情報運用部 2012年9月~2013年3月 ②
情報運用部に異動してから半年が経とうとしていた。
2回目の災害対策訓練が実施されることになった。
今回も私は主要メンバーに選ばれた。そして業務部門の1人の担当者として同期の1人も参加することになった。
私は災害対策訓練の当日のスケジュールを作成することになり夜遅くまで残業していた。
そんな時に参加メンバーの彼女からメールが届いた。
「私のほうでスケジュールを作成しました。すでに上長にも承認を取っています。」
メールにはそう書かれていた。全体スケジュールを作成するのは主要メンバーの役割なので一業務部門の参加メンバーである彼女にそれを作成する役割はないはず。
念のため添付されていたエクセル資料を開けると確かにスケジュールが作成されていたが全体スケジュールというにはあまりにも特定の部門に偏った内容で作成されていて使用できるものではなかった。
私は役割が違うことやまだスケジュール作成期限ではないことを伝えて正式なスケジュールが出てくるまで待つように返信した。
私が作成するのは全体スケジュールなので個々の部門の災害発生時の業務内容の確認は書かない。
なので彼女のスケジュールは部門単位のスケジュール作成の際に役立ててほしいとも書いておいた。
彼女からは
「私に恥をかかせるのですか?すでにこのスケジュールは上長の承認も取っています。すなわち上長に楯突くということです。」
メールを読んで、同期はこういう仕事の仕方を覚えたのかと落胆した。
自分の意を沿わない対応をされると敵認定する人たちがいる。
しかし社内的にはそのような味方か敵かという白黒に分けて判断する思想が当たり前にあった。
おそらくOJTで指導した先輩社員がそのような人だったのではないかと思う。
上長としては主要メンバーに同期がいるのに一部門の担当者でしかない本人に発破をかけるつもりでスケジュール作成を指示したのかもしれない。
同期同士が一つのプロジェクトにいると部門の代理戦争のようにけしかける先輩社員たちというのも多かった。
私は拗れるとプロジェクト全体にも影響を与えかねないと判断して彼女の作成途中の全体スケジュールに彼女のスケジュールを一部取り入れてこれで良しとしてくれないかと打診して事なきをえた。
ある時後輩社員3名が数ヶ月の間に退職するということが起きた。
その際に噂として聞いたのが私の同期数名がその後輩社員をいじめていたという話だった。
2名は同じ部門、1名は違う部門なので関連性はないと信じたくなかったが聞こえてくる噂があまりにも具体的だったため確かめずにはいられなかった。
廊下を歩いているときに当事者の1名とすれ違った、私は彼を呼び止めた。
そして後輩の件が事実なのかを確認し、彼から事実であること言われた。
私はどうしてそのようなことをするのか、そもそも自分と同じ部門に配属された後輩をいじめるのは間違った行為だと責めたてた。
彼は次のことを言った。
「いつまでいい子ちゃんぶっているんだ。俺たちだって先輩からひどい扱いを受けてきたじゃないか。新入社員研修の時だって、配属されてからも。
あなただけじゃないほかの同期も先輩社員から多少のいじめを受けながら業務に励んでいたんだ。
あなたは休職して異動して逃げたからその辛さがわからないのだろう。
耐えていた私にやっとサンドバックの後輩があてがわれた。
なぜいじめたらいけないんだ?俺は自分がされたことを後輩にしているだけだ。
後輩だって次の後輩が配属されたら同じようにしたらいい。
それまで順番を待っていればいい。
この会社はそうやって回っているんだ。
あなたのようないい子ぶって逃げている卑怯者とは違う。
あなただって後輩がいたらきっと同じことをしている。
自分に後輩ができないからやっていないだけだ。」
私は悲しくて何も言えなかった。
彼は何事もなかったかのように廊下を歩いて行った。
仕事のほうは順調であったが残業時間は月80時間を超えるのが当たり前になっていた。
システム障害対応という突発業務について
社内には数百ものシステムがありそれを稼動するために機器の総数として500台以上のサーバーやストレージと言った業務IT機器が稼動している。
1台の機器は複数の部品で構成されておりそれが故障するとアラートと呼ばれる通報を機器を監視している監視端末に連絡するのである。
週に1回か2回ほどこのアラートが飛んできて部品の交換を手配することになる。
中には重要な部品が壊れてしまい機器そのものが停止、停止したことで業務システムそのものも停止して業務影響が発生することも月に1度くらい発生する。
軽微な部品交換から業務影響が発生しすぐに交換しないといけない部品交換まで様々な対応がある。
私は部門に配属されてからその担当者として腕を奮っていた。
元の担当者は先輩であったが私が実務担当となると引継ぎは特にせず、障害対応が発生すると「腹が痛い」と言って姿をくらませることが多かった。
先輩に一言言おうとしたが派遣社員から止められてしまった。
「先輩はこの業務をやりたくないとよく言っていた。あなたが正論を言ってしまったら先輩は逆上すると思うので言わないでほしい。」
私は大人しくシステム障害対応を1人で対応することにした。
3月下旬
業績評価の時期がやってきた。
業績評価シートというものがあり、4月の上期と10月の下期で自己目標と部内目標をそれぞれ記載する。
自己目標は主に資格取得を書く。
部内目標は1~5個で自分が担当するプロジェクトを書く。
そして上期なら9月下旬、下期なら3月下旬にそれぞれの実績がどうであったか記載する。
この結果でボーナスの額が数万円変動するということで皆一様に真剣に取り組んでいた。
そちらに取り組むのに注力するあまり日常業務に支障をきたすほどだった。
私は10月に配属されたばかりだったが必死に業務に取り組んでいたおかげでどの業務も想定通りの結果を出すことができていた。
課長1名でその部下が私と先輩社員1名という正社員の構成だった。
評価の結果私の評定が先輩を上回ってしまうという結果になった。
年齢によっても給料も違うので私が先輩のボーナスを超えるということはないのだが先輩は別のところで激怒していた。
「どういうことですか!なぜ私が年下で半年前に来た彼よりも評価が低いのですか!」
ぎりぎり丁寧に質問していたが怒っているのは傍から見ていてもよく伝わってきた。
「だって。。。君はこの下期そんなに成果でてないよね。職位のランクが違うから気にしなくてもいいと思うのだけど」
「そういうことを言っているんじゃない!私の年齢を考えてください。年下よりも評価を下げられてしまったら私の立場がないではないですが、これは問題ですよ。人事部に訴えます。私は出るとこ出ても構いません。」
当時の課長は気があまり強くない人で強く言われると一歩引いてしまう人だった。
その後課長と先輩とで会議室に籠って話し合いが行われた。
話し合いの結果、私の評価は先輩の一つしたのランクとなりそれに合わせるように業績評価シートを書き換えることになった。
課長からは
「これも組織というものだから納得してほしい。ボーナスには影響しないように最大限頑張るから。」
と言われた。
初めてまともに会話できる課長であったので私は評価を下げることを了承した。
先輩からは
「次から気をつけろ。先輩の顔を立てるという基本的なこともできんのか。」
と言われた。
再発防止策として私のすべての業務は監督者として先輩の名前が載るようになった。
実務は私、書類上の担当者は先輩という図式である。
そうすることで業務の一番の評価は先輩が受け取ることで私がどれだけ頑張っても先輩の評価を絶対に超えないようにしたのである。




