Emperor of shine 2 垣間見る記憶
「……は?」
光陽は、野原に立っていた。
上空には隔てなく地へ照りつける太陽が、清々しく輝いている。足元には足首まで隠す様に伸びた青草が、吹き荒れる風に合わせて揺れていた。
「おいおい。直接的にメルヘンな事になったな……」
先ほどまで無機質な戦闘空間に居たと言うのに、うって変わって全く知らない地に足を着けていたのだ。もう、驚く事も無く、この様な現象に慣れてしまっている。
「……次からは驚くか」
ワザとでもいいから、現状を逸脱した状況であると認識し直さなければ。
とりあえず周囲を一瞥。しかし、目印になるような建物は無い。それどころか、少しだけ香る潮の匂いは――
「島か」
自分の立っている場所から、少しだけ傾斜を上がっていくと、水平線が広がっていた。
「マジかよ……おい、ルー! また、おちょくってんのか!」
大声を上げて、彼女に聞こえる様に告げる。何度か経験のあるルーの『内宙』へ侵入した感覚に似ていたのだ。
故に、この状況もルーが何か目的があって、映しているのかと思っている。だが……
「無人島に置き去りのシチュエーションかよ……」
やれやれ、とため息をつきつつも、しばらくすれば出て来るだろうと丘を下る。
「――ん?」
と、状況の把握に集中していた為、気が付かなかったが、海の近くに小屋が存在していた。潮に巻き込まれない様に、少しだけ草原に近い場所に設けられている。人が5、6人で生活して居そうな中型のロッジのような木造の別荘であった。
「……あの中から、バァ! とかだったら、『玄武一門』――」
ワザと聞こえる様に、そんな事を言いながら小屋に近づくと、その扉がゆっくりと開く。
光陽は咄嗟に身構えるが、そこから出てきたのは一人の女性だった。
蒼い髪に片目が前髪に隠れた成人女性。紋章を先端に吊るした髪飾りと、見えている頬と眼の周りに刺青のように複雑な印が彫られていた。『魔法陣』、と一目見て連想してしまいそうなモノである。
「やれやれ、やっと帰って来たか」
女性は、そんな言葉を口にした。口調的にも、少しだけ男寄りな感じから、浮世から離れていると言った印象を受ける。
「すみません。ここってどこ――」
「ミディール! ドルドナ! 遅い! もう昼だぞ!」
と、その声は自分ではなく、彼女の視線の先に居る二人に向けられていると見て、後ろを振り返る。
一人は茶色い長髪を三つ編みに縛って、肩口から前に垂らしている男。腰には剣、背には弓と矢束を身に着けている。
「――――」
「ただいま、マナ。ドルドナが馬鹿やった所為で遅くなった」
「ミディール。そうならない様に、お前も就いて行くように行った筈だ」
「アレを止めるのは無理だって。それより腹減ったよ」
「武器を戻しておきなよ」
「解ってるって」
茶髪の男――ミディールは半眼で眠そうに欠伸をしながら小屋の裏へ向かう。そちらが武器の保管場所なのだ。
「たっだいま。マナ、見てくれ! このクソッたれなトカゲを! 草原で暴食していた地火龍だ! コイツの所為で、我の果物の木は全焼――」
「まったく……アンタは、“果物”と“地火龍”のどっちが重要なんだい? ドルドナ」
ドルドナと呼ばれた桜色の髪を持つ少年は、身体程の大きさをしたトカゲのような生物の尻尾を掲げてマナへ見せる。
「? 普通に“果物”だが?」
「普通は“地火龍”には手を出さないのが当たり前だ」
「そうなの?」
「そうなんだよ。ミディールは手を出さなかっただろう?」
「いや、ミディ兄は、色々と価値観が違うと思って」
「……まったく。地火龍は私が処理するよ」
マナはドルドナから、死んだ“地火龍”を応酬する。
ちなみに、“地火龍”は比較的小柄であるのだが、それでも固体種は『龍種』である。剣はその鱗を易々とは通さない。
