2018年5月10日 10時10分
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「滝内ィー!!お前電柱大好きかぁ?!」
地上で指導員が拡声器で激を飛ばしている。
動けない。
今日は配電部門に配属されてからの初めての昇柱訓練。地上10mの高さに怖気づいた俺は、電柱に抱き着いたまま固まってしまっていた。
「オラァ!手離せ!胴綱伸ばせ!!」
胴綱は電柱に引っ掛ける命綱みたいなもので、配電マンはこの綱に体を預けて電柱上で作業を行う。
電柱から手を離せるようにならなければ、配電マンとして使い物にならない。
訓練所ではまず、電柱から手を放せるようになるための訓練を行われる。
「隣見てみろ!お前山田に負けてるぞ!!!」
隣の電柱に目をやると、美雪が足を震わせながら両手を静かに離していた。
「いいぞ山田!自己紹介とこれからの目標言ってみろ!」
「は、はい!」
声を震わせながら美雪は叫ぶ。
「長野電力管区!配電部!配電1課!技術営業1係の山田美雪です!体力つけて、男子に負けないようなたくましい配電技術者になります!!!」
「よくやった!降柱して休め!」
女の子に負けるなんて恥ずかしすぎる。
奮起した俺も恐る恐る電柱から手を放す。
「なんだそのへっぴり腰はぁ!!!万歳しろ滝内!!!!」
俺だけ当たり強くない?
離した手をゆっくり肩の上に挙げる。投降してハンズアップした人みたいな格好になっていた。
「全然ダメだけどまあいい。滝内!自己紹介と目標言ってみろ!!」
あらかじめ用意しておいたセリフを俺は大声で叫ぶ。
「静岡電力管区!配電部!配電1課!技術営業1係の滝内優人です!皆に信頼される、頼りがいのある配電技術者になります!」
「声が小せえ!やり直し!!!」
俺嫌われてる?
そのあと俺は2回もやり直しを喰らうのであった。
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配電訓練所の朝は早い。
6時半に起床して、グラウンドでラジオ体操、電力公社の社歌を皆で熱唱する。
朝飯後は8時半より業務開始。筋トレやランニングを行った後は電柱を使った工事実習を行う。
昼食後もひたすら外線工事。17時の業務終了時点ではへろへろになっていた。
「お疲れ滝内。」
宿泊棟への帰路の途中、同じ班の美雪に声を掛けられる。
「美雪か。大丈夫だったか?」
「うん。そんなことより今日はごめんね。私がボルトを落っことしたばっかりに...。」
柱上作業では落下物は厳禁だ。実現場での落下物は地上に停めてある車を壊したり、人に当たったりと公衆災害につながるためである。
訓練所では落下物に対しては厳しく処罰される。配電B02班はグラウンド5周と腕立50回を言い渡された。
「いいんだ。俺だって金物の取り付け方向間違えて、やり直しすることになったし...。」
「あのミスはあり得なかったな。おかげでB02班は4回連続ビリだ。」
班員の桑田が話に割って入ってくる。桑田の追い打ちは心に刺さる。
今回のミスは完全に俺が悪いので、謝ることしかできなかった。
「まあ良いんじゃない?みんな怪我無く無事に終わったんだしさ!」
4人目の班員の田村は優しくこの場を和らげる。おっちょこちょいだが、良い奴だ。
皆汗と涙でぐちゃぐちゃでひどい格好だった。
「今日はチクショー会といきますか。風呂入ったら滝内の部屋集合で。」
「良いねー!売店でお菓子買ってくよ。」
「ついでに明日の作業打ち合わせもやらないとな。」
何か勝手に話が進んでいる。
「あんまり部屋汚さないでね。」
4人でわいわい宿泊棟へ向けて歩いていく。なんやかんや仲が良い配電B02班は俺は大好きだった。




