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『ダンジョン物語』  作者: nankul naisa
第一章
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13/20

第5話 防具の確認

ハイサイ!nankul naisaです。

読んでいただきありがとうございます。



 揺らぎをくぐると、いつもの岩肌と苔の明かりが目に入った。


 湿った空気が肺に入る。第一層第一エリア。見慣れた景色だ。


 今日の目的は二つ。強化した防具の感触を確かめること。そして身体能力の変化を確認すること。


 ◇◆◇


 最初のひよこモンスターが通路の奥から現れた。


 影真は構えを取る。いつも通り踏み込んで、拳を叩き込む。


「ピギャッ!」


 倒れたひよこモンスターから極小魔石が現れる。


 影真は拳を握り込んだまま、少し考えた。


 踏み込みが、速い。


 気のせいかもしれない。だが昨日までと感覚が違った。足が地面を蹴る感触、拳が空気を切る感触、どれもわずかに鋭くなっている。


「……少しずつ来てるな」


 《魔石吸収》の効果だろう。劇的ではない。だがじわりと、確かに体に馴染んできている。


 ◇◆◇


 次のひよこモンスターと対峙する。


 踏み込んで逆手の短剣で牽制し、拳を叩き込む。いつものコンビネーションだが、動きの切れが昨日より一段上がっていた。


「ピギィィッ!」


 羽毛が舞う。


 影真は一息ついて、今度は防具の感触を確かめる。グローブはしっかりと手に馴染み、ベストは動きを妨げない。強化前と重さはほぼ変わらないが、芯の頼もしさが違った。ひよこモンスターの嘴が腕を掠めても、以前より安心感がある。


「……悪くない」


 ◇◆◇


 さらに数体倒しながら、影真は自分の体の変化を一つずつ確かめていった。


 踏み込みの速さ。拳の重み。回避の感覚。


 どれも派手に変わったわけではない。だが積み重なれば、戦闘の質は確実に変わる。疲労の蓄積もいつもより緩やかだ。新たな力と防具にドーパミンが出てるのだろう。


 地道に魔石吸収を続けた甲斐があった。防具も使い込んでからの合成が今から楽しみだ。


 十分に確認は出来たし、今日はここまでにしておく。次はギルドにでも行くか。


 ◇◆◇


 ギルドへ向かうと、カウンターには何人かの探索者がいた。


 ダンジョンが現れた当初の熱狂は落ち着き、今は日常の一部として溶け込んでいる。ギルドも情報を定期的に更新し、装備チェックや注意喚起を欠かさない。離脱者を出さないためのサポートが行き届いていた。


 少し待つとカウンターが空いた。受付嬢が影真に気づいて軽く会釈した。


「お待たせしました。」


「いや、大丈夫。今さっき来た」


「そうでしたね、ちょうど今来たんでしたっけ」


 受付嬢は小さく笑って、端末を操作し始めた。


「今日は何でしょう?」


「第二エリアの情報を聞きたい」


 受付嬢は頷いて、端末を操作し始めた。


「第二エリアですね。一通り揃ってますよ」


 ◇◆◇


「出現するのは猫型のモンスターです」


 受付嬢は端末の画面を影真に向けた。そこには小さなイラストが添えられていた。丸い顔に大きな目、ふわふわとした毛並み。見た目だけなら愛らしい。少しふざけたようなデフォルメされた猫だった。


「落書き?」


「見た目はそうなんですけど、別に私が書いたわけではないですよ」


 受付嬢は少し慌てたかと思うとちょっと拗ねた。


「立派なモンスターです。ひよこより素早くて、引っかき攻撃が主体です。爪が鋭くて、腕や手の甲を狙ってくる報告が多いです。複数で行動することもあるので、そこが一番の注意点ですね」


「複数か」


「ひよこは基本一体ずつでしたけど、ネコは二、三体で現れることもあります。慌てずに一体ずつ対処するのが基本です」


 影真は頷きながら情報を頭に入れた。素早い。引っかき主体。複数行動。グローブを強化しておいて正解だった。


「他には?」


「急がずに攻略すれば問題ないと思います。第一層は深追いしなければ危険は少ないですから」


「そうか、わかった。情報ありがとう」


「お役に立てて嬉しいです」


受付嬢は少し得意げだった。


 ◇◆◇


「そういえば」と受付嬢が少し肩の力を抜いた。「最近は第二エリアへ挑戦する探索者が少しずつ増えてきてますよ。」


「そういう時期か」


「ダンジョンが出来た頃は勢いで突っ込む人も多かったみたいですけど、今は装備を整えてから挑む人が増えてきたみたいで」


「堅実だな」


「その方が長続きしますよね」


 少し間が空いた。


「……影真さんは堅実な方ですか?」


「どうだろうな」


 影真は少し考えてから答えた。


「堅実を心掛けてる」


 受付嬢はくすりと笑った。


「それが一番大事かもしれないですね」


 少し間が空いた。軽い気分転換になったな。


「……それじゃあ、また。なにかあったら来るよ」


「はい、いつでも気軽にどうぞ」


 ◇◆◇


 ギルドを出て、夕暮れの風が冷たい。


 猫型。素早い。引っかき主体。複数行動。


 頭の中で情報を整理しながら、影真の口角はわずかに上がっていた。


 強化した防具、少しずつ上がってきた身体能力。準備は整いつつある。


 あとは全力で楽しむ、ただそれだけだ。



最後までお付き合いありがとうございました。

ゆる~く更新出来たらと思ってます。

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