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おい、開戸!! 土は大和言葉では?

「おい、開戸!! 土は大和言葉では?」

「はっ、つち?だけど」

「ごめん、火や水を防ぐ土の壁みたいなイメージだ!!」

「土の壁、それで火や風を防ぐとなると……、ひふせかな?」

「それだ!! ひふせ!!」


 俺たちの目の前に地面が立ち上がり土の壁を作り出した。属性同士が反発しあって火、水、風は勢いを打ち消し合っている。


 土壁の内側で一息ついた俺は、あの土竜の首に突き刺さったままのバールをどうやって手元に引き寄せようかと考える。そんな俺の思考を邪魔するハミング。いや鼻歌ってやつだ。


 しかも、軍歌。これは軍艦行進曲だ。

 いや、確かにテンションは上がるけど……。それはパチンコ屋限定で。


「開戸兄、こんな時に何唄ってんだ?!」

 俺の言葉も無視して、さらに歌声に張りがでる。こんな歌詞だったんだ。古い言い回しだが、発音も……、これは大和言葉バージョンか?! なんとも耳に心地いい。俺もつられて口ずさんでしまった。


 意気が高揚する。実力以上の力が出そうだ。何よりこんな理不尽に立ち向かう気持ちにさせてくれる。

眞鐵まがね鐵梃かなてこ、日ノ本(ひいづる国)の仇なす敵を攻よかし』


 歌に合わせて、驚いたことに俺の手元にバールがブーメランのように戻ってきたのだ。仇なす敵はあのドラゴンどもだ。


 俺はバールを肩に担いで、土塀からでる。降りかかる火の子、風の刃、水のつぶては俺の周りのとばりの前に吸収され消滅していく。


 これは?! 俺の周りの暗黒粒子が俺に対しては強化され、逆に敵にたいして弱体化させている。この歌にはゲームにあるバフ・デバフ効果がある?


 ドラゴンは躍起になって俺を攻撃してくるが、俺が近づけば近づくほどその攻撃の威力は弱くなる。


『黒煙は姿は龍のように靡き、いかずちがかりによどむなりだ』一気に片を付ける。日ノ本は龍の国とも言われている。龍の登場シーンと云えば……、昔からエレクトリカルパレードと決まっている。


「いかずちはぜ!! いくさねり!!」


 そう叫んで、天に向けて指をさす。ドームの中が真っ暗になったと思うと、稲光が縦横無尽にドーム内を走り、何発もドラゴンに落雷する。ついにドラゴンが地面に伏したのだ。


「「「「吶喊とっかん!!!!」」」」


 背後から大きな声がする。どうやら、軍歌も「軍艦マーチ」から「歩兵の本領」に代わっていた。


「うおおおおおおっ!!!!」


 俺も歌いながらバールを振り回し、ぴくぴくしてるドラゴンの頭にバールの先端を打ち込み、とどめとばかりに命を引っこぬく。断末魔を上げるドラゴンをピクリとも動かなくなるまで滅多刺しにして、次のドラゴンへ……・そうやって、すべてのドラゴンをぶっ殺して、次に備えて、四方の竹に鋭い視線を飛ばす。


すると、前と同じように、ドラゴンの死骸や竹は粒子になって吹き散らかされて、跡形もなく消えてしまった。


こわばっていたほほが緩んだ。大きくため息を吐くと、身体強化と超加速の魔法が解けた。大きく肩で息をしながら片膝をついた。どうやら暗黒粒子を触媒にした鬼法というのも無制限ではないらしい。


 背後で土塀バリアも砕け散り、光の粒子となって空間に消えて、ただの土が崩れて、5人の足元に砂山になっている。


 そして、最初に一歩踏み出したのは吹戸だ。


「やっと、ワイの出番や」

 俺の肩を押して、台座の方に歩き出だした。俺も後から来た開戸兄妹の肩を借りて立ち上がり、みんなと一緒に台座の方に歩いていく。


 そして、台座を囲むと、台座に刺さっている一抱え以上ある竹クサビを観察する。手で掴んでみて直感で理解できた。


「こりゃ、抜くなんて無理だ」

「先生、手で抜けるもんか!! この空間は時空が融合した仮想空間やで。目に見えるのは、架空の見せかけの縮図やで。本当の台座は龍体の一部で、その竹クサビは地下深く龍脈の龍穴に突き刺さり、龍気の流れを留めとるんや」


 吹戸は俺からバールを奪うとバールを神主が使う大幣おおぬさのように構え、左右に振るいだした。いわゆる白木の棒に白い紙(紙垂)がついたふさふさした棒のように使っているのだ。


「焼鎌の利鎌を以って打ち掃ふ事の如く、残る罪は在らじと。祓へ給ひ清め給ふ事を」


大祓祝詞の四柱が唱えられる前段の祝詞らしいんだが……。祝詞に合わせバールを振るたびに、バールが巨大になっていく。手の甲の痣が周りを照らし美しい現象をみせる。きっとこの多次元融合空間が見せる幻影なんだろうけど……、バールの二股に分かれた先端が、鎌の形にも見えだした。



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