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私は入る会社を間違えたかもしれない。  作者: 大津太郎


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情報基盤部編 2011年4月~2012年2月 ②

7月

私の部署内異動が決まった。理由は特に説明されず即日異動せよとのことだった。

新しいチームではミドルウェアの管理を行っているチームだった。ミドルウェアとはOS(Windowsやmacなど)と呼ばれるオペレーティングソフトと業務システムが動いているソフトウェアの中間で動作しているソフトウェア群のことである。

ということも先輩に説明されないまま帰宅後自分で調べて学んでいった。

この時点で部署内でも腫物扱いで部署で一番年齢が近い先輩社員からも無視されている状態だった。

新しいチームでのOJTは一番の出世頭と呼ばれている人で”失敗したことがない人”と呼ばれておりいくつものプロジェクトを並行して回しながらどれも完璧な状態で完了しており社内の出世街道を一番に走っているという。労働組合のトップの座にもいて私も去年の入社時に挨拶に来ていたのを覚えていた。

同期たちは私がその人の部下になったことを知ると羨ましがっていた。

 新しいOJTにも新入社員研修のことを説明したが理解してもらえなかった。ここでも研修への参加は禁止と言われた。

 私は意を決して人事部に対して現状を訴えたが人事部からは現場も問題は現場で解決するように。こういう問題を解決してこそ一人前の社員です。成長を祈っていますと返答があった。


私もとうとう新入社員研修に参加できないようになり新入社員に申し訳ないと感じつつ配属部門での仕事に取り組むようにした。新入社員からの質問はメールと電話で受けて回答するという形にした。

この時になるとほかの同期は完全ノータッチで研修の話をしても返事すらない状態だった。


 新しいチームではチームの業務内容を紹介する資料を作成するという指示を受けた。

既にあるのだろうと思っていたがそういう資料がないらしく初めて作成するという。

私はチーム内のフォルダを探しながら説明に適した資料がないか探し、インターネットの制限を受けたパソコンで調べつつ資料を作成した。

 期限までに資料が完成し先輩に確認を依頼した。

先輩は隣の席に座っているが確認には会議室を予約しレビュー(確認依頼)会を開くように言われた。

 これがこの会社の標準的には仕事の進め方で資料ができたからと言って先輩に渡せばよいというものではなくレビュー会という打ち合わせを確認の大小に関係なく開催しなければ見てもらえないのである。文字フォントの確認一つだけでレビュー会を開くということがよくあった。

 あれから10年たち当時の仕事を思い出すが今と比較して生産量は半分か4分の1程度しか発揮できていなかったと感じる。

 レビュー会当日、OJT役の先輩に印刷した資料を見せた。5秒くらいで先輩の顔は真っ赤になりペンで大きくXマークを描くと紙を破り私に投げつけ

「こんなゴミ資料見せやがって、恥を知れ!」

と言い会議室を出て行ってしまった。

私の初のレビュー会は開始10秒も経たずに終わってしまった。

破り棄てられた紙を修復し見返したがXマーク以外の筆跡はなく、当時の先輩の視線を思い出し再現をしてみたが何がだめなのかわからなかった。

自席に戻り先輩の様子を伺ったが私を視界に入れないように画面かじりつくような感じで業務をしていた。

声をかけたが無視され、メールを送ったがその日は返事はなかった。

 翌日出社すると先輩からメールが返ってきていた。

 ”人に教えを乞うときは頭を下げて頼むべきではないでしょうか。人として常識です。そんなこともわからないのですか、ゆとり君”

 内心うんざりしていたが社内でも影響力のある社員なので波風は立てないほうがよいと判断した。

 私は隣に席に座っている先輩に頭を下げて「教えてください」と言った。

 すると先輩はうすら気持ち悪い笑い声をあげ

 「本当に頭下げやがってぜこいつ。まじウケル。頭下げたくらいで教えてもらえると思っているとか頭の中ゆとりだな。」と言われた。

 この時のミスはワードファイルなのに明朝体の文字フォントを使用していないという理由だった。

 

 それからというもの私への当たり方は指導というなの罵声と怒声だけになった。

 資料を見せれば破り捨てて投げつけ、修正点は自分で探すしかないという状態だった。

 修正点として見つけたところと言えばいろんな資料からコピー&ペースト(貼り付け)していたので資料の中で文字フォントが統一されいなかった点があった、これについては全体を直したつもりでいたが数文字修正ができておらずそれを責められていた。その時の説教時間は30分だったのを覚えている。

