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11、とにかく逃げるんだ

 というわけで、俺がやって来たのは、俺が半年以上暮らしていたアパートだった。

 予想外に郵便受けがはちきれんばかりだ。

 一応、時田まことちゃんからの便りが無いかチェックする。

 無かった。

 でも督促状の類はいっぱいあった。絶望した。

 部屋に行って、鍵を開けて扉を開けてみても、まことちゃんの姿は無かった。

 慣れ親しんだはずの自分の部屋が、なんだか「どこ行ってたんだバカご主人様」と冷たい罵声を浴びせている気がして、ひとしきり押入れなどを開けたり何も入っていない冷蔵庫を開けたりして彼女を探した後、逃げるように部屋を出た。

 最終的に手にあったのは、大量の督促状。

 溜息と共に手から力が抜けて、自室の扉前に降り積もった。

 山、山、山。

 請求書の山。

 川、川、川。

 川に流してしまいたい。

 流したところでどうにもならない。

 かくなる上は、とインターネットの世界に俺は逃げた。

 もうアパートの回線は繋がらないので、ネットカフェから広大な仮想世界に繋がった。

 ネットの中の友人たちは、俺がしばらく消えていた間に、知らない話題を大量に振ってきた。情弱という文字列が、何行にも広がって俺の脳内を埋め尽くす。

 しばらく離れていただけで、あっという間に話題についていけなくなった。

 適当に『www』とか『w』と打ち込んで返すしかなかった。

 トイレに入った。個室だ。

 何もかも上手くいかねえ、とかって甘えた涙を流した。

 俺はカフェを出た。

 どこに逃げればいい。どう逃げればいい。

 逃げたい、逃げたい。逃げなくてはならない。

 鞄には、溢れんばかりの督促状や請求書の類。

 逃げないともう、生きていけない。

 どこに、どこに。

 とにかく逃げるんだ。

 もちろん嫌な手紙の届かない場所へ!

 多くを捨てて逃げようと思う。請求書フラグとも言える時田まことが来る前に、どこか見つからない場所へ。

 だから俺は、根城にしていた公園のダンボールハウスに戻った。ここには、まだ時田まことは現れていない。ということは、まだ見つかってないはずだ。そう思って、俺は空腹を満たそうと、栄養たっぷりの棒型健康食品を口にした。まったくもって空腹は、満たされなかった。贅沢な俺の胃袋。

 思わず俯き、溜息を吐いた。



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