1話 役立たずの男、辺境へ
ーー ディオル王国、アズール領にて
「すまんなメイナードよ、お前を追放する事にしたよ」
朝、アズール家の三男メイナードは、父の書斎に呼ばれ開口一番に追放が決まった事を告げられてしまう。
「つ、追放って……嘘でしょ父さん」
「いいやメイナードよ、私は本気だよ」
「で、でもいきなりどうして?」
突然の事でショックを隠せないメイナードは、狼狽した様子でそう訊ねる。
「……それはなメイナード、お前が17歳になっても”スキル”が開花しないからだ」
「くっ、“スキル”か……」
“スキル”、それはこの世界にいる誰しもが普通は持つものであり、大体齢15歳までに1つないし2つ以上開花する。
特に貴族家の者は開花する”スキル”の特異性が高く、通常の”炎使い”や”水使い”などのありふれた”スキル”ではなく”剣聖”や”大戦士”など、一つのスキルに複数の効果を併せて持っている複合型スキルが開花する事が多い。
そのため貴族家において、通常スキルに生まれるだけでも大変な不名誉になりかねないのだが、メイナードに至ってはまさかのスキルなし。
さすがのメイナード父、レウス・アズールにもそこまでは庇いきれず、この度追放となったのだ。
「しかしなメイナードよ、俺はお前の事を大事に思っている」
「と、父さん!」
「うむ、それでなメイナードよお前にはスキルが無くてもなれる、辺境での騎士団に推薦しておいた」
「え、辺境?」
「ああそうだ、本当は王都の騎士団に入れたかったのだが、王にあんな役立たずの三男を騎士団に入れるなどふざけるなと言われてしまい、仕方なく辺境となってしまったのだ」
「そ、そんなぁ」
そう言ってメイナードはショックのあまり、その場にへたり込んでしまう。
「しかしなメイナードよ、お前を丸腰で辺境に送るつもりはない、これをやろう」
『スチャ』
レウスは壁にかけてあった聖剣を外し、机の上に置いた。
「それって確か”抜けない聖剣”だよね」
「愚か者よこれは”抜けない聖剣”ではない、正しい使い手にのみ抜ける聖剣なのだ」
「でも父さんだってそれ抜けないじゃないか」
「まぁそうだな、父さんもお前のお祖父さんも抜けなかったが確かにこの剣は我がアズール家の家宝、それをお前に渡すのだしっかりするのだぞ」
へたり込むメイナードに、レウスは熱い視線を向けてそう話す。
「わかったよ父さん、それで出発はいつなの?」
「今日だが?」
「え、今日なの?」
ーー30分後、アズール家の屋敷前にて
「おいメイナード達者でな!」
「スコット兄さん」
「メイナード、辺境に行っても上手くやれよ」
「スティーブ兄さん」
メイナードの見送りには、2人の兄も訪れており、2人とも溺愛していた弟に激励の言葉をかけていた。
「それじゃあ皆んな、俺行くよ!」
『スッ』
メイナードはそう言うと馬に跨った。
「メイナード!辺境地アズルに着いたら、ステイガードという人物の元にいけ、彼がお前の師匠となる予定だ」
「わかったよ父さん」
こうしてメイナードは元気に辺境追放されるのだった。
ーー辺境地アズルにて
「ここから先がアズルか……」
馬で北へ進む事3日あまり、メイナードはついに辺境地アズルへと辿り着いた。
「アズルについたら俺はもう、性はアズールではあるけどアズール家の人間ではなくなる、寂しいけどここからが俺の新たな始まりか」
そう言ってメイナードはアズルの地へ足を踏み入れる。
『キュオオオオン』
その時だった、背負っているアズール家の家宝”抜けない聖剣”が突如として強い光を放ち出す。
「な、何だこの光」
『ほう、次なる使い手はお前か青年よ』
「せ、聖剣が喋ってる?」
『フハハハ、なんと良い反応だろうか新たなる使い手よ、まずは餞別代わりにこれを受け取るが良い』
『ギュイン』
その時、メイナードの中に何かが入ってくる感触があった。
“ピコン!おめでとうございます、最上位スキル【辺境聖騎士】が解放されました”
頭の中で女の人の声がしてメイナードにそう語りかける。
「え、なんか俺最上位スキル貰っちゃったんだけど、しかも辺境で」




