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私は入る会社を間違えたかもしれない。  作者: 大津太郎


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情報基盤部編 2012年2月~2012年6月 ③

診断結果は適応障害だった。

仕事をしている人には良くある病名なので気にしなくてよいと言われた。

医師からは静養するようにと言われ診断書を書いてもらった。


チームの課長に伝えると診断書は認めない。休職は認めないと言われた。

休職するくらいなら退職するようにこれ以上会社に迷惑をかけることがないようにとのことだった。


その結果を医師に伝えたところ人事部と労働基準局にありのまま伝えるようにと言われた。

最初に労働基準局に行って話をしてからその内容を人事部に伝えるようにと言われた。

私は言われた通り労働基準局に訪れ、人事部に労働基準局から言われたことを伝えた。

人事部で最初に取り次いだ人は現場のことを人事部に相談しないでください。あなたが退職したら済む話です。迷惑をかけて楽しんでいるのですかと言ったが基準局の話をすると声が詰まりだし、別の人に代わった。

その人にも同様の話をするとチームの課長と話し合いの場を設けると言ってくれた。

その日までは出社はしなくてよいと言われ家で待機していた。このころになると幻覚のようなものが見えたり希死念慮というか包丁を持つと自分を刺すイメージが視界を覆うようになっていた。家から出るのも一苦労な状態であった。

 太陽光を浴びるのがしんどくカーテンをずっとして、照明もつけないで暮らしていた。


人事部が設定してくれた日に会議室に行くと人事部の男性とチームの課長とが座っていた。

医者からの診断書を人事部の人に渡し、人事部より課長に休職することを言ってくれた。課長は私とは目を合わせてくれなかった。


休職期間は3月の途中までだったので1か月ほどしか休職しなかった。

医者に言われた通り太陽光に浴びるように努めて、散歩を毎日するという生活を送っていた。

夜は寝れなくても朝起きる時間を固定にして1日の睡眠時間が2時間もなくても夜の就寝時間までは頑張って起きるように努めた。


3月中旬

人事部に出社することになった。

出社する時間は自由で人事部の席についても就業規則を読むだけといった日々が続いた。

私が新入社員研修や職場でのハラスメントで困っていた時に相談した人事部の人は私とは一切目を合わせず私を避けるように仕事をしていた。

私のほうもその人には近づかないようにしていた。それがお互いのためなのだと思った。


人事部の雰囲気は情報基盤部と同じ会社と思えなくらい空気が澄んでいて落ち着いている空間だった。

誰も怒鳴ったりせず隣同士で会話をしながら仕事を進めている。仕事の話をしつつ雑談も時折織り交ぜながら明るい顔で業務に取り組んでいた。

部署が違うとここまで違うものなのか、そういえば私は情報基盤部以外の部署に用事で行ってもすぐに帰ってしまっていたので他の部署というものを知らなかったことに気が付いた。


4月

人事部で私の味方になってくれた人から新入社員研修をお願いしたいと言われた。

私ともう1人の人事部出社のリハビリをしている2名で行ったほしいとのことだった。

私の2年下の社員に研修を行うということになる。

私は研修の問題点を上げるとその人から予想外の提案をされた。

「今度の研修は9月末までにしようと思う。私も少し前にこの会社に入ったばかりでまだ全体像がつかめていないがこの会社の新入社員研修はとてもひどい状態であることが分かった。

そもそも1年の研修をしているのは配属先部署が受け入れを拒否しているからなんだ。拒否している理由を聞いたが4月のほうがきりがよいという意見ばかりだった。

それならば下期が始まる10月からにしましょう。月一で人事部と新入社員は面談を行いますと言ったら何も反論はなかったよ。

昔から1年間研修をすると決まっていたからなんとなく1年間研修をしていた。しかし人事部にはIT分野の知識がないので2年目の社員にプログラミング研修を丸投げしていた。

ある時代の2年目社員が研修内容を大幅に変えて本屋に売っているようなプログラミングの演習本にある問題に改変した。その結果研修を成績優秀で終えた人であっても業務部門に配属されるとただの素人同然となり戦力ならなくなってしまった。そのため入社してもすぐに辞めてしまう人が少なくなかった。」


