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墓場ぐらしのサダコさん  作者: 則本潮


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33/114

「〇〇家之墓、これからも賑やかです。」(中盤①)

⭐︎権藤さん、駆け込む


そして、その日の夕方。


「――決まったぞぉぉぉぉ!!」


山門の方から、権藤さんの、想像もしていなかったくらい大きな声が響いてきた。

杖をついているはずなのに、その足取りは、驚くほど速かった。


「円海さん! 慈念さん! みんな、聞いてくれ!」


墓地中の霊が、いっせいに、その声の方を振り向いた。

源蔵じいちゃんも、鬼塚さんも、麗華も、雷太さんも、清一さんも。

あたしも。


慈念さんが、本堂から飛び出してきた。


「――権藤さん、どうしたんですか、そんなに慌てて」


「市議会の結果じゃ! さっき、市役所から連絡があってな!」


権藤さんは、息を切らしながら、言った。


「――道路の拡張ルート、一部変更になった! 無縁仏の区画と、山門前の空き地は……そのまま、残ることになった!」


――一瞬、静寂が、墓地を包んだ。


「……ほ、本当に……?」


慈念さんの声が、震えていた。


「本当じゃ! ……ただし、条件がある。西側の資材置き場になっとった区画、あそこは、道路用地として、市に譲渡することになった」


権藤さんは、そこで、一度、深く息をついた。


「……全部が全部、残せたわけじゃない。……じゃが、無縁仏も、あの空き地も、無事じゃ」


――守られた。


あたしは、その言葉を、頭の中で、何度も繰り返した。


⭐︎翻訳される、喜び


円海さんと慈念さんが、墓地を回りながら、一基一基の墓前で手を合わせ、この結果を、丁寧に報告していった。

あたしたちの姿は、二人には見えていない。

それでも、お坊さんというのは、そういうことをする人たちなのだ。


いつもは、生きている人の言葉の奥にある本当の気持ちを、あたしたちが感じ取る。

でも、今日は、その逆だった。慈念さんの声を通して、市の決定という、生きている人の言葉が、あたしたちに、届けられていく。


「――無縁仏の区画は、そのまま、残るとのことです」


慈念さんが、西の端の、無縁仏の合祀墓の前で、手を合わせたまま、声を張り上げた。


「……清一さん。……あなたが待ち続けてきた、あの場所も、そのままです」


――西の端で、清一さんが、ゆっくりと、顔を上げた。


その表情は、まだ、信じられない、というような、ぽかんとしたものだった。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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