Ⅷ
その出来事があってから、アオイをさらに尊敬するようになった。
アオイは、どんなときでも、隣にいると安心できて、
何があっても、常に変わらぬ優しさを持ち続けてる、
そういう、何処かに確固たる落ち着きを持つひとだったんだ。
だから色々なひとに愛されてたし、頼られてた。
でも、時々その重圧に苦しんでた。
そういう時は決まって、
ふたりでミルクティーを飲みながら無言の時間を共有してた。
アオイはいつもミルクティーに角砂糖をひとつだけ入れるんだよ。
で、溶けるのをかき混ぜながら見てるの。猫舌だから、その時間が冷ますために丁度いいんだって。
正直、それじゃまだ熱いと思うんだけど。
何も話さないままミルクティーを飲んで、話しはじめたらゆっくり聞く、
それが、ふたりの恒例行事だった。
どっちが辛くなった時も、同じだった。
不思議だけど、アオイとの無言は苦しくなかったんだ。
無言って、大抵気まずくなるものなのに。
多分それは、
その時間が、無言であって無言じゃなかったからなのかもしれない。
言葉を交わさなくても、不安にはならなかった。
片方が泣いたときは、もう片方が黙って優しく受け止めてた。
そういう関係性だったんだ。すごく温かくて、居心地のいい関係性だったよ。
それにアオイは、
鈴が鳴るような笑い声と、
昼下がりの陽の光と夜明けの月の光を混ぜたみたいな笑顔を持つ、
すごく綺麗なひとだった。
生きることに疲れ始めていたぼくの終わりのない暗い道に
ひかりを注ぎ続けてくれるひとだった。
綺麗で、透明で、
目を放したらふわりと消えてしまいそうなひとだった。




