2022年5月29日 0時30分
軽井沢荘の会議室は重い空気になっていた。
会議室内には、旅館の従業員、宿泊客、西電のSG達が集められていた。
会議室の演台にはスーツ姿の強面の男。サイドには警察官が2人立っている。
バタンッとドアが開き、刑事らしきスーツ姿の男が足早に入ってきて、演台の強面の男に耳打ちする。
強面の男の表情が、更に険しくなった。
「軽井沢地区警察の荒木だ。たった今、工藤常務の死亡が確認された。何らかの毒物による死因であることは間違いないそうだ。」
会議室内がざわつく。
「警察としては殺人の可能性が高いとして、今から全員の持ち物検査と、本日20時前後の行動を聴取したい。」
「今から1人ずつ検査と聴取を行う。終わるまではここから出ないように。まずは、右前の君から!」
荒木という刑事に促されて、軽井沢荘の従業員が会議室から出ていく。
俺の嫌な予感は的中し、工藤常務は何者かに殺害されてしまったのであった。
近くに座っていた杉浦が、俺と美由に話しかける。
「電気がついたのを確認した後、すぐに電子錠を解錠してセーフルームに突入したの。」
「明かりをつけたら工藤常務が部屋の真ん中で倒れていて...。完全な密室だったの。殺すなんて不可能よ。」
セーフルームは軽井沢荘の地下にあり、核戦争が起きても耐えられる分厚い壁に囲まれ、入り口は1つらしい。
「工藤常務が閉じ込められた後に知らされたんだけど、フロントに常務への殺害予告電話がかかってきたみたいで、直ぐにセーフルームに移動させたみたい。」
「なるほど、それでセーフルームに...。」
「非常用発電機も燃料が切れてて、作動しなかったらしい。点検したのも半年前とか言ってたし、ほんと杜撰!」
杉浦は悔しそうに歯を食いしばる。目からは涙を浮かべていた。
取り調べは粛々と進んでいき、次は杉浦の番になった。
「杉浦佳奈...。西電の警備部門員か。隣の部屋へ。」
荒木に呼び出され、杉浦は部屋から出ていった。
30分...1時間は経っただろうか。他の人に比べて取調べの時間が長い。
「随分時間かかるね...。」
美由は不安そうにつぶやく。
さらに10分後、会議室の扉が開き、荒木が入って来た。
「容疑者が見つかった。今日は解散していいぞ。」
そう言い残し、荒木と取り巻きの警官は会議室を後にしていく。
会議室内がざわつく。
「まさか!」
「佳奈が!?」
俺と美由はすぐに立ち上がり、荒木の後を追う。
「ちょっと待ってください!」
美由が荒木に声をかける。
「なんだお前ら。宿泊客か?犯人は捕まったんだ。早く自分の部屋に戻りなさい。」
「犯人ってまさか、杉浦佳奈じゃないですよね?!」
荒木は立ち止まる。
「何だ知り合いか。そうだ、やつの所持品からサリンガスの容器が見つかった。工藤常務の体からもサリンが検出された。間違いないだろう。」
「そんな!佳奈が人を殺すなんて有り得ません!第一、常務の護衛をしていたんですよ!」
その言葉を聞いて荒木はニヤリとする。
「動機はある。」
その言葉に俺と美由は唖然とした。
「工藤常務は杉浦佳奈の父親だ。」
美由が地面にへたり込む。
俺はしゃがんで美由をキャッチする。
あまりの事実に俺と美由は驚愕していた。




