第8話 複数相手に挑戦
ハイサイ!nankul naisaです。
読んでいただきありがとうございます。
揺らぎをくぐり、第二エリアへ踏み込む。
今日はいつもと違う目的があった。単独のネコモンスターには対応できるようになってきた。次は複数だ。
◇◆◇
通路を進むと、岩陰に二つの影が見えた。
ネコモンスターが二匹、寄り添うように座っている。一匹が影真に気づき、耳をぴくりと動かした。
「……いたか」
影真は慎重に間合いを測る。単独とは勝手が違う。まずは様子を見るべきか。
だが、迷っている間にネコモンスターが動いた。
◇◆◇
二匹が同時に散開する。一匹は左から、もう一匹は右から。
影真は右側の一匹に狙いを定めた。単独の時と同じ要領で、耳の動きを見て踏み込む。
「っ」
拳が空を切った。フェイントだ。だが今のは今まで見た動きと違う。
左側から爪が迫る。慌てて体を引くと、今度は右側の一匹が距離を詰めていた。
「……なるほど、これはやっかいだな」
二匹同時だと、片方の動きに集中している隙をもう片方が突いてくる。単独の癖が通用しない。まるで違う生き物と戦っているようだった。
◇◆◇
影真は右側の一匹に狙いを絞った。多少強引でも、まず一匹を減らすべきだと判断する。
踏み込んで拳を放つ。今度は当たった。ネコモンスターがたたらを踏む。
だが追撃しようとした瞬間、左側の一匹が横から突っ込んできた。
「くっ」
軌道を変えて回避に専念せざるを得ない。狙っていた一匹に止めを刺す隙がなくなった。
仕留めかけた獲物を、もう一匹が守る。意識してやっているのか、本能的な行動なのか。どちらにせよ、厄介だった。
◇◆◇
攻防が続く。
影真は何度か拳や短剣を当てることができた。だが致命傷には至らない。片方に集中すれば、もう片方が邪魔をする。二匹分のフェイントを同時に読むのは、まだ影真には早かった。
息が上がってくる。
単独戦の何倍も体力を消耗している。防御と回避に神経を使い続けるのは、想像以上に疲れる作業だった。
「……このままだと、ジリ貧だな」
削り切る前に自分の体力が尽きる可能性がある。ダンジョンの中で無理をするのは得策ではない。
影真は数歩後退し、距離を取った。ネコモンスター二匹はすぐには追ってこない。値踏みするような視線を向けてくるだけだった。
「……とりあえず、今の俺の力は分かった」
悔しさより先に、冷静な判断が勝った。影真は慎重に来た道を戻った。
◇◆◇
その日の夕方、影真はギルドへ向かった。
カウンターに着くと、受付嬢がいつも通り迎えてくれた。
「あ、影真さん。今日はどうでした?」
「複数のネコモンスターに苦戦してる」
影真は率直に伝えた。
「二匹同時だと、片方に集中すると片方が邪魔をしてくる。あと一歩で仕留めきれない」
受付嬢は少し考える顔をしてから、端末を操作した。
「複数戦闘の攻略情報は……あるにはあるのですが、影真には参考になるか微妙です」
「どういうこと?」
「探索者の多くはパーティーを組んでるので、複数の敵が出たら役割分担で対応するのが基本みたいです。前衛が引きつけて、他のメンバーが仕留めるとか」
「俺には物理的に無理だな」
パーティー前提の情報では、ソロの影真には参考にならない。
「ソロで挑んでる人はいないのか」
「いないことはないですけど……」
受付嬢は少し言葉を選ぶような顔をした。
「その、かなり個性的な戦い方をされる方が多くて。あまり参考にはならないかもしれません」
「どんな感じなんだ?」
「圧倒的な力押しで体が頑丈とか、目覚めた強い異能で戦うとか……正直、他の人が真似できる感じじゃないんです」
影真は少し考えた。つまり、自分で答えを見つけるしかないということか。
「そうか、ありがとう」
「お力になれず、すみません」
「いや、参考になる情報だった」
受付嬢は少し困ったように笑った。
「それ、本当ですか?」
「ああ、ソロはかなり難しい事が改めて理解した」
「じゃあ、パーティーメンバーを探しますか」
俺はたぶん敵だけではなく見方も複数は苦手だと思う。
「気持ちは嬉しいけど、俺はソロが楽しいんだ。もし必要になったらその時はお願いするよ」
「わかりました」
受付嬢は少し心配そうだった。
◇◆◇
ギルドを出て、夕暮れの風の中を歩く。
パーティーでもなく、他のソロ探索者の戦い方も参考にならない。結局、自分の体と頭で答えを見つけるしかない。
影真は少し口角を上げた。
面倒だとは思わなかった。むしろ、それがいいと思った。
誰かの真似ではなく、自分だけの戦い方を作る。それは、最高の挑戦だ。
「……よし、俺も参考にならない探索者になってみるか」
冷蔵庫の前に戻りながら、影真はどうしたら勝てるかを頭の中でいろんなパターンで考え始めていた。
最後までお付き合いありがとうございました。
ゆる~く更新出来たらと思ってます。




