おひま
わたし達は町に到着しようとしていた。町というよりは栄えている村というような印象だった。
「あそこが目的地?」
「そだよお。町の入り口付近にある大きな建物が冒険者ギルドの支店。支店でも身元引受人がいれば登録できるから手続きは僕に任せてねえ」
ウパラはバチンとウィンクしながら続けた。
「あと名前を考えておいた方がいいかもお。僕はウパラ・ウッドハイヤーって名前で活動してるんだあ。アンバーはどんな名前にするのお?」
「名前かあ……」
「あっ、難しく考えなくても大丈夫!好きなものとか生まれた場所とか特技から取ったり2秒で適当につけた石持ちもいるからあまり悩まなくても問題ないよお」
「2秒って……まあいいや。今は浮かばないからギルドは後からでもいいかな」
「そだねえ、急ぐ事でも無いから……ちょっと待ってね」
ウパラは片耳を押さえて木の影に寄った。
「連絡が来た、少し時間かかりそう。僕からあまり離れない程度に周りを見ておいで」
「はあい」
ウパラは石板を取り出して何かを呟きながら操作し始め、なんだか難しい顔をしていた。
「何かできる事ないかな……」
本を取り出し開いてみる。なんとなく開いたら遺跡ムカデのページだった。
そういえば遺跡から出た後、動物達に話しかけられていないと思った。話し声も聞こえない。鳥の鳴き声は聞こえるが言葉は聞こえない。
……話しかけないと聞こえないのかしら。
花にとまっている蝶に話しかけてみても反応は無かった。本に蝶の情報を登録した後、念話の確認をしてみたけど目ぼしい事は書かれていなかった。
ウパラはまだ忙しそうだ。
本の中にしまってある素材が目についた。やることがないなら何か作ってみよう。
壺は作ったけど生成魔法で作ったわけではないのでこれが初めての生成だ。先ほど回収した小枝や小石を使ってみる。
生成魔法の説明には本に触れた状態で念じると生成ができると書かれていた。
本に触れて手のひらの上に石のナイフが現れるのを強くイメージしてみる。本に何かを吸い込まれる感覚と共に手のひらの上に粗雑な石のナイフが現れた。
ふと、[使える能力]の欄に[鑑定]というものが追加されていることに気付いた。石のナイフに使ってみよう。
鑑定は本を近付けなくても情報が読み取れた。とても便利。
『粗雑な石のナイフ』
品質:低 状態:壊れかけ 状態付与:無し
雑に削られた石と木で作られたナイフ。どんな方法を使えばこのような酷い出来になるのかわからないほど酷い出来のナイフである。
切れ味は最悪。鈍器として使うと良いだろう。
……なんで辛口な説明なのだろう。少し腹が立ったので素材が無くなるまで石のナイフを作りまくることにした。




