2022年5月28日 9時00分
こだま号は快調に進み、富士駅に到着しようとしていた。
「優人!あれ見て!」
美由が北のほうを指差す。
「おおー!富士山!」
今日は雲が出ていたが、雲の切れ間から富士山のてっぺんが顔をのぞかせていた。
標高3,776メートル。日本一高い山は立入禁止区域の最奥にあり、手付かずの自然が残っているらしい。
手前にはアース鉄塔の反射光で光の線が出来ている。
「どうよ気分は?」
「うーん。50ヘルツ地帯は久しぶりだから体が慣れないねえ。」
「身内ネタやめなさい。」
日本の電気の周波数は富士川-糸魚川ラインで60ヘルツと50ヘルツに分かれている。
その昔、電気が導入された初期のころ、50ヘルツのドイツ製の発電機を導入した東京電燈という会社と、60ヘルツのアメリカ製の発電機を導入した大阪電燈という会社があり、互いに送電網を広げた結果、日本は中心で50ヘルツと60ヘルツに分断される形となってしまった。
1931年に政府主導で2社は電力公社として合併されたが、周波数の違いは解消されないまま今に至る。
2019年に再度分割民営化がなされた際、50ヘルツ地帯を東日本電力、60ヘルツ地帯を西日本電力が継承する形となった。
静岡県は富士川で周波数が分離されており、富士川より西は西日本電力、東は東日本電力のエリアとなっていた。
「そろそろ沼津らへんじゃない?優人の第二の故郷。」
「御殿場もその先だよね。美由の故郷。」
2人で見慣れた景色を懐かしそうに見つめる。
「そういえばお互いに御殿場線ユーザーだったんじゃない?」
「そうだね。よく鹿と衝突して遅延してたなあ。懐かしい。」
雷獣災害で国電御殿場線は廃線となっており、過去の遺物となっている。
第三高専は下土狩駅、第五高専は深沢駅が最寄りだった。
三島を出発した新幹線は直ぐに丹那トンネルに入る。トンネルを抜けると熱海小田原、東京がだんだん近づいてきた。
≫しゅうはすう【周波数】
送電線に用いられる交流電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっているもので、1秒間に何十回も入れ替わりが行われている。この交流電気の入れ替わる波の回数のことを周波数と呼び、周波数の単位にはHzを使用している。




