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ネモス谷の陽光花3 ~望まぬダブルス~

「痛ぇ、くそう」


眼を開けると、見知らぬ岩場。ああ、思い出した。黒グリフォンのぶっ放した電撃の全方位攻撃に吹き飛ばされたんだ。どういった経緯を辿ってここに転がってきたかはわからんけど。場所の把握が全然出来ないってことは知らない場所ってことだわな。通ってきてもないってことは、落ちた?


「とりあえずは、大きな外傷は」


あるぇー?左腕が超痛い?さっきは痙攣はしてたけど痛みはそんなになかった。けど今はどうでしょう。ちょっと動かすだけで痛い。あ、折れてるヤツだこれ。


「マジか」


ネモス谷はモンスターが多数生息する。更に先ほどの黒いグリフォンのように危険な個体も居るこの場所で、現在地がわからないことに加え、飛び道具である左腕を負傷。まずい。下手したら、ここで詰む。


「ふざけんな。くそ」


悪態を吐きながら身を起こす。体の節々が痛むが、動ける範囲内だ。不幸中の幸い。まずはどっか隠れてこっからどうするか考えないと…


「グォオオ!」


「ふざけんなよ、くそ」


上空から急降下してきたのは、グリフォン。白でも黒でもない。一般の範囲内の体色の固体だが、今はそんなことは関係ない。明らかな敵意を持って、新手のグリフォンは襲い掛かってきたからだ。マジでどうなってる?グリフォンが、俺たちを意図的に狙っている?あり得るのか?そんなの?


「この、やろ!」


一気に体が熱くなる。臨戦態勢を取ってグリフォンの体当たりを避け、着地した瞬間に反対側に走る。倒すのは無理。逃げるしかねぇ!逃げ切れるかは考えない。とにかく、助かる見込みが高い行動を取り続けるしかない!


「グォオオン!」


当然追いかけてくるグリフォンさん。人間が速度で勝てるわけがない。数秒で俺に追いつき、そのまま前足で俺を薙ぎ払う。ショートソードでガードはしたつもりだったが、とんでもない膂力で岩肌に叩きつけられる。ああ、久しぶりに、際まで追い込まれた。死の際。


「アスティアは、あいつは大丈夫か」


何とか上半身だけ起こし、アスティアの身を案じるも、あいつがくたばる光景が目に浮かばなかった。なんとなく笑えた。


「グオオオオオォーン!」


動かない俺にとどめを刺すべく、前足を掲げて飛び掛るグリフォンさん。


「伏せろ」


その時、声が飛んできた。鋭い声に半ば反射的に従い、身体を地面に突っ伏せると、


「グォェ!?」


鈍い衝撃音と共に、俺の頭上でグリフォンさんが悲鳴を上げる。何が起きたのかいまいちわかっていないが、次の瞬間に脳が働き始める。あ、とりあえず動かないと!


咄嗟に身体を転がして横に移動すると、一瞬跡後にグリフォンの巨体と、同サイズ程の巨石が俺がいた場所に落ちてきた。ズシンっていった。これ、動かなかったら死んでた。ぺちゃんこになってた。怖い…!


「何だ、その動きならまだ大丈夫そうだな。安心したぞ」


鋭い眼光に、素敵なハスキーボイス。ブラウンのボブカットを揺らしながら悠然と歩いてくるその女は白銀の鎧に身を包んでいる。そして、左肩に掛けられた青いマントには獅子の文様。


「…お久しぶりですぅ、ロックベリー団長殿ぉ」


「久しいな、元部下ジェイディス」


本当に今日はどうしちゃったの?白黒グリフォンには遭遇するし、数年ぶりに上司と再会するし…とりあえず俺、ジェドこと、ジェイディスは考えるのをやめた…アスティアー!助けてくれー!!



