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碧城学園奮闘記(仮)  作者: 朝比奈 黎兎
憂鬱な球技大会
15/15

1-3


 見学をしていた理麻のもとに、突然現れた副会長――――歩は、直ぐに立ち去るのかと思ったのだが、なぜか今理麻の隣に同じように座っている。見回りはいいのかと、訊ねたのだがどうやらここが最後だったらしく、あとはプリントを提出すればいいのだといい、現在に至る。


「ここにいるってことは、理麻ちゃんバスケなんだ。でもこういうの苦手そうだよねー、その体型じゃ余計に……」


 いつのまにか『理麻ちゃん』呼びになっている。しかし理麻にそれを拒むことはできない。まだそこまで慣れていないのと、副会長という肩書きがもっぱらの理由だ。明らかに後半、理麻が気にしていることを言ったのだが、それにすら怒ることもできない。


「俺はね、テニスやるんだ。シングルスだけどね。もしよかったら見に来てー、応援してくれたらさらに嬉しいな」


 テニスはシングルスとダブルスで別れそれぞれ試合が行われる。この学校にはテニスコートが8面もあり、それぞれ4面ずつ使って試合が行われるそうだ。


「テニス、得意なんですか?」

「んー、ぶっちゃけ、どれも得意だけど。3年間同じ競技ってのもつまらないから、ってのが理由かな」


 1年の時はバスケ、2年の時はハンドボールをやったそうだ。そんな話を聞いて、理麻はさらに自分の運動音痴さに落ち込んだ。


(同じ競技ってのもつまらないって……そんな、僕には到底思えそうもないな……。まず一つの競技すら、満足にできないんだし……)


 ずぅーん、と落ち込んでいた時だった。


「理麻――――!!よけろ――――!!」


 そんな叫び声が聞こえた。その声の主が玲治であるとわかった瞬間、理麻は自身に迫り来るオレンジ色を目にした。


 しかし理麻に咄嗟によけれるほどの反射神経が備わっているはずもなく、襲いかかってくるであろう衝撃を思い浮かべ、ただ目を瞑ることしかできない。

 

 目の前でボールが何かに当たったであろう音が聞こえた。しかし思い浮かべた衝撃はいつまでたっても来ない。理麻は恐る恐るゆっくりと目を開く。見えてきたのはものすごい勢いで飛んできていたオレンジ色――――バスケットボール――――を受け止めた誰かの手。もちろん理麻のものではない。


「……あっぶねーな。こっち見学者いるんだから気をつけてねー!!」


 チラリと理麻は隣にいる歩を見る。片手で器用にボールを弄び、コートの方を見てニコニコしている。先ほどどれも得意だと言っていたが、バスケもそのうちに含まれているのだろう。


「あの……ありがと、ございました……」

「びっくりしたねー、怪我はない?」

「はい、大丈夫、です」

「理麻!悪い大丈夫か?」


 そこへ心配そうに玲治やバスケを選んだクラスメイト達が駆け寄ってきた。みんなそれぞれ口々に声をかけてきて、理麻は少しキョドってしまう。


「だ、大丈夫。副会長さん、助けて、くれた、から」

「熱中するのもいいけどー、怪我人出さないようにね。怪我したら楽しい行事も台無しだし」


 あまり接したことのない副会長に、玲治以外のクラスメイトは緊張した面持ちで、その言葉に頷いていた。歩がボールを返すと彼らは揃ってコートの方に戻っていく。


「今日の練習は時間的に終わりだな。そろそろ歩けそうか?」

「うん、僕も片付け手伝う」

「あんま無理すんなっての」

「そうそう、やりたくないときは誰かに押し付けちゃえばいいんだよー」

「あんたは、仕事サボりすぎだろうがよ」

「あっははー、じゃ俺もそろそろ帰ろっと。またねー理麻ちゃん!」

「あ、はい」


 ひらひらと手を振って、副会長は帰っていった。





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