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Gypsophila  作者: 蠢爾
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アオイの優しさと強さを感じたのは、


ぼくが不老不死であることを打ち明けたときかな。


出逢いから五年が経ったころだったと思う。


アオイの家で曲の打ち合わせをして、終わってからゆるゆる過ごしてたとき、


「ちょっと、いいかな。


 アオイにずっと言ってなかったことがあって、


 その、今、聞いてくれる?」


マグカップを片手にくつろぐアオイに声をかけた。


「ん?


 いいよ。聞かせて。」


アオイはパソコンを閉じて、ソファに座り直してからぼくの方を向いてくれた。


「アオイと話すようになって、一緒に活動するようになってから、もう五年くらい経ったじゃん。


 誕生日も何回か祝ってもらった。


 だから、もう、少しずつ気が付いてるかもしれないんだけどさ、



 …ぼく、不老不死の身体なんだ。


 だから、年はアオイに伝えた年の何十倍だし、


 見た目も全く老いてない。


 五年じゃ、見た目の変化はあんまり無いかもしれないけど、


 これから十年経っても、五十年経っても、アオイがおばあちゃんになっても、


 ぼくの見た目はこのままで、


 みんなが死んでも、ぼくはずっと遠くの未来まで、何千年も生きてる。


 今まで隠しててごめんなさい。

 

 嘘をついてたのも、ごめん。




 打ち合わせも終わったし、ぼく帰るね。


 お疲れ様。」


そう言って、ぼくは腰を上げた。


アオイの顔は、驚きの色に染まってた。


やっぱりこのことを聞いて驚かない人はいないよな、って思いながら帰る支度を始めた。


何回も見たことのある光景だったからね。


でもそのとき、



「待って。」



そう言って、アオイが引き留めてくれたんだ。


顔は驚いたままだった。強張ってたよ。


「正直、私は、今の話を聞いて驚いてる。


 …本当なのかどうか、理解しきれてない部分だってある。



 でも、私はユキが話してくれて嬉しい。


 だから、謝らないで。

 

 隠してたのも何か理由があるんでしょ?


 ユキがいつも寂しそうに笑ってるの、何でだろうってずっと思ってた。

 でも、今少し何でか分かったような気がした。


 だから、他にも私が知らないユキのこと、いっぱいあると思うけど、

 また話してくれたら嬉しい。」


アオイは、そう言ってくれた。


驚きで強張ってたけど、その顔には優しい笑顔があった。


嬉しかったよ。

そんな言葉をかけてくれたのは、アオイが初めてだったから。


その時アオイが驚いてるのも、信じ切れてないのも、表情と声から分かった。

でも、その言葉を本心から言ってくれているのも分かった。


ぼくが今まで色々なひとから聞いてきた、

上辺だけを繕った言葉じゃないことは明らかだったんだ。


「気持ち悪くないの…?


 嘘つきだって思わないの…?」


アオイの言葉が嘘じゃないとわかっていても、そう尋ねずにはいられなかった。


ぼくは、泣いてた。


「気持ち悪いなんて思うわけないでしょ。


 だって五年も一緒に居るんだよ?


 それだけの時間一緒に過ごしてきたわけだし、


 私ユキのこと大好きだし、


 そんなこと思うわけないじゃん。


 それに、あんな泣きそうな顔で話されたら、それが嘘じゃないことくらい分かるよ。」


アオイは、当たり前のようにそう答えてくれた。拍子抜けするくらいさらっとね。


アオイは、笑ってた。


そこに、さっきまでの強張りは無かった。


で、こう続けたんだ。


「じゃあ、聞きたいことも話したいこともいっぱいあるしさ、


 夜ごはん一緒に食べない?


 ありものだけど、何か作るよ。」


今度はぼくが信じられなくなる番だった。


だって普通なら気味悪がるか、疑うであろう話をしたのに、


アオイは受け止めてくれたんだから。


それに、もっと知りたいって言ってくれたんだもん。


驚かないわけないよ。


気持ちを偽ることなく、本心からそう言ってくれたことが、

本当に、何より嬉しかったよ。


それに普通、気持ち悪い奴と自分の家でご飯食べないし。



それからふたりで夕飯を食べて、


音楽のことや、ぼくが昔見聞きしたことを、一晩中語りあった。


あの味噌汁の味は、一生忘れられない。

言い表せないくらい、すごく美味しかった。



それで次の日、アオイがいつも通りの笑顔で、


「おはよう。」


って挨拶してくれたとき、

今まで何度も見てきた景色のはずなのに、それがひどく貴重で奇跡的な場面のように感じたんだ。


温かくて、心から幸せだと思えた。


それが、生まれて初めて感じた他人からの愛だったのかもしれない。


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