「今、ジェドの声が聞こえたような!?」


「先輩ぃ、余所見はよくないんじゃないかねぇ?」


何かを感じた私の独り言に、軽薄な笑みを浮かべるのは隣に立つ男。うるせぇな、独り言くらい好きにさせろや。


「うるせぇな、独り言くらい好きにさせろやボケコラぁ」


おっといけない。声に出てしまった。しかも心中よりも2割り増し位で。てへぺろだね。


「おっとぉ、怖いねぇ。グリフォンなんかより、ずっとねぇ」


私の横でニタニタ嗤うソイツが空中に右手を突き出す。すると、何もない空間が氷結し、2m程の巨大な氷柱が生み出される。その数、3本。


蒼いマッシュルームカットのソイツが一際口元を歪めて笑うと同時に、氷柱は弾けるように四方に放たれる。その先には、グリフォンの群れがいた。


「ギィ!?」


「グラァ!」


「ピギイィ!!」


ざっとわかる数で10頭程のグリフォン。その内、氷柱は3頭に命中。突き刺さったそれは、瞬く間にグリフォンたちの身体を凍結させ、地面に落とす。


「ちっ、邪魔だっての!」


その様子を横目で見ながら、私に襲いかかってくるグリフォンを思い切り蹴り飛ばす。もちろん、身体強化魔法を掛けた状態でだ。更に、間髪入れずに上空から襲撃してくるもう1頭を魔法の光刃で叩き落とす。あーもう、ウジャウジャと!


「あの黒い奴まで、随分距離があるねぇ」


蒼いマッシュルームが髪を掻き上げながら言う通り群れの奥、一際高い岩場の上に佇むのはさっきの黒いグリフォン。まるで見下すみたいに悠然としている。ムカつくぜ!


物量戦をしているここは、白と黒のグリフォン決戦が行われた場所から少し離れた岩場だ。あの黒野郎が電撃をぶっ放した後、多数のグリフォンが来襲。明らかに私に対して敵意を持って襲いかかってきた。正確には、私と1頭に向かってだけどね!


ちなみにこの蒼キノコは電撃ブレスから暫くして現れた。ブレスの電光を目印に来たんだろうね。でも、よりによってコイツかよ。


「先輩。いい加減、ソイツは見捨てるべきじゃないかねぇ?」


「うるせぇ、いきなり出てきて指図すんな」


やりたいようにやらせろ!毒キノコ野郎!内心でそう吐き捨てながも継続して飛び掛かってくるグリフォンを捌く。ミドルソードで爪を弾き、時には魔法で背後から飛襲するグリフォン達を追い払う。くそっ、こういうチマチマしたのは苦手なんだけどね!


「ふぅ、しょうがないねぇ」



そう言うと蒼キノコ改め第6勇者、チャールズコールドは冷然と手を振りかざした。



「聖剣解放」


そう言った瞬間、チャールズの周囲の空気が白く染まる。そして、この晴天の下、圧倒的な極寒がこの場を支配した。ったく、コイツはいつもいつも加減を知らない。簡単に聖剣解放しすぎだっての!


「ギル!?」


流石と言うべきか、黒いグリフォンは素早く上空に舞い上がり回避行動を行うが、その他のグリフォンは遅い。いきなり吹き荒れた死の吹雪。圧倒的な猛威に晒され約10頭のグリフォンは数秒経った頃には真っ白に凍てつき、そして砕けた。


「ありゃあ、流石は親玉だねぇ」


「だったらもっと慌てろよ」


以前飄々としているチャールズ。全く変わっていない。コイツ。だからイヤなんだよ。昔の自分見てるみたいで。


「おやぁ、黒いのが逃げちゃうねぇ。どうする先輩?」


「追わない」


「おやぁ、そんなにあの白いのが大事かい?魔物だよぉ?」


あぁ、ムカつくわー。本当にムカつくわー。でも今はとにかく、あの白いのだ。バカだろうが酔狂だろうが、私が気になるんだから仕方ない。


「ま、お前がなんと言おうと、ジェドはわかってくれるから、どーでもいいよ。お前はあの黒いの絡みで来てるんだろ?早く行けよ」


「くふふぅ、その洞察力も歯に衣着せぬ物言いも、流石だよ先輩ぃ!惜しむらくは、まだあの凡愚に熱を上げていることだけどねぇ」


また会おうねぇ。そう言って、チャールズコールドもとい、蒼いキノコは去って行った。はっ、あんなヤバそうなヤツを追わないといけないなんて、王連の犬も難儀なもんだ。


「ホント、昔の自分を見てるみたいだよ」


一言、履き捨てると少し気持ちが楽になった。さて、あの白いのはどうしようかな?ジェドは、きっと大丈夫。大丈夫じゃなかったら、あの黒いのは八つ裂きじゃ済まないけどね!


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