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神葬戦争  作者: 水煮込み
11/17

ようこそ、ジャポネへ!


午前七時三十分。

ジャポネ東部、天城国際軍用港。


「……でっけぇ」

黒瀬迅は、口を開けて空を見上げていた。

「……でっけぇな」


隣のラフバも、同じ顔をしていた。

二人の視線の先には、巨大な輸送機が浮かんでいる。

全長二百メートルを超える白銀の機体。

機体側面には、十字架を模したキリスト教軍の紋章。

その周囲を、小型の誘導機が飛び回っていた。


ゴォォォォォ……!!


重低音が港全体に響く。

巨大な輸送機が、ゆっくりと着陸した。

「……すっげぇ!」


迅が叫んだ。

「なあ、アギ! あれ、何!?」


アギ・ハワーは端末を確認した。

「キリスト教軍の大型輸送機ですね。装甲車両や物資をまとめて運べる機体です」


ラフバが目を輝かせた。

「ははっ! あれに乗ってみてぇ!」

「あなた、キリスト教軍所属でしょう?」

「俺が乗ってきたのは装甲車だ!」

「……そうでしたね」


迅は輸送機を見上げた。

「……いいなぁ」


その隣には、無宗教軍の輸送機が一機。

古い。小さい。塗装が剥がれている。

機体側面には、補修した跡がいくつも残っていた。


迅は二機を見比べた。


「…………」

ラフバも見比べた。

「…………」


そして。


「……なあ」

迅が口を開いた。

「……うちの飛行機、ちっちゃくね?」


ラフバは頷いた。

「……ちっちゃいな」

「……あっち、めっちゃでかくね?」

「……でかいな」


二人は顔を見合わせた。


そして。


「「金持ちって、すげぇ!!」」

アギは頭を抱えた。

「……恥ずかしいので、大声で言わないでください」


そのとき。


背後から怒鳴り声が飛んできた。

「お前らぁ!!」


宮田だった。

手には作業用端末。

額には汗。

「見物してねぇで、荷物を運べ!!」


迅は振り返った。

「えー!」


ラフバも不満そうだった。

「せっかく面白ぇもんが来たのに!」


宮田は二人を睨んだ。

「今日は歓迎係兼、荷役補助だろうが!」


アギは即座に頭を下げた。

「すみません。すぐに作業へ戻ります」


迅はため息をついた。

「……へいへい」


ラフバも肩をすくめた。

「しょうがねぇな」


三人は荷物の積み下ろしを始めた。

その間にも、世界各地から輸送機が到着していた。

白い機体。

金色の紋章。

巨大な軍用車両。

見たことのない装備。

そして、聞き慣れない言葉。

迅は荷物を抱えながら、周囲を見渡した。


「……なあ、ラフ」

「ラフバだ」

「……世界って、本当に広ぇな」

ラフバは笑った。


「……ああ!」


そして。


「……強ぇ奴も、いっぱいいそうだ!」

迅も笑った。

「……だな!」

二人の目は、既に輝いていた。



午前九時。

天城国際軍用港、第三搬入口。


「……すみません」


背後から声がした。

迅が振り返る。

そこには、一人の青年が立っていた。

金髪。

青い瞳。

整った顔立ち。

白い軍服。

胸には、キリスト教軍の紋章。

「こちらは、第七駐屯基地行きの輸送車両でしょうか?」


迅は首を傾げた。

「……ん?」


青年は丁寧に頭を下げた。

「失礼しました。私はキリスト教軍所属、エリオット・グレイと申します」


迅は少し考えた。

「……エリ……」

「エリオットです」

「……エリ……エリ……」

「エリオットです」


迅は笑った。

「……エリでいい?」


青年は少し驚いた。


そして。


「……構いませんよ」

迅は笑った。

「俺、黒瀬迅!」

「存じています」

「……え?」


迅が固まった。

エリオットは静かに続けた。

「アリス教軍の機械兵三体を撃破した、第十三混成班の方ですよね」


迅は目を丸くした。

「……おお!」


ラフバが横から顔を出した。

「俺もいるぞ!」


エリオットは振り返った。

「ラフバ・エラーさんですね」


ラフバは笑った。

「おう!」


そして。


「……お前、強ぇのか?」


アギが即座に振り返った。

「ラフバ!」


しかし、エリオットは穏やかに笑った。

「どうでしょう。自分では、まだまだだと思っています」


ラフバはにやりと笑った。

「……いいねぇ」


迅も笑った。

「……じゃあ、勝負しようぜ!」


アギは頭を抱えた。

「……会って三十秒ですよ!?」


エリオットは少し考えた。


そして。


「……演習で機会があれば、ぜひ」