 エクセルで資料を作成するように言われたときはエクセルの保存するときに各シートのA1セルにカーソルが当たっていないという点でレビュー中止となったこともあった。

 ワードファイルは明朝体、エクセルファイルはゴシック体。フォントサイズは11。

 全角数字、英字は禁止。コンピューターやモニターと言った語尾を伸ばす文字はコンピュータ、モニタとしなければならない。全角スペースは禁止半角スペースのみ。これは印刷したらわからないがデータで見たときに判明した時は激怒もの。文字終わりに無駄なスペース文字(空欄)が入っていたら説教。

漢字ルールだと”稼働”は”稼動”と書かないといけない。というものがあった。


業務で使用するソフトを自分のPCにインストールをすることになった。

インストール用の手順書が紙で渡された。

それに従って作業を進めたがすぐに手が止まってしまった。

手順書に書かれている項目名と画面の絵が実際のソフトのそれと違っていたのだ。似たような項目名も特になくソフトのバージョンが更新されたことで手順書を作成した時と違ってしまっていたのだ。

私は指導役に相談したが指導役からは「アポを取れ」と言われた。

要は会議室(会議室がない場合は事務所内にある会議卓)を予約し日程を調整した上の打ち合わせでないと話は聞かないということだった。

私は言われた通り打ち合わせ日を翌日の朝一で設定した。

 翌朝一、私は先輩と対面で打ち合わせ卓に座った。インストールの手順書の件を伝えると先輩の顔は見る見るうちに赤くなって

「俺らが作った手順書だと仕事ができないと言うんか?」

「いえ、そうではなく手順書の内容と現在のソフトウェアのバージョンに乖離があったので先輩方はどういった手順でインストールをしたのかと思い、その方法を教えていただきたく」

私が遠慮がちに発言すると

「先輩の顔に泥を塗るということか?」

「え?そういう話ではないかとソフトのインストールの話です。」

「だ・か・ら!手順書を作った俺らに不備があってインストールができないということは手順書を作った俺らの顔に泥を塗るということだろうが!」

先輩は大声で怒鳴ると席を立って自席に戻ってしまった。

先輩からの助言が得られずほかの人に聞いても誰も相談に乗ってくれる人はいなかった。

2週間ほどインストール方法を自力で試したがインストールはできなかった。

 しばらく経ってからこの件について派遣社員から聞いたが、正社員の人たちはソフトのインストールをしたことがなくインストール作業はすべて派遣社員がやっているとのことだった。

今回の私の件も派遣社員の人たちの中でもサポートしたほうがいいと指導役に提案したが却下されてしまい助けることができなかったと言われた。

 資料が古いままなのは資料を修正しても評価にならないという会社の評価方法の問題と修正した人が責任者となるという暗黙のルールのため誰も修正や更新をしないという事情だった。


 当時の私の仕事の進め方はチーム外の人には相談しても何も答えてくれなかったので他のチームの人に聞いたりして資料を作成するように努力していた。

 ほとんどの人は無視していたが何人かは親切に答えてくれる人もいた。

 そういう人もあるときは答えてくれるがしばらくすると答えてくれなくなったり。前は答えてくれなかったのが急に答えてくれるようになったりと同じ人でも対応が180度変わってしまうという状態があった。

 あとで判明した話だがこの部署では新しく配属された人が何月に退職するかを”賭け”ていたのである。

 その胴元が私のOJT担当であった”失敗したことがない人”本人であった。

 賭けに参加していた人は自分が賭けていた(私が退職する月)が近づいたりすると態度を急変させ、質問に無視する、私の私物を捨てる。椅子を蹴るなどを行ってきた。


 飲み会では私はお酒や料理を食べることを基本的に許されず、部屋の隅に正座をさせられ酔っ払った先輩社員たちから罵声を浴びせられる係になっていた。

 罵声というなの説教なのだが内容としては私の電話対応についてで、何人かは手帳で私が電話対応した日時や経過時間、内容を記録していた。そのことについて1件ずつ改善という名の説教を受けるというものだった。

