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洞窟

「離してっ!離してってば!」



 わたしは今、得体の知れない真っ白な人型の獣のようなものに抱えられている。しかも小脇に。


 抵抗してもびくともしない。後ろ向きに抱えられているので前も見えず、凄い勢いで景色が過ぎていくのを見ることしかできない。


 わたしを抱えている人物は何も答えない。声を上げたり暴れてみたりしたが相手は反応しない上に喉が痛くなってきたので抵抗をやめた。


 何処へ連れて行くのだろうか。悪魔憑き……進行すると狂獣病という凶暴化する恐ろしい病気になると聞いたけれど、凶暴と言うより意図が読めず不気味な行動をとる状態にしか見えない。しかし悪魔憑きの段階でも凶暴な一面があると聞いているので油断はできない。




 しばらくすると気が済んだのか相手はわたしを地面に投げ捨てた。痛みを覚悟していたが、何故か雪があったのでそこまで痛くは無かった。


 ……雪?何故雪がここにあるの?


 息も絶え絶えに辺りを見回すと暗くて見えにくいが後ろには洞窟、辺りはおそらく雪の降り積もった森の中だった。


 おかしい。何か変だ。


 ウパラの存在も感じない。ウパラと歩いていた場所は草が青々と生い茂っており、沢山の生き生きとした生命の気配を感じた。


 でも、今居る場所は違う。


 生命の気配は鳴りを鎮めており、活動している気配はわたしと目の前の人物のみだ。


「あなたは誰なの」


 相手は答えない。代わりに苦しそうな呻き声をあげ、頭を押さえて目の前から消えた。


 消えた?目の前から?


 気配も消えた。この場所からいなくなった。


 私は置き去りにされた。寒さを感じるので後ろの洞窟に入る事にした。






 洞窟の中は暖かかった。中は思ったより広く、居住スペースだと思われる横穴が複数あった。生活の痕跡が見られたのでわたしを連れてきた人物が暮らしていたのかもしれない。


 目の前の空間には荒く削られた大きな木のテーブルに椅子が並べられていた。一箇所に食べかけであろう干し肉やドライフルーツが置いてあった。


 本を開いて現在地の確認をしてみたが、どうやら琥珀の森からかなり遠く離れた場所のようだ。あまり人も暮らしていないみたい。


 それにしても寒い。テーブルから少し離れたところに焚き木があったので火に当たって温まることにした。剥き出しの冷たい地面に座るのも嫌だったので散策中に集めた素材を生成魔法に通して小さな敷物と羽織る為の布(厳密には布ではない)を作った。無いよりはマシである。


 逃げるにしても外は寒くて暗い。本に地図の機能があるとはいえ、実際に見ないと地形も把握できない。それにわたしを連れてきた人物にまた見つかるかもしれない。


 今動き回るのは得策では無いと思い、悪魔憑きと狂獣病の関係、有角人獣(ケトルベモット)について調べることにした。

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