迅とラフバの目が輝いた。

「「マジ!?」」


エリオットは頷いた。

「はい」


ラフバは拳を握った。

「よっしゃ!」


迅も笑った。

「楽しみだな!」


エリオットは二人を見て、小さく笑った。

「……噂以上に、元気な方々ですね」


アギは深くため息をついた。

「……すみません」


エリオットは首を振った。

「いえ」


そして。


「……少し、羨ましいです」

アギが顔を上げた。

「……羨ましい?」


エリオットは頷いた。

「こんなふうに、遠慮なく話せる仲間がいるのは」


迅は首を傾げた。

「……何だよ、それ」


そして。


「……お前も話せばいいじゃん」

エリオットは少し驚いた。


迅は笑った。

「同じ演習に出るんだろ?」

「……はい」

「じゃあ、仲間みてぇなもんじゃん!」


ラフバも笑った。

「まあ、勝負は別だけどな!」


アギは小さく微笑んだ。

「……この二人は、誰にでもこうなんです」


エリオットは数秒黙った。


そして。


「……そうですか」

静かに笑った。

「……ありがとうございます」



午前十時二十分。

天城国際軍用港、北方輸送区画。


巨大な軍用列車が、ゆっくりと停車した。

車体には、蓮の花を模した紋章。

仏教軍の輸送列車だった。


プシューッ。


扉が開く。


次々と兵士たちが降りてくる。

その中に、一人の少女がいた。

黒髪を後ろで束ねた、落ち着いた雰囲気の少女。


ミナ・レン。


彼女は周囲を見渡した。

「……ここが、ジャポネ」


巨大な港。

海上に浮かぶ輸送船。

空を行き交う軍用機。

そして、遠くに見える超高層都市。


ミナは小さく微笑んだ。

「……綺麗な街」


そのとき。


「……ミナ?」

背後から声がした。

ミナが振り返る。

そこには、アギが立っていた。


「…………」


一瞬、沈黙。


そして。


「……アギ!?」

ミナの表情が明るくなった。

「久しぶり!」


アギも笑った。

「……本当に、久しぶりですね」


二人は近づいた。

「元気だった?」

「はい。ミナも元気そうですね」

「もちろん!」


ミナはアギを見つめた。


そして。


「……少し、雰囲気が変わったね」


アギは首を傾げた。

「……そうですか?」

「うん」


ミナは笑った。

「前より、柔らかくなった気がする」


アギは少し考えた。


そして。


「……そうかもしれません」


そのとき。


「……おーい!」


遠くから、迅の声がした。

アギが振り返る。

「……あ」


迅とラフバが走ってきた。

その後ろには、エリオット。

迅は手を振った。

「アギー!」


ラフバも叫んだ。

「おい、アギ! こっちに強そうな奴がいたぞ!」


アギはため息をついた。

「……またですか」


ミナは目を丸くした。

「……あの人たちは?」


アギは少し困ったように笑った。

「……私の班の仲間です」


迅が近づいた。

「……お?」


ミナを見た。

「……誰?」


アギは紹介した。

「こちらはミナ・レン。仏教軍の兵士で、昔の知り合いです」


ミナは軽く頭を下げた。

「初めまして」


迅は笑った。

「俺、黒瀬迅!」


ラフバも笑った。

「ラフバ・エラーだ!」


ミナは二人を見た。


そして。


「……あ」


少し驚いた顔になる。

「……第十三混成班の?」


迅は笑った。

「お、知ってんの?」


ミナは頷いた。

「はい。アリス教軍の機械兵を撃破したって」


ラフバは胸を張った。

「当然だ!」


アギはため息をついた。

「……また調子に乗って」


ミナは小さく笑った。

「……ふふ」


そして。


「……本当に、賑やかな班だね」


アギは苦笑した。

「……毎日こんな感じです」


ミナはアギを見た。

「……大変そう」


アギは静かに答えた。

「……はい」


少しだけ間を置く。


そして。


「……でも」


ミナが首を傾げた。

「……でも?」


アギは小さく微笑んだ。

「……悪くないですよ」

ミナは少し驚いた。


そして。


「……そっか」

嬉しそうに笑った。



午後零時。

第七駐屯基地、第一食堂。


「……なあ」

迅が口を開いた。

「……エリ」

「はい」

「……お前らの軍って、毎日肉出るの?」


エリオットは少し考えた。

「……基本的には、栄養管理された食事が提供されますね」


迅は目を丸くした。

「……肉は?」

「日によりますが、比較的よく出ます」

「…………」


迅が固まった。

