ついに浪速の戦いの火ぶたが切られた
ついに浪速の戦いの火ぶたが切られた。
スネナガヒコは防衛のために築かれたやぐらから、沖合に浮かぶ船団に向かって攻撃命令を下す。
吶喊とともに放たれた矢は、貧弱な武装からは想像もできない風刃を伴ったミサイルのように船に風穴を開け、木っ端みじんにしていくのだ。
この矢にはスネナガヒコが風と爆轟の鬼法をエンチャントしていた。
瞬く間に数百艘あった船は大破し、海の底へと消えていく。そんな中,一艘の舟が先頭に出てきた。
その船から広範囲に火の玉が飛んできて、着弾とともに炸裂して土埃が舞い上がり大地が揺れる。
三重に張り巡らした柵は吹き飛ばされ、数発の火の玉を喰らってやぐらも燃え落ちた。イワレビコの鬼法による反撃だ。
すぐさま、部隊を散開させ、険しい山に隠れさせる。各所に穴を掘り塹壕を築いており散兵戦に持ち込むのは予定どおりだ。
それを見ていた先陣を切った船が港に接岸した。
スネナガヒコは船に向かって爆裂鬼法を放ったが、今度は海から水の障壁が立ち上がり阻まれてしまう。
それどころか、水流はどんどん上昇したかと思うと、遥か上空から生駒山の山中に氷弾となって弾幕のように降り注いできたのだ。
その氷弾の威力はすさまじく、塹壕に身を潜めていた弓兵はハチの巣になった。かろうじて天に向けて盾を向けたものも盾ごと粉砕され、塹壕の中は血だまりとなっていた。
異変に気付いたスネナガヒコは咄嗟に土の障壁を出現させたが……、味方の被害もかなり大きい。生き残った者も塹壕に土の障壁が蓋をして閉じこもった状態だ。
そんな中、接岸した船から一人の男がおりてきた。朱色に塗られた鉄の鎧は高貴な身分を思わせた。
「やつこそこの軍を率いるイワレビコだ。やつさえ倒せば、鬼法に苦しめられることはない」
スネナガヒコはそう考えた。
自らに体に身体強化と超加速の鬼法をかけて塹壕から飛び出すと、その男に向かって代々引き継いできたバール(金龍神の爪)を投げつけた。
でも、バールはクルクル回りながら明後日の方に跳んでいく。それを見た男は大笑いしたのだが、突然、バールは鋭く曲がり男の方に向かった。しかし男はわずかに身をかわすと掠めるようにバールは後方に飛んでいった。
「かかったな!!!!」
そう声を発したのは、ブーメランの軌道で男の関心と油断を誘い、超加速で一気に距離を詰めていたスネナガヒコだ。剣を男の死角から切り上げた。
男の右腕の肘から先が宙を舞う。そして、躱したはずのバールも男の背後の船に突き刺さり大穴を開けていた。
「おのれぇ~!!!! 初めからこれが狙いかぁ~ !!!!」
怒号を上げる鬼の形相の男に向かって、スネナガヒコは追撃しようと剣を振り上げた時、船の甲板から多数の矢が降り注いだ。
「ちぃっ、鬼法で強化されていやがる!!」
剣で受ければ爆発してスネナガヒコもただでは済まない。大きく後方にとんだ。その隙に男のもとに家来がはせ参じ、船へと引き上げていった。その男が名前を呼ばれて手当て受けているようだ。
「イツセビコ?!」
男の名前はそう聞こえた。倒したと思った男は鬼法を使っていたのにも関わらずイワレビコではなかった。混乱したスネナガヒコに大量の矢が降り注ぐ。
「スネナガヒコ!!」
背後から巫女の声が……。我に返ったスネナガヒコはその場から撤退するのが精一杯だった。
イツセビコが乗った船は、浸水を始めたのにかかわらず、岸から離れて逃げ出そうとしていた。それに入れ替わるように、岬の先端から内海に向かって千に近い船団の影が現れたのだ。
あれが本隊?! 勝ち目があるのか……。
すでにスネナガヒコの軍は半数が無力化され、鬼法を付与した矢も残り少ない。スネナガヒコの鬼力量も……。海に望み唇を噛むスネナガヒコの横を駆け抜けていった巫女姿の女性。スネナガヒコの名を呼んだこの女性こそ第五チャクラ「龍の逆鱗」を守る神社の巫女、瀬織津姫の血を引く巫女だ。
巫女はスネナガヒコの静止を振りほどいて、矢の降り注ぐ中、ふ頭から身を躍らせたのだ。
(ここまで、支えてくれた人たちに恩返しするのは今。それに、死んでしまったほかの金龍神のチャクラを守っていた巫女たちも、この大厄災に私に力を貸してくれるはずです)
そう考えて、巫女は代々伝え聞いていた祝詞を唱えて海に飛び込んだ。この国を襲う大厄災の時に、大祓祝詞に刻まれた四柱にその身を捧げた。




