表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

13、アンジェラさんは幸せですか

 公園のベンチで事情を話した。

 料金滞納でにっちもさっちもいかないこと、ホームレスになってしまったこと、アパートを出ることになった上、実家まで無くなったこと。

 彼女は親身になって聞いてくれた。何度もうんうんと頷いてくれた。

「あたしの好きな人もね、一時期うっかりホームレスになってた時期があってね、だからおねえさんはホームレスには優しいのだ」

 えへへ、と笑った顔は、もう「天使か!」と叫びながら二度見したくなるレベルだった。

 彼女は、アンジェラと名乗った。そういう源氏名らしい。正直、あんまり似合わないと思った。見た目はギャルっぽいいでたちをしているけれど、彼女の本質はそこには無いと思った。何となく他の人とは違う、強い決意みたいな、そういう雰囲気を感じた。

「アンジェラさんの彼氏は、どんな人ですか?」

「やだなぁ、まだ彼氏とかじゃないよ。でも、そうだね、えっとね、どんな人かって言われると、そうだなぁ、ちょっと昔に悲しいことがあってね、それを引きずって腐れてる部分があるけど、すごく優しい人だよ」

「アンジェラさんは、幸せですか」

「だとおもう」

 即答だった。俺はなおも質問する。

「幸せって、何ですか」

「そんなもの、あるのかなあ」

「あれ、でも、幸せだってさっき……」

「うん……あたしはね、幸せだと思うんだけど、あんまり自信は持てないかな、なんて」

「そうですか……」

 俺が呟くように言うと、彼女はへへへと笑いながら、

「まぁ、ホームレス生活は、あたしには到底幸せだとは思えないけどなぁ」

「そうっすね……」

 苦笑いで返すしかなかった。

 少し、沈黙が流れた。カラスが何度か鳴いた。

「仕事、行かなくて良いんすか? アンジェラさん」

「ん、うーん。行くけど、ちょっとその前に」

「何ですか」

「お金、困ってるんだったら、あげようか」

「え」

「うん、そうする。ちょっと、えっと、あのダンボールのやつ、あなたの家でしょ。寒くなってきたから、そこの中で待ってて。お金、おろしてくる」

「あ……」

 俺が何かを言う前に、彼女は立ち上がって駆け出していた。

 思わず恋に落ちそうな、甘い香りを残して。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