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『ダンジョン物語』  作者: nankul naisa
第一章
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16/20

第8話 複数相手に挑戦

ハイサイ!nankul naisaです。

読んでいただきありがとうございます。


 

 揺らぎをくぐり、第二エリアへ踏み込む。


 今日はいつもと違う目的があった。単独のネコモンスターには対応できるようになってきた。次は複数だ。


 ◇◆◇


 通路を進むと、岩陰に二つの影が見えた。


 ネコモンスターが二匹、寄り添うように座っている。一匹が影真に気づき、耳をぴくりと動かした。


「……いたか」


 影真は慎重に間合いを測る。単独とは勝手が違う。まずは様子を見るべきか。


 だが、迷っている間にネコモンスターが動いた。


 ◇◆◇


 二匹が同時に散開する。一匹は左から、もう一匹は右から。


 影真は右側の一匹に狙いを定めた。単独の時と同じ要領で、耳の動きを見て踏み込む。


「っ」


 拳が空を切った。フェイントだ。だが今のは今まで見た動きと違う。


 左側から爪が迫る。慌てて体を引くと、今度は右側の一匹が距離を詰めていた。


「……なるほど、これはやっかいだな」


 二匹同時だと、片方の動きに集中している隙をもう片方が突いてくる。単独の癖が通用しない。まるで違う生き物と戦っているようだった。


 ◇◆◇


 影真は右側の一匹に狙いを絞った。多少強引でも、まず一匹を減らすべきだと判断する。


 踏み込んで拳を放つ。今度は当たった。ネコモンスターがたたらを踏む。


 だが追撃しようとした瞬間、左側の一匹が横から突っ込んできた。


「くっ」


 軌道を変えて回避に専念せざるを得ない。狙っていた一匹に止めを刺す隙がなくなった。


 仕留めかけた獲物を、もう一匹が守る。意識してやっているのか、本能的な行動なのか。どちらにせよ、厄介だった。


 ◇◆◇


 攻防が続く。


 影真は何度か拳や短剣を当てることができた。だが致命傷には至らない。片方に集中すれば、もう片方が邪魔をする。二匹分のフェイントを同時に読むのは、まだ影真には早かった。


 息が上がってくる。


 単独戦の何倍も体力を消耗している。防御と回避に神経を使い続けるのは、想像以上に疲れる作業だった。


「……このままだと、ジリ貧だな」


 削り切る前に自分の体力が尽きる可能性がある。ダンジョンの中で無理をするのは得策ではない。


 影真は数歩後退し、距離を取った。ネコモンスター二匹はすぐには追ってこない。値踏みするような視線を向けてくるだけだった。


「……とりあえず、今の俺の力は分かった」


 悔しさより先に、冷静な判断が勝った。影真は慎重に来た道を戻った。


 ◇◆◇


 その日の夕方、影真はギルドへ向かった。


 カウンターに着くと、受付嬢がいつも通り迎えてくれた。


「あ、影真さん。今日はどうでした?」


「複数のネコモンスターに苦戦してる」


 影真は率直に伝えた。


「二匹同時だと、片方に集中すると片方が邪魔をしてくる。あと一歩で仕留めきれない」


 受付嬢は少し考える顔をしてから、端末を操作した。


「複数戦闘の攻略情報は……あるにはあるのですが、影真には参考になるか微妙です」


「どういうこと?」


「探索者の多くはパーティーを組んでるので、複数の敵が出たら役割分担で対応するのが基本みたいです。前衛が引きつけて、他のメンバーが仕留めるとか」


「俺には物理的に無理だな」


 パーティー前提の情報では、ソロの影真には参考にならない。


「ソロで挑んでる人はいないのか」


「いないことはないですけど……」


 受付嬢は少し言葉を選ぶような顔をした。


「その、かなり個性的な戦い方をされる方が多くて。あまり参考にはならないかもしれません」


「どんな感じなんだ?」


「圧倒的な力押しで体が頑丈とか、目覚めた強い異能で戦うとか……正直、他の人が真似できる感じじゃないんです」


 影真は少し考えた。つまり、自分で答えを見つけるしかないということか。


「そうか、ありがとう」


「お力になれず、すみません」


「いや、参考になる情報だった」


 受付嬢は少し困ったように笑った。


「それ、本当ですか?」


「ああ、ソロはかなり難しい事が改めて理解した」


「じゃあ、パーティーメンバーを探しますか」


俺はたぶん敵だけではなく見方も複数は苦手だと思う。


「気持ちは嬉しいけど、俺はソロが楽しいんだ。もし必要になったらその時はお願いするよ」


「わかりました」


受付嬢は少し心配そうだった。


 ◇◆◇


 ギルドを出て、夕暮れの風の中を歩く。


 パーティーでもなく、他のソロ探索者の戦い方も参考にならない。結局、自分の体と頭で答えを見つけるしかない。


 影真は少し口角を上げた。


 面倒だとは思わなかった。むしろ、それがいいと思った。


 誰かの真似ではなく、自分だけの戦い方を作る。それは、最高の挑戦だ。


「……よし、俺も参考にならない探索者になってみるか」


 冷蔵庫の前に戻りながら、影真はどうしたら勝てるかを頭の中でいろんなパターンで考え始めていた。



最後までお付き合いありがとうございました。

ゆる~く更新出来たらと思ってます。

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