外へ行こう
少し残酷な描写があります。
妖精さんとお喋りしてて思いまし……思った。なんで自分は敬語で考えているんだろう。ゆるくお話している妖精さんを見ていて頭の中で敬語を使って考えるのが少し疲れた。この子はこんなにゆるふわなのに自分はカチコチ。少し肩の力を抜こう。
「そういえば、なんで妖精さんはここにいるの?」
「ぼく?ぼくはねー、ごはん食べに来たんだ!ほら、ここにたくさんくだものとかおいてあるでしょ?他のどうぶつ達も食べてるし、ぼくたちも食べてるんだー」
「へぇ〜」
「主さまも今食べてるでしょ?ほうっておいてもだめになっちゃうからぼくたちが食べてるの。みんなで食べても余ることが多いから少し困ってたんだ」
「へぇ〜」
「この部屋は主さまに生贄を捧げるためにあるらしいんだけど、むかし光りに包まれた主さまが『むやみなせっしょうをおこなうな!』って怒ったらしくてそれからくだものとかお野菜とかよくわかんない道具?みたいのがお供えされてるみたいだよ」
「へぇ〜……ってえぇ!?ここでそんな出来事が……ってその光ってる人誰?」
「だから主さまだってー!ぼくの目の前にいる主さまそっくりだったよ?」
「そっかー」
深く考えるのはやめよう。多分創造神の一人が降臨した。あの集団の中にはそれこそ無駄な死を嫌う人がいたような気がする。妖精さんは何も言わなかったけど、人間の生贄もいれば動物や妖精の生贄もいたのではないか……なんとなくそう思った。触れないでおこう。
「妖精さんや」
「なあに?主さま」
「お外へ行きたいんだけど、ここの外ってどうなってるの?」
「お外?うーん、近くににんげんの集落があるただの森だよ?森の外にはにんげんがいっぱいいるからあまり行かないほうがいいと思うけど……」
「ちょっと興味あるから行ってみたいかなあ」
「主さまなら大丈夫だと思うけど……食べられそうになったらすぐに逃げてね!かじられたら痛いからね!」
「わかったよー」
どうやら妖精さんから見る人間さんは危ないようだ。とは言っても本にはまだ『ミッション・地上を目指せ!』が表示されていて、本からは『早くしろ』というような圧を感じる。
妖精さんに見送られながら細い光の筋に沿って儀式の間を出た。廊下である。しかも長い。
「歩くの少し疲れたかも……」
ぼそっと弱音をこぼしたら本が反応した。勝手にページがペラペラと捲られてわたしのプロフィールが書かれているページが開いた。
ぼんやりと見ているとうっすら光ってる文字が目についた。『浮遊』と書かれている。それを認識した途端身体がふわっと浮き始めた。
「うわっ、なにこれ!うげっ痛っ!!」
いきなりふわっと地面から足が離れて焦ったらゴツンと天井に頭をぶつけた。すごくいい音がした。痛い。
焦ってまた頭をぶつけると良くないのでちょうど良く浮遊する練習をした。疲れた。
ぷかぷかと浮遊しながら光の筋を追って進んでいくと開けた場所に出た。澄んだ水が湧き出て溜まっている場所がある。周りには誰もいない。水を覗いてみた。まるで鏡のように反射してわたしの姿を映し出した。
何気に初めて見る自分の姿である。白っぽいクリーム色の髪に灰褐色の肌。本に嵌っている石のような琥珀色の丸い瞳。服は民族衣装のようだった。本で確認すると[神子の服]と表示された。見た目は16歳くらいの少女だった。そもそもわたしは何歳なんだろう。製造年月日とか書かれていたけど多分当てにならない。
うっすらと発光する大きな水たまりを時間を忘れて覗き込んでいると人の気配を感じた。多分、人。妖精さんや動物たちとは違う気配だった。顔を上げると革袋のようなものを抱えたひとりの少年と目があった。そう、目があったのである。なんとなく気付かれてしまった、そう焦った。
妖精さんの名前募集中です。なんかゆるい名前がいいなーと思ってます。




