13、アンジェラさんは幸せですか
公園のベンチで事情を話した。
料金滞納でにっちもさっちもいかないこと、ホームレスになってしまったこと、アパートを出ることになった上、実家まで無くなったこと。
彼女は親身になって聞いてくれた。何度もうんうんと頷いてくれた。
「あたしの好きな人もね、一時期うっかりホームレスになってた時期があってね、だからおねえさんはホームレスには優しいのだ」
えへへ、と笑った顔は、もう「天使か!」と叫びながら二度見したくなるレベルだった。
彼女は、アンジェラと名乗った。そういう源氏名らしい。正直、あんまり似合わないと思った。見た目はギャルっぽいいでたちをしているけれど、彼女の本質はそこには無いと思った。何となく他の人とは違う、強い決意みたいな、そういう雰囲気を感じた。
「アンジェラさんの彼氏は、どんな人ですか?」
「やだなぁ、まだ彼氏とかじゃないよ。でも、そうだね、えっとね、どんな人かって言われると、そうだなぁ、ちょっと昔に悲しいことがあってね、それを引きずって腐れてる部分があるけど、すごく優しい人だよ」
「アンジェラさんは、幸せですか」
「だとおもう」
即答だった。俺はなおも質問する。
「幸せって、何ですか」
「そんなもの、あるのかなあ」
「あれ、でも、幸せだってさっき……」
「うん……あたしはね、幸せだと思うんだけど、あんまり自信は持てないかな、なんて」
「そうですか……」
俺が呟くように言うと、彼女はへへへと笑いながら、
「まぁ、ホームレス生活は、あたしには到底幸せだとは思えないけどなぁ」
「そうっすね……」
苦笑いで返すしかなかった。
少し、沈黙が流れた。カラスが何度か鳴いた。
「仕事、行かなくて良いんすか? アンジェラさん」
「ん、うーん。行くけど、ちょっとその前に」
「何ですか」
「お金、困ってるんだったら、あげようか」
「え」
「うん、そうする。ちょっと、えっと、あのダンボールのやつ、あなたの家でしょ。寒くなってきたから、そこの中で待ってて。お金、おろしてくる」
「あ……」
俺が何かを言う前に、彼女は立ち上がって駆け出していた。
思わず恋に落ちそうな、甘い香りを残して。




