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雷獣  作者: ごーまるな
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2022年5月28日 20時30分

俺たちは美雪の社用車まで戻って、スライドドアを開ける。

鍵は差しっぱなしになっていた。


車内を見渡し、絶縁抵抗測定器と「山田」と書いてある保護具バッグを車から引っ張り出す。


「早く届けてあげないとね。」


俺と美由は荷物を持って、駆けていく。

電気室に到着すると、美雪の姿は無かった。


「あれ?どこ行った?」

「軽井沢荘の人と話してるんじゃない?」


しばらく経って、美雪が姿を現す。


「ごめんごめん、SGの人たちに事情を説明しててさ!しかし驚いたね!常務が閉じ込められてるなんて。すぐ復旧してあげないと。」

「そうだね。はい、保護具。」


俺は事前にバッグから出しておいた絶縁保護チョッキと手袋、長靴を美雪に手渡す。


「サンキュー滝内、B02班コンビ復活だね。」


美雪は素早く保護具を装着して、電気室内開閉器を開放してから、絶縁測定をてきぱきと行う。


「1000MΩ(メグオーム)...問題なしと。」


社給スマホを取り出した美雪は、佐久配電指令に電話をかける。


「お疲れ様です。軽井沢配電3です。20時40分事故点異物撤去完了、メガー1000MΩ良好、これより送電操作に入ります...。はい、了解しました。」


電話をしまい、美雪は俺たちの方に向き直る。


「配電司令から送電操作の許可が降りた。主任技術者はまだ来てないみたいだけど、話はついてるみたい。」

「SOG投入するよ。滝内、梯子と腰道具持って来て。」


本当に人遣いが荒い。


俺と美由は絶縁測定器と保護具を抱えて、再び美雪の車に戻る。


「俺は荷物しまうから、美由は梯子外しといて!」

「分かった!」


美由は背伸びして、車の上部にくくってある梯子の固定ゴムを外す。

俺はスライドドアを開けて、荷物を車の中に放り込む。

美雪の腰道具を探そうと車内を見て、俺は違和感を感じる。


「地中作業用の送風機...?こんなのあったかな。」

「梯子取れたよ!早く行こ!」


そんなことより送電だ。

俺は腰道具、美由は梯子を持って駆け出す。

2人でSOGのついている電柱まで移動すると、美雪が手を振って居場所を知らせる。


「待たせた。これ腰道具。」

「ありがとね。滝内の彼女さんもありがとうございます。大変助かりました。」

「私も同じ西電社員です。礼には及びませんよ。」


腰道具を装着した美雪はガシャガシャと電柱を登っていく。


「滝内ー!SOG投入するぞぉ!リセットォ!」

「リセットー!」


俺の呼びかけと同時に美雪は操作ヒモを引っ張る。


「SOG投入ー!」

「投入ー!」


バゴォーンという音がして、軽井沢荘に一気に灯りが灯る。


「やった!ついた!」


美由はパチパチと手を叩く。


「配電の人達ってかっこいい!」


そう言われると俺も照れる。


「点灯ヨシみたいだな。」


美雪は電柱から降りてきて、腰道具を外す。


「今から軽井沢荘の人とSGに話してくる!滝内、コレと梯子片付けておいてくれ。」


立ってるものは親でも使え。訓練所の時から美雪は変わらないなと思った。


梯子と腰道具を車に片付けた俺と美由は軽井沢荘のエントランス前に戻って来た。

2人とも汗だくだった。またお風呂に入り直さないと。


車受けに救急車が止まっている。停電に驚いて転んだ人でも出たのだろうか。


「見て!あれ!」


美由がエントランスの自動ドアを指差す。

中から救急隊員と、西電のSGに囲まれたストレッチャーが出てくる。


「工藤常務じゃない?」

「まさか。」


俺の頭に嫌な予感がよぎる。

沢山の護衛は命を狙われていたからなのではないか。こんなにタイミングよく停電するのもおかしい。

残念ながらその嫌な予感は的中するのであった。

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