08 選択の間
ハイサイ!nankul naisaです。
読んでいただきありがとうございます。プロローグ最終話です。
戦いを終えた影真は、ボスの魔石を静かに袋へ収めてから大きく息を吐いた。
◇◆◇
その瞬間、広間全体が低く唸るように震え出した。壁の苔が淡く光り、足元の石畳に複雑な紋様が浮かび上がっていく。影真が息を呑む間に、巨大な扉や苔むした壁が音もなく崩れ、別の景色へと変貌していった。
暗く湿った戦いの場は消え去り、代わりに広がったのは荘厳な静寂を湛えた空間だった。床は磨かれた黒曜石のように光を映し、天井には無数の星のような光点が瞬いている。先ほどまでの血と汗の匂いが跡形もなく消え、ただ心の奥を静めるような気配が漂う。
そこは「選択の間」。ダンジョンが試練を突破した者に与える、次なる力への門出だった。影真は思わず息を整え、胸の鼓動を静めながら歩みを進めていった。
◇◆◇
円形の中心に入ると、足元の石床が淡く輝きだす。
その光はゆっくりと螺旋を描き、部屋の中央に座するよう影真を誘っていた。
「……試されてるのか」
彼は促されるまま中央に腰を下ろす。
瞼を閉じると、不思議な静寂が辺りを満たし、感覚が1つずつ削ぎ落とされていった。
音も、匂いも、体温さえも希薄になる。まるで世界から切り離されたような感覚。
完全にゼロへと沈み込んだその瞬間、目の前に淡い光が灯った。
やがてそれは複数の光球となり、静かに浮遊する。青、赤、緑、白、紫――数を数えることすらできないほど、多彩な光が影真の前に並んでいた。
◇◆◇
声なき声が響く。
『選べ。この中の一つが、汝に力を与える』
影真は眉をひそめる。
「……選べ、って言われても……」
直感以外に頼れるものは何もなかった。
光の球たちはただ静かに揺らぎ、彼を待っている。
影真は深呼吸し、無意識のまま左手を伸ばした。
意識ではなく、本能に引かれて。
触れた瞬間、ひときわ強く輝いた光球が胸へと吸い込まれた。
心臓の奥に火を灯されたような感覚。熱く、だが不思議と心地よい。
◇◆◇
瞼を開けると、部屋は元の静けさに戻っていた。
ただ胸の奥に残る確かな違和感――いや、力。
「……これは」
影真が腰の袋から極小魔石を1つ取り出すと、それは触れた瞬間に淡い光となり、指先から吸い込まれていった。
跡形もなく消えた魔石の余韻が、確かに体の内側に力として宿っている。
「……魔石を、取り込める……?」
呆然と呟いた後、影真は小さく笑った。
「悪くない報酬だな」
新たな力を得て、彼のダンジョン探索は新たな段階へと踏み出していく。
最後までお付き合いありがとうございました。
ゆる~く更新出来たらと思ってます。これで1年前に書いていた分は出しました。
ここから新しく作っていくので出来次第ゆる~く投稿したいと思います。