だがドルドナは“地火龍”の眼を貫き、その奥にある脳を破壊していた。つまり、正面から、奴の吐く炎も恐れず貫いたと言う事だ。
「ドルドナ」
武器を戻そうと、裏へ向かっていたドルドナにマナは声をかけて止める。
「怪我はしてないのか?」
「んー、得には。これもダーナの御導きだな」
そう言いながら笑う少年に、マナはもう一度ため息を吐いた。
「…………」
光陽は、現れた三人の一連の流れで二つだけ確実な事が解った。
一つは、この状況で自分の姿は見えていないと言う事だ。現れた三人は、間違いなく自分の目の前で会話をしている。全く気が付かないのはおかしい。
そして、もう一つは――
「……ドルドナ? ルー・マク・エリスンじゃないのか?」
マナと言う女性がドルドナと呼んでいた少年は、多少幼いものの、桜色の髪や翠玉の様な瞳は彼女のものであった。
間違う訳は無い。そして、この不確かで『内宙』内部にもかかわらず、何度も声をかけても受け答えしない所を見ると――
「アイツの……記憶――過去か?」
原因は“反転”だと思うが……なぜ、ルーの過去の記憶に入り込んだのかは、解らなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ルーは、目の前で乱戦の様に組手を行っている土場の中に居た。
「ふふん。これはボーナスステージか? いやはや、役得役得♪」
場所は――光陽に連れてきてもらった彼の故郷である“本家”という所である。狭く、20人も居れば動く事も難しくなる広さであるが、その中には30人の人間が相対者と入れ替わる様に組手をしていた。
「凄まじい迫力だな」
そこへ、投げられた修練者の一人に巻き込まれて、ドミノ倒しの様にルーへ人波が倒れてくる。そのまま、人の山に呑み込まれた。
「まぁ、普通こうだよね」
見えていた。向かって来る現象は全てすり抜ける。いわば、これは記憶の世界なのだろう。無論、光陽のモノで間違いないハズだ。
人為的な嵐の様に、怒声のように発している声は、その場にいる一人一人が並みならぬ気迫を持っている証拠だった。己の思念を相手に気圧される事無く、発揮しているからこそ、この場が出来上がっている。
己の信念を偽り無く積み上げる、修練場が――
「さてさて♪ 我が愛しの人はどーこーだー♪」
ルーは、光陽の過去に興味がありまくりだった。もちろん、“本家”に行った時に色々な人間から話を聞いていたが、いつか寝ている隙に記憶を辿ろうと思っていたのである。
不可抗力とは言え、こうなったのでは仕方ない。仕方ないから、堪能しよう♪
「お! 居た居た――」
ほどなく歩いて行くと、人の嵐の中で同年代と組み手をしている17歳の光陽を見つけた。
乱場組手。
“本家”にて裏側で生きると決めた者達が年齢実力を問わずに参加する自由組み手である。
参加者は自分の最初の相対者を場の外に出すか、気を失わせれば次の相対者を見つけ再度組手を行う。そうして、最後の一人になるまで続けられるのだ。
この組手が終わった時、誰一人無傷で抜ける者は居ない。今までそうだった。
天才と称される者は数多く居たが、この嵐の様な乱戦で無傷で抜ける事は、降り注ぐ雨を避けるに等しい行為なのである。
最期の一人になる者の特徴は、いかにダメージを抑えて立ち回ったか、もしくは、全ての相対者を一撃で沈める以外にありえなかった。
かつて、最も損傷が少なかったのは『桜家』で“天獣”と称された人物――桜雪巳であり、その人物は頬や道着を僅かに損傷しただけと言う称号にふさわしい強者だった。
「――――」
そして、震脚が響く度に、修練者達が場からはじき出されていく。その行為を行っているのは、若い『玄武』だった。
「っは! シャア!! 次!」
「調子に乗るなよ! 光陽!」
『玄武一門』で、相対者を場の外へ吹き飛ばし続けている光陽へ次の対戦者が襲い掛かる。
