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私は入る会社を間違えたかもしれない。  作者: オツタロ


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23/26

退職後~半年間

退職するとハローワークで手続きをしたり社会保険の切り替えやら住民税の支払いやらで毎日どこかに出かけていた。

思っていたよりもやるべきことが多く、お金も一気に50万くらい出て行った。

1週間も経たないうちに辞めた会社の派遣社員からメールが届いた。

内容は業務で使用する資料はどこに保存されていますかというものだった。

質問された内容はすべて業務引き継ぎ書に書かれているのだが見るのがめんどいのだろう。

私は逐一メールの返信をしていた。


1カ月が過ぎるころになるとそのメールに会社に戻ってこないかと言う話が増えてくる。

私は無職であるが戻るつもりはないと返信していった。

あまりにも頻繁に戻って来いと言うメールが来るので理由を聞いてみたところ

私の業務を引き継いだ正社員2名は全く引き継いだ業務をせずにトラブルになっているようだった。

派遣社員が4名来る予定だったが最終承認者である部長のところで却下されたのだ。

「1名がやっていた作業を4名で行うのはおかしい」

結局部内で分担してやろうという話になったが慣れない作業の為他部署からクレームが来ている。

部内では私に復職してもらうための検討会が開かれているという。

しかし課長が断固反対しており今は課長派閥VS反課長連合みたいな状態になってきているという。

今まで波風を立たせないように穏便にしていた人たちが声を上げ始めていると言う。


私からすると知ったことではないので再就職先の探しと旅行を楽しむことにした。


3ヶ月くらいが経ったころ、奇妙な出来事に遭遇した。

私は退職してからも引っ越しなどせずそのままの住居に住んでいた。

なので電車や道端で元同僚たちと会うことが度々あった。

最初のころは私と気が付くと嫌な顔をしたり、睨みつけてくる人も珍しくなかった。

フレンドリーの話しかけてくる人は誰もいなかった。

退職者には厳しい会社だったので想定の範囲内と思い気にしていなかった。

 それがしばらくすると状況が変わった。

ある時駅で元同僚とすれ違った。

彼は私を見るやいなや口を大きく上げてとても驚いていた。

驚きを通り越して恐怖すら感じているようだった。

別の人は10mくらい手前で私に気が付くと踵を返して小走りで逃げて行った。

そこまでしなくてもいいだろうと思っていたら同期から1通のメールが届いた。

”会社の近くの駅や道端でお前の幽霊を見たと社内でパニックを起こしている人がいる。

お前は退職後旅行に出かけて退職したことを後悔して飛び降り自殺をしたことになっている。

さっさと田舎に帰れ。

辞めてからも私たちに迷惑をかけるな。”

と書かれていた。

確かに退職すると地元に帰ったのだの自殺したのだの噂が流される会社ではあったが私の場合は自殺したということになっていたのか。

それで幽霊になって街をさまよっているということなのか。

思わず笑ってしまった。

その後3年間私はその街に住み続けた。


半年が経ったとき久しぶりに派遣社員の人からメールが届いた。

やっと私を復職させるルールがまとまったと書かれていた。

”自分がしたことを反省し部内のみんなの前で心を込めて謝罪したのならば以前と同様の待遇で面接なしで採用する。”

私は寝言は寝て言えと返した。

文面の最後に派遣社員が4名増えましたと書かれていた。


それから数週間後派遣社員からメールが届いた。

”今日いいニュースがあったのでお知らせしとこうと思いまして。”

そう書かれて文面は始まっていた。

課長が既存メンバーだけでは私の穴を埋めることができずやはり4名の増員が必要と要望を出した。

部長から嫌味を言われながらも以下の条件で承認を取り付けた。

2名増員して様子を見て追加で最大2名増員

結局増員された2名では対応できず当初の予定通り4名で私の穴を埋めることになった。

4名が互いに連携を取りながら作業を行っていたが1人でやっていた時と比べると品質、スピードともに落ちてしまっていた。

毎日どこかしらからクレームが来ると言う状態になり、そうとう部長会議で議題にまでなってしまった。

会議が終わり部長席に座る部長が課長を呼び出した。

みんな作業の手を止めて誰もが口を噤んだ。

「君がどうしてもというから4名もの派遣社員を増員した。

この意味がわかるか。

4名分の費用が増えたのだ。これはただ事ではない。仕事が増えたならまだしも1人の仕事をカバーするために4名増えたんだ。

こんな説明をして誰が納得できると思う。

それだけならまだしも、スピードは落ち、処理もミスが目立って毎日クレームを入れられていると聞いた。

今日の部長会議でそのことを言われたよ。」

部長は今までにないくらい怒っていた。

課長は顔を上げず足元を見ていた。

「君と退職した彼が仲が良くなかったのは誰もが知っていた。

私も努力したがどうにもならなかった。

結局彼が退職してしまった。

私も非常に残念に感じたがそれで部内が一まとまりになって以前同様に仕事にまい進するのであれば仕方がないことだと思っていた。

その判断が誤りだったとはっきりとわかった。

あの時会社を辞めるべきだったのは君のほうだ。

彼が会社に残るべきだった。」

部長は一呼吸おくと

「君は周囲のやつらに次期部長と呼ばせているそうだね。

隠さなくていい。誰もが知っていることだ。

だからこそはっきりと言っておく、私の目が黒いうちは君の出世はないと!」

部長は手を払い、課長に席に戻るように指示した。


課長が席に戻るまで誰も一言も話すことができなかった。

席に戻った課長はキーボードを乱暴にたたくと会議通知を出した。

”派遣社員のみ緊急会議を行う”

そうとだけ書かれている会議通知だった。

部屋は会議フロアにある大きな会議室だった。

課長はすぐに席を立ち事務所を出て行った。

それに続くように派遣社員たちもぞろぞろと部屋を後にした。


部屋に派遣社員が到着するやいなや課長は叫ぶような怒声を響かせた。

「全部お前らのせいだ。

お前らがトラブルばかり増やしがるから俺の評価が下がるんだ。

俺が部長になれなかったらお前とあいつ(私のこと)のせいだ。

なんで黙って俺の言うとおりに成果だけを持ってこれない。

出来損ないどもめ!」

その声は部屋中に響き耳を塞ぎたいほどだった。

いいニュースを聞いて嬉しいですと私は返信した。


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