俺もシャワーを浴びて、ベッドの上に
俺もシャワーを浴びて、ベッドの上に寝転んだ。
函館の恵山発掘事件を思い出せば、今でも足がすくむ。鬼法のおかげで、どうにか立ち直り、こうして、自分のすべき道を進もうとしているが……。
だからこそ、ゼミのみんなには危ない真似はさせられない。でも、みんなが揃わなければ、俺の鬼法の効果は限定的だ。無力を感じ、これでいいのかと自問しながらも、みんなと戦う道筋が見えた。
それにしても、この俺が現人神とは……。
もっとも、神武スメラミコトの子孫たちの現スメラミコトは、前スメラミコトと同じく譲位すると話題になっているけど……、10年前のあの事件から民をないがしろにした挙句、自分たち一族の私利私欲をごり押しして、やりたい放題の色々疑惑のある皇太子家がいよいよ、スメラミコトってことで、世論は二分しているようだけど……。
そんな大それたことを考えていたはずだけど、長旅とドラゴンとの戦闘で疲れていたのか、すぐに寝入ってしまったようだった。
翌朝、内線電話のコールで起こされた。
「寝坊した!!」
慌てて身支度を整え、フロントに降りていくと、ゼミのみんなには悪態を突かれた。
どうやら、ゆっくり朝めしを喰っている時間はなさそうだ。仙台で用事を済ませて、函館に帰るだけでも10時間はかかる。
「とっとと戸神山に出向いて、面倒事を片付けよう!」
金龍神の封印解除を面倒事とは不敬この上ないが、批判的な目を躱すためなんで勘弁。心で手を合わせた。
仲間内での話をフロントのオヤジが話を聞いていたようで。
「戸神山に行かれるんですか? 知っていると思いますけど、昨日から仙台方面は怪獣が出てひどい被害で、観光ならここ松島の方が安全だよ」
「あっ、俺たち、大学の遺跡調査の仕事で来ていまして」
赤紫のそろいの作業服の胸に貼った「函館五稜郭大学 考古学部」のプリントを見せる。
「ああっ、戸神山の裏早秋津神社の逆さ岩のことか?! 祟りがあるって言われているのにご苦労様。あそこなら市街地からかなり離れているから大丈夫かな~」
そう言いながら地図を出し、海岸沿いに市街地を迂回する道を教えてくれた。
俺たちはお礼を言って、ホテルを出発した。
俺たちは教えてもらった道を行く。確かに仙台市方面へ行く道は通行止めになっている道が多い。通行できたとしても、道路脇に自衛隊員が立っていて、物資の輸送車両が優先みたいだ。
そんな状態を横目で通り過ぎ、俺たちは裏秋津神社の駐車場に着いた。
軽く本殿に参杯した後、開戸妹を先頭に奥の院(逆さ岩)への登山を始める。途中にある展望台では仙台の街並みが一望できた。今までなら杜の都の緑のコントラストが映えたのだろうが……、今は壊滅状態で、目に入るビルで無事に済んでいる物はない。
その中でも、目に余るのは青葉城址だ。石垣や堀は無残に崩れ落ちている。ドラゴンにとって文化遺産などどうでもいいらしい。大昔にシュメール文明を滅ぼした時も、文明の痕跡はほとんど残していなかったようだ。
暗惨たる気持ちで、再び山道を歩きだした。本殿から三〇分ほど登った山の中、一〇メートル四方ぐらいの開けた場所に、お目当てのご神体(逆さ岩)が見えた。
「表秋津神社の逆さ岩と同じで、あの上にクサビ形文字が残されているの」
「開戸さん、ここが神隠しから発見された場所か?」
「うん。あの上で気が付いたら、目の前にクサビ型文字があって、なぜか何が書かれているか直ぐに分かった」
「で、なんて書いてあったんだ?」
「「願わくば我が意志を継ぎ、凶星を喰らう龍を蘇らせん」当時は子供だったから、読めても意味が分かんなかったのよ。でも、今は分かる。そして、巻き込まれたのも」
「うん。その辺は申し訳ない無いとは思う」
「巻き込まれたんは先生も一緒やん。自分だけええかっこしようとして」
「そうやで、ワイらを舐めすぎ。自分らに関係ないんやったら、他人事で批判だけして何もしようとせんかったやろうけど……、自分の生死にかかわるんやったら、本気を出すしかないやろ」
へーぇ、希望もなくて、何事にも本気になれないと言われる時代の中で育ったこいつらが、生死にかかわることなら言葉通り死に物狂いでぶち当たれると言う。俺たちの中にある大和魂という幻想も、軍歌の影響か?信じたくなる。
「根戸さん、吹戸君、その覚悟です。吶喊です!!」
瀬戸も開戸兄の影響か、決死の覚悟で逆さ岩を押した。でも、どれだけ力を込めても、表早秋津神社の逆さ岩のように回らない?
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