地の底から響いてくるような恐ろし気な旋律だったそうですから」
なんかこのおっさん、突然、稲川〇二みたいな声色になった。