彼の顔を狙った蹴り。それを光陽は肘で逸らすと、体を預ける様に対戦者の身体へ滑る様に密着させた。刹那、爆発するような音と同時に、意識と体を“場”から吹き飛ばした。
「あざっす!」
光陽は気を失って場から外れた先輩に対する敬意を忘れず、それだけを言い残して次の相手へ。
と、次に不意打ちの様に背後から向かって来たのは城里輝夜だった。手加減無しの飛び回し蹴りを、咄嗟の本能で躱す。
「あっぶねぇ!? オイコラ! 不意打ちとか、次代の当主がやることか?!」
「差別はするなよ。言っておくが、この場では階級など関係ない!」
カグヤが踏み込んでくる。歩幅と踏込みの様子から、上段蹴りが来ると予想。肘で受けて、カウンターの“発剄”で体制を崩す――
光陽は中腰で『玄武双璧』の構えを取った瞬間だった。カグヤの姿が煙の様に目の前から消えていたのである。
「――――やべ!!」
切り替える。カグヤは光陽の股下を滑る様に抜けて背後を取っていた。完璧な“虚”を突かれていたが、後の先は――
「――――」
背後から、肺を揺らすために狙ったカグヤの蹴撃は、逆に合わせられた『玄武剛山』によって吹き飛ばされた。
「…………ちっ」
何とか残った片足でバランスを取って踏ん張ったが、僅かに“場”から出てしまう。
「はい、カグヤさん失格~」
と、場の外で、しゃがみながら、その様子を見ていた桜夜絵は微笑む。
「根に持ってるのか?」
「別にぃ~。カグヤさんにはじき出されたからって、根に持ってるわけじゃありませんよぉ~」
ヤエは、カグヤに負けて“場”からはじき出されたのだ。元より、ヤエの持つ『朱雀』は、このような乱戦では真価を発揮できないのである。
「まだ、光陽は残ってるぞ。色々とロックオンされてるが」
「うぉぉ! 行けー、兄貴! 行けるよ!」
妹の声を聞いて、更に『玄武双璧』の質が上がった光陽は、向かって来る相対者を次々に吹き飛ばしていく。
「現金な奴……」
まぁ、光陽は特にこういう場が最も真価を発揮しやすいのだ。本当に最後の一人になる可能性も無いわけでは無いが――
「――――」
カグヤとヤエは投げられて飛んでくる修練者を互いに躱して避ける。
「ごめん。怪我は無かった?」
申し訳なさそうに走ってくるのは朷矢之破だった。彼は相手を全力で叩きのめすと言った事よりも、なるべく気遣って“場”から外へはじき出している。
「ノハ――」
後ろ。とカグヤが言う前に、彼の背後に襲い掛かる修練者は隙を突いたとノハへ拳を叩きつける。
「まいった」
だが、その攻撃は空振りに終わった。ノハは、まるで見えているように身体を屈め、同時に背後の修練者の股下を潜り抜けて背後に出る。
そのノハを別の修練者はフリーだと勘違いし、更に背後から襲い掛かっていた。
最初の一撃を躱された相対者も振り向く様な形でノハを追う。
「お――」
前方と後方。ノハを相対者と決めた二人の修練者は、二体一であると読み取れていない。ソレを、おい、とカグヤが注意するよりも先に、ノハが跳んだ。
正面の切り替えしてきた相対者の顔面に跳び蹴りを叩き込み昏倒させる。そして、崩れ落ちる彼の身体を足場にして身体を半回転。背後の頭部に相対者に回し蹴りを叩き込んだ。
「ふー。今のは仕方ないよね」
と、気を失った二人の相対者を弁解する様に、カグヤを見ると、ノハは乱戦の中に戻って行った。
「うわぁ。今の気持ち良いだろうなぁ」
ヤエは、華麗に二人をノックアウトしたノハの動きを、真似る様に、ぴょんぴょんと跳ぶ。
「……戦場を蹂躙する“鬼”か」
カグヤは、彼が全ての【裏式】の到達点にして、若くして “鬼人”を名乗る事を許された『朷矢家』の“鬼”であると……目の前で断言できる程のモノを感じていた。
「うぉぉ! 行けー、光陽! 行けるよ! そこでぶっ飛ばせ!!」