 一人から説教を受けても次の人から同じ内容で説教を受ける。それが飲み会での過ごし方だった。


 部内やチーム内の飲み会では私が全員分の支払いをして後日参加者から費用を徴収するという流れだった。

ほとんどの人は問題なく払ってくれるが何人かは飯がまずかった、店員の態度が気に入らなかった、本当は参加したくなかったと言って参加費用を払ってくれず踏み倒す人がいた。

そういう人は口癖のように「先輩を奢るなんてとても光栄なことだ。」と言っていた。

金額は数えていないが合計5万円ほどは自腹を切った気がする。


 私以外の人は無事だったのかというとそうでもなく、新入社員で配属されたのは私一人だけだが、中途採用枠で数ヶ月おきに1人ずつ入社していた。

 基本的にそういう人もいじめの対象であり罵声を浴びさせられたりしていった。中途採用の人は見切りが早く2か月ほどで退職する人も珍しくなかった。残っている人たちは退職していった人の悪口を四六時中話していた。私が仕事の話だと思っていた内容の多くはそういう他人の誹謗中傷が多かった。

 それでもまだ同じ会社で働いている正社員はマシというのが現実だった。

 4分の3を占める派遣社員の扱いはまさに地獄と言ってよかった。

 基本的に名前を呼ばれることはなく、あいつ、こいつ、おまえを呼称される。質問がある場合は派遣社員を正社員の席まで呼び出すが遅かったりすると罵声を浴びせる。資料作りなどの実際の作業は派遣社員に行わせる。

 といった状態だった。

 あるとき打ち合わせが終わり派遣社員の一人が部室に戻ってきた。その人は40歳くらいの男性で目を抑えながら泣いていた。中年の男性が泣くほどのこととはなんだろうかと思い見ていたら、遅れて入ってきた正社員の一人が「こいつ口答えしやがったら殴って教育してやったわ。そしたら泣いてやんの。こんなやつでも子供がいるんだってよ、その姿子供に見せてやれよ。」

 こういう暴力沙汰が何件もあった。そういう被害者は数日後には出社しなくなるので派遣社員の入れ替わるスピードは速く、半年在籍できたらベテラン。1年在籍したら古株と言われていた。

 このようなことがありなぜ問題にならないのかと言われると私が聞いた範囲では派遣会社に億単位の支払いをしているからということだった。それだけでここまで横暴が許されているのかと今でも疑問に思う。事実として暴力行為やハラスメント行為を行った正社員は誰一人訓戒などの軽いを一つも受けていない。


 私とは違い仕事がよくできる人が会社を辞めることになった。それまでその人は人望厚く多くの人がその人を中心に仕事をしている様子だった。するとその人と一緒に仕事をしている人が退職する人に聞こえる声で話し始めた。

 「今度俺たちを裏切るやつがいるんだってさ。いい人面して仲間アピールみたいにしていたのに裏切るなんてひどいよね。俺前から思ってたんだけどあの人って仕事ができる風を装っているだけで実は全然仕事ができないんだよね。むしろ周りがフォローしてやっと一人前って感じ。むしろ辞めてくれてよかったなって思うね。まだ引継ぎとかで会社に居座るみたいだけど一緒の空気吸うのも嫌だわ。さっさと消えてほしい。」

 一緒に仕事をしている人に対してこの発言である。それからその人が退職するまで毎日聞こえるように悪口を浴びせていた。

 この会社では退職することを”外の世界に行く”と言う。


 職場の雰囲気が悪いせいか、はたまた私では感知できないのか突然発狂して姿をくらませる人が1人いた。その人は派遣社員の人で突然立ち上がり大声で奇声を上げた。動物の鳴き声のような叫び声だった。そのまま部屋の扉に向かって走り出し戻ってこなかった。彼がどうなったかは不明である。

 このケースは1人だけだがある日を境に出社しなくなる派遣社員はある程度いたので名前を覚える前にいなくなるのが常態化していた。

 

 私も毎日メンタルを削られる日々を過ごしていたため2月の途中で自宅から出ることができなくなり心療内科に通うことなった。

 通った当日に医師から「またこの会社か、この会社の人に勤めている人がものすごく多く診察にくるんだよね。私の仕事としては患者が増えれば儲かるがさすがに数が多すぎる。」と言っていた。

 私は2回目の診察で休職の決定がされた。



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