私は早速新入社員研修の演習問題作成に取り掛かった。

基本情報処理の問題が古く、演習問題として利用できなくなっていたのでこれをすべて最新の問題に作り直した。

今まで紙ベースでしかなかった資料をすべてデータで作成してフォルダに削除しないようにとメモを残した。人事部の担当者にも伝統だからと言って削除させないようにと伝えておいた。その人は眉間に皺を寄せながら無言で頷いた。


もう一人のリハビリ出社している人も途中まで手伝ってくれていたが病状が悪化し再度休職することになってしまった。リハビリ出社していると言っても全員が快方に向かうわけではないのだと現実を知った。


4月

新入社員が入社し私の下でプログラミング研修を行うことになった。

私も研修室と人事部室を行き来する毎日が続き毎日が楽しいと入社以来初めて感じた。


6月

私にボーナスが支給された。

情報基盤部での評価は最低ランクであり休職していたことも響いてほかの人よりも少ない金額であった。

ある日廊下を歩いているときに同期とすれ違った。

情報基盤部に配属されて以来数回の飲み会で顔を合わせる程度しかなく研修の参加の件で溝ができてからは顔も合わせておらず連絡もほとんどしていなかった。

私は久々に同期を見たことで思わず立ち止まってしまった。

同期のほうは私目当てに来ていたようで私の目の前で立ち止まり

「聞いたぞ。お前にボーナスが出たんだってな。休職した分際で働いていないのに金をもらう気分はさぞかし気分がいいんだろうな。こっちはお前のせいで出来損ないの世代と言われて苦労しているってのに。」

同期とは研修でこじれてからほとんど顔を合わしていなかった。久々の会話がこれなのかと残念に感じた。同期は言いたいだけ言って通り過ぎて行った。


資格の合否や給料の額、評価の値は人事部の一部のメンバーが社内に情報を流していることがわかった。

情報のあまりの正確さに噂程度では片づけることができず人事部以外考えられないことだった。

私のボーナスの額もしっかりと同期に把握されていた。


新入社員研修そのものは順調に進捗していた。

苦労した点としては先輩社員たちからの新入社員の情報を寄越せというものだった。

個人の連絡先を教えるように何人もの社員から言われた。中には部長の名前を出し業務命令だという人もいた。

私は研修中の部屋への入室は遠慮してほしいと伝えたが何人かは無視して入ってきて女子社員の連絡先を私たちもされたように聞き出そうとしていた。

そういう時は人事部の味方の人に連絡して駆けつけてもらい阻止することができた。

新入社員の情報で聞かれた内容で多かったのは”今年の新入社員の中でダメなやつは誰だ?”というものだった。

別々の人が同じ内容を聞きにくることにこの会社の人の性格の悪さが個人によるものではなく仕事によって生まれているものだと感じた。

彼らはきっとそれを酒の肴に会いもしていない彼ら彼女らを批評するのだろう。

そういう質問が来たときは”新入社員のみなさんは優秀な方で真面目な方ばかりです。”と返しておいた。

当然のように聞いた人はつまらない表情で帰っていっていた。

もっと激しく抵抗すると思っていたが、私が退職せずに休職したことと休職しても1カ月で復帰したことが社内に少なくない衝撃を与えているようだった。

情報基盤部からの直接の攻撃はなかったが社内には私のよくない噂がばらまかれているようだった。

新入社員が不安な表情でそのことを教えてくれた。


6月の終わりに私に情報基盤部に戻るように指示が下った。

新入社員研修は私の資料を元に私の同期の1人が引き継ぐことになった。

業務の引継ぎのためその同期に会うと土気色の顔になっていた。

話を聞くと私と同じような状況に陥っていた。

彼から情報基盤部の先輩社員たちが同期連中に私の悪い噂を流すように圧力があったと言っていた。

乗り気の人、そうではない人もいたが逆らえば会社にいられなくするという労働組合長の発言があったので誰も逆らえなかった。

流した噂は

”仕事をまったくせずにトイレにこもりっぱなしで業務に取り組んでいなかった。”

”懇切丁寧に何度も業務内容をレクチャーしたのにも関わらずへらへらした態度でメモもとらずに同じミスを何度もした。”

”飲み会では会社の悪口ばかりを言いそれを諫めた人にも攻撃的な発言をしていた。”

などなど上げればキリがないほどの噂を流していたようだ。

中には本当に私がそういうことをしているのだと信じてしまった人も出てきている状況だった。

同期からはごめん。と謝罪の言葉があったが彼らも苦しんでいたのだと思うと責める気持ちよりも悲しい気持ちのほうが強かった。

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