ルーは至近距離で聞こえるはずもない声援を送って、一人で盛り上がっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
“反転”した【光王】の様子は、顔の表面に就けている仮面で判断できた。現在は“笑って”いる。
「…………」
アスラとノハ、そして“反転”した雷は、その【光王】を前に動けなかった。得体が知れないのだ。何をしてくるのか、こちらから手を出せばどうなるのかが、全くもって不明なのである。
それでも初撃を雷が見舞った理由は、ギリギリ止められると思った事と、もしそうでなかった場合に、こちらのダメージが通るか確認する為だったのだ。
結果は……どちらも望んだモノではなかったが……
「――――」
ケタケタと笑う【光王】。まるで見下しているかのように手を掲げて嘲笑っているように見える。
「アスラ、どっちだと思う?」
あの様子は、光陽にもルーにも当てはまらない感じだった。故に、どちらの深層願望が“表”に来ているのか、全くもって不明なのだ。
「吾輩としてはルー氏に近いかな。やっぱり、無意識下で吾輩たちに怒っていたのかもね」
V島の件は、特に気にしていないと言っていたが、それは本人の“本音”だけだ。心の奥底で、無意識に考えた場合とは異なるのである。
光陽の事を本気で心配して居れば、抑えて理的に返答したとしても、無意識下ではこちらに対して敵意を抱いても仕方ないだろう。
「のんきな会話してる場合? 私が一瞬引きつけるから、その隙にアンタたちは“反転”しなさ――」
こうなった以上、この場を無事に治めるには『王』の“反転”が必要不可欠だ。ソレをアスラとノハに促した時だった。
「!?」
笑う【光王】のエネルギーが急速に集束を始めた。回転する様に、自らから漏れ出すエネルギーを眼前に集めて行き――
“そんな……これは――ロックオンされた!?”
メイリッヒと暁は、その場にいる三人――アスラ、ノハ、雷が【光王】からの攻撃干渉を受けていた。そして、この反応をメイリッヒは知っている。
【光王】が最初にE市に訪れた時に、ナンドへ放った『神具』の――
「『神具』だ!! ノハ氏、国情氏、吾輩の後ろへ!」
放とうとしている『神具』の名前は解らない。どんな性能なのかも不明だ。後手に回るのは危険すぎる上に、逃げるにしても“魔王城”を放棄する訳にもいかない。
「“極壁”を最大出力にて展開してくれ! こちらも『神具』で相殺する!」
せめて、反する“因果結果”をもたらす『神具』ならば相殺できるのだが……『アグニ』は完璧な賭けだ――
光が集まり終わった。【光王】の眼前に存在する濃縮されたエネルギーは、ソレを炸裂させるだけで核に匹敵するモノとなっている。
「――――」
だが収束した光は、不意に弾けた。まるで拒絶された様に、そのまま軌跡となってパラパラと【光王】の周りに散って行く。
「……? 不発?」
アスラは根本的な事を再度持ち上げる。
“【光王】は、『神具』を失っている”
余裕を持っていた仮面の表層の笑みは、訝しそうなモノへ変化していた。そして、【光王】は自分の腕を見ている。何かを確認しているようだった。
「と、当然よ! あー、びっくりした!!」
間違いなく【光王】は『神具』を持っていない。だが、それでも使おうとした様子に、まさか、という予感が過ったのだ。その所為で『神具』不所持の件が完全に消え失せたのだ。
だが、今【光王】は本気で『神具』を持っていると思っていた。ご丁寧に、こちらをロックし、この場に『神具』を具現化しようとした所を見ると――
「中身は、E市到着時のルー氏と見た。ノハ氏、リプレイといこう」
そのアスラの言葉にノハも理解する。
「アスラ、“反転”――」
