第5話 3分だけの南実くん
鏡見高等学校。
「芹香さん」
隣の席の南実くんが話しかけてきた。
南実湊。16歳。
緑色の髪に染めている。緑好きな男の子。
緑色の色眼鏡をしている。
「3分だけ、いいかな」
「何をですか?」
「インスタント交際しようよ」
緑色の色眼鏡の奥で見つめてくる。
優しい口調と合わせて、すがすがしい。
「い、インスタント交際ですか?」
「英語は、くわしく聞かないで。綾人くんには秘密で交際しようよ」
ニコニコ、笑顔だ。
「じゃあ、今から3分だけね」
腕時計を確認した後。南実くんは言った。
「芹香さんは、最初に好きになったゲームは、何?」
質問された。
芹香は、リズムゲームが大好きだった。
幼い頃は、スマホより、家庭用携帯ゲームだった。
よく、近所の公園で遊んでいた。
「外で、携帯ゲームか。可愛いね」
南実くんは、農園ゲームが好きらしい。
「後は…」
「おい。何、親しげに話してるんだ」
綾人がきた。
「何でもないよ。世間話だよね」
ニコニコしている。南実くん。
3分間のインスタント交際、バレていない。
第5話 3分だけの南実くん
「…お前、芹香のこと好きなのか」
綾人は、質問してくる。
「僕は、隣同士、普通に話していただけだよ」
どうやら、親しげに会話してたのは、見ていた様子。
芹香と南実くんは、席が隣同士なだけ。
特に仲良くはない。
「芹香は、俺と交際してること忘れるなよ」
綾人は、眼鏡越しににらんでくる。
芽央家。
スマホゲームの合間。
ボーッとしながら、思い出していた。
綾人は、カッコいい。交際を決めてきた。
小西千秋くんは、弱気な幼なじみ。交際をお願いされた。
南実くんは、席が隣同士。3分交際をしようと言った。
綾人。小西くん。南実くん。
どうして、いきなり、交際を申し込んできたのだろうか。
目金井遊園地。
自宅から強制連行の2回目のデート。
「何で、また同じところに行きたがるんだよ」
ソード使い。東条綾人。
「だって、限定アクリルキーホルダーを買ってなかったからです」
ロッド使い。芽央芹香。
入り口の武器防具屋で、コスチュームに着替えた。
2回目だ。
ショップで、限定アクリルキーホルダーをGETする。
すぐに、リュックサックに付ける。
「…」
綾人が、無言で見つめてくる。
「どこか、人が少ない場所に行かないか?」
「え。何でですか」
「人が少ない場所で、“キス”しよう」
「え、ええ」
後ずさる芹香。
「2回目のデートでキスは、遅いか」
「な、何を言ってるんですか」
「ファンタジー好きなんだろ。キ、キスしよう」
綾人。照れている。
ファンタジーのコスチュームを着ている=好き。
だから、キスOK。
「き、キスはちょっと…」
「もう、経験済みなのか?」
「え」
ゲーム大好き、芹香にキスの経験はない。
綾人こそ、経験済みに思える。
「俺の経験はノーコメント」
眼鏡に手をかける。
「キス…したくないのか?」
綾人は、芹香は、キスをしたがると思っているらしい。
「あの、何で、キスしたいんですか?」
わからない。
思わず、聞いていた。
「心の底で、相手が好きだからだろうよ」
綾人は、不機嫌だった。
拒絶されたと思ってしまったようだ。
「…キスは、いらないのか。わからなかった」
つぶやく綾人。
芹香もわからない。キスとか、考えてないから。




