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三〇分ほど前に遡る

 三〇分ほど前に遡る。次元融合空間から飛び立ったドラゴンたちは、多くの人の存在に惹かれて盛岡に向かったのだ。その飛行速度は凄まじく10キロの道のりを数十秒で到達している。まるで戦闘機だ。


そして上空からまず水竜のブレス。町中を流れる中津川がブレスで見る見る増水、あっという間に堤防を破壊して町中を濁流が荒らぶり、車や人が流され、壁やガラスに摺りつぶされる。


その様子を満足そうに眺め、流される人を見つけると狙いを定め、水竜は低空飛行から人を捕食し、ばらばらに食い千切られたのだ。


 そんな中、盛岡中央署の屋上に武装した警察官が出ってきた。気が付いた時には近くの中津川が決壊して、パトカーは流され機動力を奪われていた。室内では電話が鳴りまくり、初めて未確認生物が町を襲っているのが確認された。


 そして、隣の盛岡市役所の屋上に何人もの人が状況把握のため上がっているのを見つけて舞い降りてきたドラゴンに襲われているのだ。


 すぐさま、武装した対テロリスト用機動隊が、サブマシンガンを構えながら盛岡中央署の屋上に出てきた。隊長が出口付近で状況を確認して、驚愕したが動揺も見せず、部下にハンドサインで配置を支持する。


 そして、二〇台のサブマシンガンが水竜に向かって一斉に火を吹いた。


 だけど、ドラゴンにとって、口径九ミリの弾丸など豆鉄砲以下だった。雨のように弾丸が降り注いでも、我関せずでさらってきた人を咀嚼しているのだ。怒りに燃えた隊長は、対テロリスト用個人携帯用対戦車弾パンツァーファーストしかないと武器庫に取りに戻った。


 しかし、その間に悲劇が起こったのだ。上空で旋回していた炎竜や風竜が機動隊を煩わしい害虫とでも認識したのか、いきなり火焔と風刃のブレスを吐いたのだ。


 火の玉がさく裂し、風刃に四肢が切り飛ばされる。盛岡市の中心、盛岡市役所と盛岡中央警察署の屋上が地獄絵に変わる。


 さらに地獄絵巻に変えようと、炎竜と風竜は低空を滑空しながら、火焔を吐き暴風を吐き散らかし、盛岡市街を火の海に変えていく。まるで怪獣映画のようだ。


 そして、パンツァーファーストを抱えて戻ってきた隊長が見たものは変わり果てた部下の姿だった。


「このおおおおおおお!!!!」


 叫び声をあげ、まだ、隣のビルの屋上で人を食い散らかしているドラゴンに向かって引き金を引いた。


 大きな反動とともに弾薬が発射され、水竜の脇腹に命中した。爆発音とともに、ウロコが剥がれ飛び散った。


 怒号とともに、水弾のブレスがさく裂。その威力は凄まじく警察署の屋上は全て洗い流され、瓦礫の山に変貌した。


 それでも、弾薬は水竜の脇腹を抉り血が流れているのだ。


「ギャオオーーーーーーーーッ!!!!」


 ひと啼き声を上げると、水竜は表早秋津神社の方に向かって飛び立ったのだ。それは巣に帰るように……、傷を癒すために元居た場所に戻るように……。


 ドラゴンから襲撃を受けた盛岡市の市長は岩手県知事に救援を依頼していた。そして同じ盛岡市にある県庁もわずかな時差で炎竜と風竜のドラゴンの襲撃を受けていたのだ。内閣府に自衛隊の出動を要請した県知事。



 同じ頃、仙台の戸神山にある裏早秋津神社でも表早津神社と同じことが起こっていた。


 第3チャクラの封印を守るドラゴンが竹節から飛び出し、次元融合空間を突破し、この3次元の空間へとやってきたのだ。表と裏の侵入者発見センサーは連動していた。それを知らずに表早秋津神神社の次元融合空間に侵入した形代たちはこの裏早秋津神社のドラゴンまで目覚めさせてしまった。


 目覚めた四匹のドラゴンは飛べない土竜を残し、炎竜、水竜、風竜は近隣の都市、仙台に向かったのだ。


 最初は水竜のブレス攻撃。絶え間なく吐き続ける水のブレスは、たちまち広瀬川を反乱させ、三メートルを超す濁流が仙台市を飲み込んでいく。さらにそこに炎竜の火焔のブレスだ。高温のブレスは辺りを火の海にするだけでなく、荒れ狂う濁流に突っ込むと水が一気に水蒸気に変わる水蒸気爆発でビルが吹っ飛び瓦礫に変わっていく。


 風竜だって負けてはいない。風のブレスで炎と水を煽り、その荒れ狂う様はまさに地獄絵図だ。濁流から逃げ遅れた人々が折り重なって流されていくところにドラゴンは狙いを定め、複数の人間を牙や爪で攫い、食い散らかしていくのだ。


 広瀬川の近くにある仙台市役所や宮城県庁など高い建物はドラゴンの止まり木となり、または絶好のブレスの標的にもなった。


 仙台市長や宮城県知事は事態の情報収集に奔走していた。そして、多大な職員の犠牲と引き換えに分かったことは、空想上の生き物だったはずのドラゴンが現われ、わずかな時間で東北一の都市が壊滅的な損害を受けたことなのだ。すでに庁舎のあちこちが瓦礫になり、火の手が上がっている。


 先ほど、内閣府や防衛庁に自衛隊の出動を要請したが……、その折り返しの連絡を待つ間に電話は不通になった。電気も自家発電に代わったがどれだけ持つか? 眼下に見える仙台自衛隊駐屯地も水浸しで、たとえ出動命令が下りたとして、あれではどれだけの車両や武器が使用可能なのか……。この地獄絵巻を前に各々の長は祈るしか手段がなかった。


 一方、連絡を受けた霞ヶ浦の官僚たちは、次から次へと入ってくる各部署の続報とテレビに映し出される盛岡や仙台の様子に頭を抱えていた。最初は地元のテレビ局の映像だったが、やがて、砂嵐に代わり、後は断片的にスマホとかの録画と思われるものが、次々とネットにアップされていた。


 現場のテレビ局はその機能を失ったのだ。


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