巻き上がるエネルギーは、荒々しいモノではない。あの時――【光王】と初めて邂逅した時とは違う。凄まじい速度で、成長しつつあるノハもアスラの足を引っ張るまいと、技量の向上を怠らなかったのだ。
結果、今はあの夜よりも、エネルギーの無駄も無く“反転”できている。疲労感もまるで感じない。
その“反転”したノハに気が付く様に、【光王】は再び不気味に笑った。
「これで、少しだけ天秤がこっちに傾いたね。『武具』は国情さん達に任せるよ。メイさんは、その補佐を。僕達で【光王】の意識を飛ばす」
ノハの言葉に各員が気合を入れ直し、油断なく対峙する。状況はこちらに有利だ。なら、被害を抑えて取り押さえる事が出来るハズ――
その瞬間だった。僅かなエネルギー反応を感じたと思った刹那、雷は吹き飛ばされた。
「――がは!?」
「!?」
まるで、正面から思いっきり殴られたような衝撃に思わず仰け反る。驚愕し、何が起こったのか状況を確認する前に、次々に“衝撃”を連打の様に受けた。
「ッア……グッ!? ッハ!?」
感じるのは僅かなエネルギーだけであり、【光王】はただ、こちらへ向かって歩いて来ているだけだ。何も、攻撃している様子は無い――
「あか……つき――」
『解らない……【光王】がどうやって、あの距離から何もせずに一方的にダメージを――』
一瞬だけ雷と暁の“反転”が解けかけた。『内宙』が攻撃を受けてる!?
正体不明な攻撃は、表層に纏うエネルギーを通過し、エネルギーの根源とも言える『内宙』へ直接ダメージを与えているのだ。
「暁……“反転”を解除しなさい!」
『それは……出来ない……。ライは……この攻撃に耐えられない……』
今も連続して“衝撃”を受けている。このままでは、暁が消えてしま――
その時、ノハが地面を強く踏みつけた。部屋全体が揺れるほどの衝撃に、途端“衝撃”の発生が消える。
「――国情さん。少し遅れてごめん。解ったよ。今の攻撃の正体――」
ノハは少しだけこちらへ進んできている【光王】を見て確信した。そして、何か別の玩具を見つけたように、その仮面は再び笑っている。
「盲点だった。あの夜と違う点が一つだけあった」
そう、あの夜にノハ達が対峙したのは【光王】でも、ルーという“存在”ただ一人だった。しかし、今は――
「今の【光王】はルー・マク・エリスンと桜光陽が成っている。今の攻撃は地面を通しての“剄”の遠隔派生――『遠当て』と言われてる技だ」
ノハだからこそ気が付いたのだ。彼は光陽と同じ武芸をいくつか体得している。“発剄”や“遠当て”もその内の一つだった。
「……でも、【光王】は、足を踏みしめる様な素振りは無かったわ。あれって、強く踏み込まないといけないんでしょ?」
雷も、光陽の戦いの記録は見ていた。彼が攻撃をする際は地面が砕ける程、強く踏み込んでいたのである。何か起こすにしても、初動は見逃し様がないと思っていた。
「うん。そうなんだけど……今は【光王】だ。無造作に歩く程度の“衝撃”をエネルギーで増幅して、“遠当て”を向けるだけで、相当なモノになるハズだよ」
つまり、ただ歩くだけの挙動でも今の【光王】からすれば全て攻撃の初動なのだ。
『神具』を持ってないから無事に取り押さえられる? 改め【光王】陣営の戦力を見直さなければならない。
この戦いは、一個の『王』勢力との戦いに等しいと言う事を。そして、
「……暁、大丈夫?」
『少し……休憩したいわ。ごめん』
増幅された“剄”。世界のエネルギーを意図的にぶつける、その技は、暁の様な知的エネルギーには良くも悪くも有効なのだ。
自分はこの場には居られない。暁も深刻なダメージを受けており“反転”もこれ以上は持続が不可能。そうなれば、アスラ達の足手まといになるからだ。
『吾輩達が仕掛けるタイミングで離脱を。【光王】をこっちに引きつける』
【光王】の仮面は、笑った表情のまま。【魔王】へ、ゆっくりと歩を進めた。




