ドラゴンなどという怪獣に対応するため
ドラゴンなどという怪獣に対応するための法整備などされていない。
自衛隊の出動は武力攻撃があった場合、国会に承認を経て内閣総理大臣が出動命令を発令する。国会を召集している間にどれだけの被害が拡大するのか……。後日承認を求める方法もあるが、そもそもドラゴンのブレスは武力攻撃なのか? 前例のないことで野党を刺激するのは……。だったら、国民保護法の方から……、ダメだ、武力の行使が禁止されている。威嚇射撃に放水程度では、ドラゴンの水流弾の方が威力が上だ。
そんな時、一人が叫んだ。
「領空侵犯によるスクランブル発信ですよ。領空内に未確認飛行物体で法解釈上、問題はありません。発令者は防衛大臣です。警告に従わなければ撃墜も可能です。国際法でも認められていますし、アメリカでは実際にUFOに発砲したこともあります」
「よし、それで行こう。防衛大臣に連絡を!」
上司の指示で部下が受話器をあげる。停滞していた霞ケ浦の一室はやっと動き出した。自動警戒管制システムは先程からドラゴンを監視している。後はドラゴンを敵認定すればいい。どうせ識別番号など有りはしない。後は自動で命令が発令される。AIの命令に人間(防衛大臣)が追認するだけなのだ。
言葉が通じそうにないドラゴン相手に警告など無意味だ。後はミサイルをぶち込んでやればいい。日ノ本軍隊の実力を天下に知らしめる。国際問題と国内世論で胃に穴が開く心配もない。
緊急打電を受けた松島基地からスクランブル発進で、六台のF15戦闘機と四台の戦闘ヘリが飛び立った。
F15戦闘機三台と戦闘ヘリ二台に分かれて、それぞれ仙台と盛岡に向かった。
作戦はF15が先着し空対空誘導弾を放つ。生体が不明なため電波式ホーミング弾だ。威力が落ちるためこれで迎撃できなくても、動きが鈍ったところに戦闘ヘリから対戦車誘導ミサイル弾で止めを刺す。
松島基地から仙台の上空まで数分。上空三〇〇メートル付近に3匹のドラゴンがじゃれるようにもつれて飛んでいるのを認めると、上空千メートルから急降下しながら、ロックオン。発射ボタンを押す。
照射されたレーダーに誘導され空対空ミサイルがドラゴンを襲う。炎竜だけがミサイルに気付き、ミサイル目掛けてブレスを吐く。迎撃されたミサイルと違って、水竜と風竜にはミサイルが命中、爆発を起こし、錐揉み状になりながらドラゴンは落下していく。
それを見ながら、3機のF15は炎竜の両側を掠めるように高速で通り過ぎていく。普通の鳥なら気流の乱れで飛んでいることなどできないだろうが、驚くことに炎竜はすぐさま反転して、F15を追いかけ、逃げようと旋回や上昇するF15に火焔弾を弾幕のように吐いたのだ。
ドラゴンの速さは戦闘機の速度に匹敵し、機動性は戦闘機を上回る。ドラゴンは右旋回したF15の背後を取り、左旋回と急上昇したF15が体制を整える前に、火焔弾で撃ち落した。
そのドラゴンに向かって体制を整えたF15の二〇㎜機関砲が吠える。上空からの攻撃に鱗が剥がれ落ち、炎竜は押し込まれたように高度を下げていく。しかし、そのF15に下から暴風と水のブレスが襲う。水竜や風竜はミサイルが命中して羽や鱗が剥がれているのに、まだまだ空を飛び抵抗できるのだ。
F15が2機に\手負いで機動性が低下したドラゴンが3匹。もつれるような攻防の中、ホバリング状態のドラゴンたちにヒット&アウエーでどうにか戦況を維持していた。
そんな中、仙台駐屯地から戦車砲が発射された。当然、仙台駐屯地の自衛隊員たちも、スクランブル発進の指令を受けて、反撃の機会をうかがっていた。濁流の中、身動きの取れなくても発射可能な対地砲で集中砲火だ。上手くドラゴンを仙台駐屯地上空に追い込んでいたのだ。
地上にもブレスを吐き、応戦するドラゴンに向かって、やっと戦場に着いた戦闘ヘリの空対地誘導弾が発射された。空対地誘導弾はドラゴンに命中して、遂に3匹のドラゴンが地面に落下した。そこに戦闘ヘリからガトリング砲の弾丸がぶち込まれていく。
完全に動きが止まったドラゴンが粒子に包まれていく。そしてドラゴンの輪郭が崩れていき、黒い粒子になって消えていった。
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