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雷獣  作者: ごーまるな
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32/34

2018年5月10日 10時10分

............


「滝内ィー!!お前電柱大好きかぁ?!」


地上で指導員が拡声器で激を飛ばしている。


動けない。


今日は配電部門に配属されてからの初めての昇柱訓練。地上10mの高さに怖気づいた俺は、電柱に抱き着いたまま固まってしまっていた。


「オラァ!手離せ!胴綱(どうづな)伸ばせ!!」


胴綱は電柱に引っ掛ける命綱みたいなもので、配電マンはこの綱に体を預けて電柱上で作業を行う。

電柱から手を離せるようにならなければ、配電マンとして使い物にならない。

訓練所ではまず、電柱から手を放せるようになるための訓練を行われる。


「隣見てみろ!お前山田に負けてるぞ!!!」


隣の電柱に目をやると、美雪が足を震わせながら両手を静かに離していた。


「いいぞ山田!自己紹介とこれからの目標言ってみろ!」

「は、はい!」


声を震わせながら美雪は叫ぶ。


「長野電力管区!配電部!配電1課!技術営業1係の山田美雪です!体力つけて、男子に負けないようなたくましい配電技術者になります!!!」

「よくやった!降柱して休め!」


女の子に負けるなんて恥ずかしすぎる。

奮起した俺も恐る恐る電柱から手を放す。


「なんだそのへっぴり腰はぁ!!!万歳しろ滝内!!!!」


俺だけ当たり強くない?

離した手をゆっくり肩の上に挙げる。投降してハンズアップした人みたいな格好になっていた。


「全然ダメだけどまあいい。滝内!自己紹介と目標言ってみろ!!」


あらかじめ用意しておいたセリフを俺は大声で叫ぶ。


「静岡電力管区!配電部!配電1課!技術営業1係の滝内優人です!皆に信頼される、頼りがいのある配電技術者になります!」

「声が小せえ!やり直し!!!」


俺嫌われてる?

そのあと俺は2回もやり直しを喰らうのであった。


............


配電訓練所の朝は早い。

6時半に起床して、グラウンドでラジオ体操、電力公社の社歌を皆で熱唱する。

朝飯後は8時半より業務開始。筋トレやランニングを行った後は電柱を使った工事実習を行う。

昼食後もひたすら外線工事。17時の業務終了時点ではへろへろになっていた。


「お疲れ滝内。」


宿泊棟への帰路の途中、同じ班の美雪に声を掛けられる。


「美雪か。大丈夫だったか?」

「うん。そんなことより今日はごめんね。私がボルトを落っことしたばっかりに...。」


柱上作業では落下物は厳禁だ。実現場での落下物は地上に停めてある車を壊したり、人に当たったりと公衆災害につながるためである。

訓練所では落下物に対しては厳しく処罰される。配電B02班はグラウンド5周と腕立50回を言い渡された。


「いいんだ。俺だって金物(かなもの)の取り付け方向間違えて、やり直しすることになったし...。」

「あのミスはあり得なかったな。おかげでB02班は4回連続ビリだ。」


班員の桑田が話に割って入ってくる。桑田の追い打ちは心に刺さる。

今回のミスは完全に俺が悪いので、謝ることしかできなかった。


「まあ良いんじゃない?みんな怪我無く無事に終わったんだしさ!」


4人目の班員の田村は優しくこの場を和らげる。おっちょこちょいだが、良い奴だ。

皆汗と涙でぐちゃぐちゃでひどい格好だった。


「今日はチクショー会といきますか。風呂入ったら滝内の部屋集合で。」

「良いねー!売店でお菓子買ってくよ。」

「ついでに明日の作業打ち合わせもやらないとな。」


何か勝手に話が進んでいる。


「あんまり部屋汚さないでね。」


4人でわいわい宿泊棟へ向けて歩いていく。なんやかんや仲が良い配電B02班は俺は大好きだった。

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