ラフバも固まった。

「……なあ、ラフ」

「ラフバだ」

「……俺、キリスト教軍に転職しようかな」


アギが即座に言った。

「駄目です」


エリオットは苦笑した。

「……食事が理由ですか?」


迅は真顔で頷いた。

「……重要だろ」


ラフバも笑った。

「ははっ! 確かにな!」


ミナは不思議そうに首を傾げた。

「……無宗教軍って、そんなに食事が大変なの?」


アギは少し困ったように笑った。

「……予算が限られているので」


迅は皿を指差した。

「見ろよ、これ!」


そこには、いつもの薄いスープ。

硬いパン。

そして、少量の野菜。


エリオットは少し驚いた。

「……これが、普段の食事ですか?」


迅は頷いた。

「おう!」


ミナは少し考えた。


そして。


「……あの」

迅が顔を上げる。

「ん?」


ミナは自分の荷物から、小さな包みを取り出した。

「よかったら、これ」


迅は首を傾げた。

「……何?」

「蓮華京のお菓子です」


包みを開く。

中には、小さな丸い菓子が並んでいた。

淡い金色。

表面には、花の模様。


迅の目が輝いた。

「……おお!」


ミナは笑った。

「米粉と蜜で作ったお菓子です」


迅は一つ手に取った。

「……食っていい?」

「もちろん」


迅は口に入れた。

「…………」


数秒後。


「……うっま!!」


叫んだ。


「何これ!?」


ミナは笑った。

「気に入ってもらえた?」


迅は頷いた。

「めっちゃうめぇ!」


ラフバも一つ食べた。

「……おお!」


そして。


「……うめぇな!」


アギも小さく微笑んだ。

「……懐かしい味ですね」


ミナは嬉しそうに頷いた。

「……よかった」


エリオットも一つ受け取った。

「……ありがとうございます」


ミナは笑った。

「どういたしまして」


そのとき。


迅が口を開いた。

「……なあ」


全員が顔を上げる。

迅は笑った。

「……世界って、うまいもんいっぱいあんだな」


エリオットは頷いた。

「そうですね」


ミナも笑った。

「蓮華京には、もっといろんな料理がありますよ」


迅の目が輝いた。

「……マジ!?」

「はい」


ラフバも笑った。

「セント・ヴェイルにもあるんだろ!?」


エリオットは頷いた。

「もちろんです」


迅は拳を握った。

「……よし!」


アギが首を傾げた。

「……何がですか?」


迅は笑った。

「……いつか、全部食いに行く!」


ラフバも笑った。

「俺もだ!」


アギはため息をついた。

「……本当に、食べ物ばかりですね」


しかし。


その表情には、笑みが浮かんでいた。

異なる宗教。

異なる軍。

異なる故郷。


それでも。


同じ食卓を囲めば、笑い合うことができる。

少なくとも、この五人はそうだった。



午後二時。

第七駐屯基地、共同訓練場。


「……おい」

迅が口を開いた。

「……あれ、何?」


視線の先には、巨大な軍用アンドロイドが立っていた。


全高三メートル。

白銀の重装甲。

両腕には大型の防御装備。

胸部には、キリスト教軍の紋章。


HCA-91《ガーディアン》。


キリスト教軍の重装甲戦闘アンドロイドだった。


ラフバが笑った。

「ははっ! すげぇだろ!」


迅は目を輝かせた。

「……でっけぇ!」


エリオットは頷いた。

「防御性能を重視した機体です」


迅は近づいた。

「……触っていい?」


エリオットは少し考えた。

「……担当者に確認してからなら」


迅は頷いた。

「おう!」


そのとき。


背後から声がした。

「……おい」


振り返ると、数人のキリスト教軍兵士が立っていた。

その先頭には、体格の良い青年。

短い茶髪。

鋭い目つき。

「……お前ら、無宗教軍か?」


迅は首を傾げた。

「……そうだけど?」


青年は迅を見た。


そして。


「……ふん」

小さく鼻を鳴らした。

「噂の第十三混成班ってやつか」


ラフバが笑った。

「おう!」


青年は腕を組んだ。

「……機械兵三体倒したくらいで、随分と有名になったもんだな」


迅は少しだけ眉を上げた。

「……あ?」


アギが一歩前へ出た。

「……何かご用でしょうか?」


青年はアギを見た。

「別に。ただ、どれほどの実力か気になっただけだ」


エリオットが口を開いた。

「……グラン、やめておけ」


青年は振り返った。

「何だよ、エリオット」

「まだ演習前だ」

「分かってる」


グランと呼ばれた青年は、迅を見た。

