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外へ行こう・その2

 目があった。

 少年もこの場所に誰かがいるとは思わなかったようでしばらく固まっていた。


 勇気を出して声をかけてみる。


「こ、こんにちはー……」

「…………」


 少年はポカンとして無言である。もしかして変質者だと思われてる?よく見ると少年は革で出来ているであろう鎧のようなものを身に着けて腰に短剣が差してある。大きいリュックみたいのも背負ってる。

 それに比べてわたしは民族衣装っぽい服と少し大きい本を持っている。軽装過ぎて不審者である。本を胸に抱きかかえてとりあえず微笑んでおいた。





 俺はダグー。今日も遺跡の見回りをしている。最近別の地方で遺跡荒らしが頻発しているらしく、ここの遺跡も危ないかもしれないと町の人達が話し合って何でも屋……所謂ギルドに所属している地元の人達で薬草や山菜の採取がてら1日2回巡回している。

 普段は儀式の間まで入らないが、水筒の中身が切れてしまったので儀式の間の手前にある湧水を汲もうと仲間達と少し離れた。


 入り口は一つだけしかない。それも何時間も周りで俺達が散々見回った後だ。誰も入れるはずが無い。

 遺跡の中には人は居ないはずなのに目の前には澄んだ水を覗き込んでいる不思議な雰囲気を纏っている女性がいる。

 壁画に描かれている人物にそっくりな人がそこに居た。


 彼女の周りだけぼんやり発光しているように見えた。まるで壁画の世界を切り取ったような、美しい光景を呆けて見ていたら彼女が顔を上げた。

「……こ、こんにちはー……」


 柔らかい声が聞こえた。俺は声が出なかった。

 彼女は大きな本を抱き抱えて微笑んだ。


 よく見ると彼女は大きな本以外何も持っていなかった。見慣れない衣装に身を包んでいるが、何かが収納できるような服ではない。明らかに不自然なのだ。

 そのことに気がついた途端、俺は我にかえり来た道を全力で走った。なぜ走ったか自分でもわからなかったがとにかく仲間と合流しないと行けないと思った。喉の渇きを感じながらも俺は全力で走った。


・♢・♢・♢・♢・♢・♢・♢・♢・♢・


 少年は走り去っていってしまった。解せぬ。おそらく少年が向かった方に出口があるのだろう。後でついていこう。

 とりあえず本を開く。本には彼の種族が人間であり、この世界の主要な種族だと書かれていた。

 わたしたちと似ているけど厳密には違うらしい。本にはまだ白いページが多いのできっとこれから人間以外の種族にも出会うのだろう。そんな気がした。


 少年は水を汲もうとしてたのかな?

 ということはこの水は飲める水?

 手で掬って飲んでみた。冷たくておいしいただの水だった。さっき拾って本にしまっておいた壺の中にも水を入れてみた。大きめの壺に水を汲むのは大変だ。

 やっと汲み終わり本に入れてみた。


 本には[澄んだ水]と表示された。本当にただの水。水はあっても困らないのでもう少し汲もうと思ったけど、もう入れ物が無かった。地べたに座ってうんうんと考えてたらまた本が反応した。

 本を開くと『使える能力』と書かれた場所に[水魔法]と[土魔法]と言う文字が浮かび上がった。

 もしかしてわたしが考えたり欲しいと思ったものに反応してページが更新されている?

 そう思い妖精さんの事を思い浮かべて呼び出せるか試したところ本に反応は無かった。できることとできないことがあるみたい。


 せっかく使えそうな能力が追加されたんだし、水魔法と土魔法を使ってみた。

 ……うん、あれだ。魔法の発現には発想力が必要みたいだ。壺は作れたけど水の入った壺を生成したら中に水が入った蓋の開かない壺ができた。とりあえず本にしまって何度も生成を繰り返した。しばらくして周りが壺だらけになったことに気がついたので全部本にしまった。

 ある程度イメージのコツが掴めた気がする。本には『[土魔法]習熟度4』『[水魔法]習熟度3』と表示された。ちなみに[浮遊]には習熟度が無かった。ぷかぷかするだけでいいからかな?


 水魔法の練習をしていたら水たまりの中に何か模様があるのが見えた。気になって触ってみようとするとその模様がぼんやりと光って本が反応した。

 本の中に強い反応がある真っ白なページを開くとじわじわと情報が流れて『魔法陣』の文字が浮かび上がってきた。

 本から「魔法陣たくさん集めてね」という思念を感じてなんだか先が長くなりそうだと思った。

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