「……お前、黒瀬迅だろ?」


迅は頷いた。

「おう」


グランはにやりと笑った。

「……俺はグラン・バルク」


そして。

「キリスト教軍の兵士だ」


迅は笑った。

「……へぇ」


グランは続けた。

「演習が始まったら、俺が相手してやるよ」


迅の目が輝いた。

「……マジ!?」


グランは少し驚いた。

「……あ?」


迅は笑った。

「いいじゃん! 楽しみだな!」


ラフバも笑った。

「おい、俺も混ぜろ!」


グランは眉をひそめた。

「……お前ら、怖くねぇのか?」


迅は首を傾げた。

「……何が?」


グランは少し黙った。


そして。


「……いや」


にやりと笑った。


「……面白ぇな、お前ら」

迅も笑った。

「だろ?」


アギはため息をついた。

「……また、面倒なことになりそうですね」


ミナは小さく笑った。

「……ふふ」


エリオットは苦笑した。

「……まったく」


こうして。


三軍合同演習を前に、新たなライバルが現れた。



午後五時。

ジャポネ東部、天城市。


三軍の兵士たちを迎えるため、街には多くの人々が集まっていた。

天城市。

巨大な軍用港を抱える、ジャポネ東部最大級の都市。

空には幾重にも重なる高架道路。

建物の間を縫うように走る高速鉄道。

地上には、古い商店街。

そして、その隣には、最新式の巨大商業施設。

古い文化と新しい技術が混在する街だった。


「……うおおお!」

迅は目を輝かせた。

「……すげぇ!」


ラフバも笑った。

「ははっ! でっけぇ街だな!」


アギは端末を確認していた。

「……自由時間は一時間半です」


迅は振り返った。

「……短くね?」

「短くありません」

「……二時間!」

「駄目です」

「……一時間五十分!」

「交渉しないでください」


ラフバが笑った。

「ははっ!」


エリオットは周囲を見渡していた。

「……綺麗な街ですね」


ミナも頷いた。

「……うん」


迅は笑った。

「だろ?」


エリオットは少し驚いた。

「……黒瀬さんは、この街の出身なんですか?」


迅は首を振った。

「いや、違う」

「……そうなんですね」


迅は笑った。

「でも、ジャポネは俺の国だからな!」


エリオットは小さく頷いた。

「……なるほど」


そのとき。

「……お兄ちゃん!」


小さな声がした。

迅が振り返る。

そこには、一人の少年が立っていた。

十歳くらい。

手には、小さな紙袋。


「……ん?」

少年は迅を見上げた。

「……軍人さん?」


迅は頷いた。

「おう!」


少年は目を輝かせた。

「……すごい!」


迅は笑った。

「ははっ! だろ?」


少年は続けた。

「……アリス教軍と戦ったことある?」


迅は少し黙った。


そして。


「……あるぞ」

少年の目がさらに輝いた。

「……勝った?」


迅は笑った。

「……おう!」


少年は嬉しそうに笑った。

「……すごい!」


迅は少し照れたように頭をかいた。

「……まあな」


そのとき。


少年の母親らしき女性が駆け寄ってきた。

「……すみません!」


迅は振り返った。

「ん?」


女性は頭を下げた。

「この子が、急に……」


迅は笑った。

「いいって!」


女性は少し安心したように微笑んだ。

「……ありがとうございます」


少年は迅を見上げた。

「……お兄ちゃん」

「ん?」

「……強いの?」


迅は少し考えた。


そして。


「……まだまだだな」


少年は首を傾げた。

「……そうなの?」


迅は笑った。

「おう」


そして。


「……でも、もっと強くなるぞ」


少年は嬉しそうに笑った。

「……頑張って!」


迅は頷いた。

「おう!」


少年は母親と一緒に去っていった。

迅は、その背中を見つめていた。

エリオットが静かに言った。


「……いい子ですね」


迅は頷いた。

「……だな」


ミナも小さく微笑んだ。

「……こういう街を守るために、私たちは戦っているんですよね」


アギは静かに頷いた。

「……ええ」


ラフバは拳を握った。

「……だったら、もっと強くならねぇとな!」


迅は笑った。

「……だな!」


夕日が、巨大な都市を赤く染めていた。



午後六時。

天城市、中央広場。


広場の中央には、巨大な噴水。

その周囲には、様々な宗教の建築物が並んでいた。

小さな教会。

仏教寺院。

無宗教者向けの公共施設。

そして、一般市民の商店。

三軍合同演習の開催を祝う旗が、街路に掲げられていた。


迅は噴水の縁に座っていた。

隣には、ラフバ。

少し離れて、アギ、エリオット、ミナ。

五人は、街の屋台で買った食べ物を手にしていた。


「……なあ」

迅が口を開いた。

「……お前らって、神様信じてんの?」


エリオットが顔を上げた。

「……はい」


迅は頷いた。

「……へぇ」


ミナも静かに答えた。

「私は、仏教の教えを大切にしています」


迅は少し考えた。

「……なるほど」


ラフバが笑った。

「俺は神になりてぇ!」


エリオットが固まった。

「…………」


ミナも目を丸くした。

「……え?」


アギはため息をついた。

「……ラフバ」


ラフバは笑った。

「何だよ!」


迅も笑った。

「ははっ! お前らしいな!」


エリオットは少し困ったように笑った。

「……随分と、大きな目標ですね」


ラフバは頷いた。

「当たり前だろ!」


ミナは首を傾げた。

「……迅さんは?」


迅が顔を上げた。

「……俺?」

「はい」


迅は少し考えた。


そして。


「……俺は、神様には祈らねぇな」

エリオットは静かに聞いていた。

ミナも頷いた。

迅は続けた。


「……でも」

少しだけ笑う。

「神様信じてる奴が嫌いってわけじゃねぇよ」


エリオットは顔を上げた。

「……そうなんですか?」


迅は頷いた。

「おう」


そして。

「……面白ぇ奴なら、誰でもいい」


ラフバが笑った。

「ははっ! それ、俺のことだろ!」


迅は即答した。

「お前はうるせぇ」

「何だと!?」


アギは小さく笑った。

「……本当に、変わりませんね」


ミナも笑った。

「……ふふ」


エリオットは静かに頷いた。

「……なるほど」


そして。


「……素敵な考え方ですね」

迅は首を傾げた。

「……そうか?」


エリオットは頷いた。

「はい」


迅は笑った。

「……まあ、俺は」


少しだけ空を見上げた。


巨大な月が、夕空に浮かんでいる。

「……一番大事なのは、笑えるかどうかだと思ってるからな」


エリオットは、その言葉を静かに聞いていた。

ミナも微笑んだ。

アギは、少しだけ目を細めた。

ラフバは笑った。


「……ははっ!」


そして。


「……じゃあ、もっと笑えるくらい強くなろうぜ!」

迅は笑った。

「……おう!」


五人の笑い声が、夕暮れの広場に響いた。

異なる信仰。

異なる故郷。

異なる考え方。


それでも。


同じ空の下で、笑い合うことができる。

そのことを、五人は少しだけ知った。



夜。

第七駐屯基地、宿舎。


「……なあ、迅」

ラフバが口を開いた。

迅はベッドに寝転がっていた。


「……ん?」

ラフバは笑った。

「……明日も、面白ぇ奴に会えるかな」


迅は少し考えた。


そして。


「……会えるだろ」

ラフバは頷いた。

「……だよな」


迅は天井を見上げた。


今日、出会った人々。

エリオット。

ミナ。

グラン。


天城市の少年。

そして、見たことのない街。

知らない文化。

知らない考え方。


迅は小さく笑った。

「……世界って、面白ぇな」


ラフバも笑った。

「……ああ」


そのとき。

隣室から、アギの声が響いた。

「……二人とも!」


迅とラフバが顔を見合わせる。

「……ん?」

「……何だ?」


アギは叫んだ。

「明日も早いんですから、早く寝てください!」


迅は笑った。

「へーい!」


ラフバも笑った。

「分かってるって!」


そして。


数秒の沈黙。

迅が小声で呟いた。

「……なあ、ラフ」

「ラフバだ」

「……明日、どっちが先に起きるか勝負しようぜ」


ラフバは笑った。

「……上等!」


隣室から、再び声が響いた。

「……聞こえてますよ!!」


迅とラフバは、声を殺して笑った。

「……ははっ!」

「……はははっ!」


世界は広い。

まだ知らない人々がいる。

まだ見ぬ強敵がいる。


そして。


その全てが、三人を待っている。

三軍合同演習。

その開催まで、あと十三日。


次回予告


合同演習を前に、各軍の兵士たちによる公開訓練が始まる。


キリスト教軍の重装甲アンドロイド《ガーディアン》。


仏教軍の精鋭兵士たち。


そして、無宗教軍の第十三混成班。


迅とラフバは新たな強敵に挑み、アギはミナとの再会を通じて自分の成長を確かめる。


だが、三軍の実力差は、想像以上に大きかった。

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