第4話 防具屋へ行く
ハイサイ!nankul naisaです。
読んでいただきありがとうございます。
目が覚めると、天井が白かった。
ぼんやりと起き上がり、体の状態を確認する。疲労感はほとんどない。昨日より少し体が軽い気がした。気のせいかもしれないが、悪くない朝だった。
台所へ向かい、冷蔵庫を開ける。揺らぎは今日も静かにそこにあった。
だが今日はダンジョンではない。
「……そういえば、防具を強化しに行こうと思ってたんだった」
朝食を済ませ、革グローブとレザーベストを確認する。目立った傷はないが、魔石で強化しておくに越したことはない。ネコ型のネコモンスターと戦うなら、今のうちに備えておきたかった。
影真は支度を整え、街へ出た。
◇◆◇
武器屋の扉を開けると、カランと軽い音が響いた。
「いらっしゃい。あら、この前の子じゃない」
奥さんが笑顔で迎えてくれる。
「防具を強化したい」
「強化ね。魔石は持ってる?」
「ああ」
奥さんは頷き、店の奥へ声をかけた。
「あなた、強化の依頼よ」
しばらくして、奥の作業場から大柄な男が現れた。
身長は影真より頭一つ分は高く、腕は丸太のように太い。革のエプロンには無数の傷と煤がついていて、長年の仕事がそのまま染み込んでいるようだった。影真を一瞥し、無表情のまま口を開く。
「防具を見せろ」
影真は黙ってレザーベストと革グローブを外し、カウンターへ置く。店長はそれを無言で手に取り、表も裏も丁寧に確認した。縫い目を指でなぞり、革の厚みを確かめ、傷の具合を見る。
数秒の沈黙。
「魔石を出せ」
影真はポーチから極小魔石を10個取り出してカウンターへ並べた。店長はそれを見て、短く頷く。
「待て」
それだけ言って、作業場へ消えた。
◇◆◇
奥さんがお茶を出してくれた。影真は礼を言い、カウンター横の椅子に腰を下ろす。
しばらくして、低い音が作業場から聞こえてきた。金属を打つ音ではなく、何かを丁寧に馴染ませるような、静かな作業音だった。
奥さんが手持ち無沙汰な影真に話しかける。
「あのひと、無愛想でしょ。でも仕事は本物よ」
「……そうみたいですね」
「あなたも口数が少ないから、なんか似てるわね」
影真は少し考えてから、頬をかきながら苦笑い気味に短く返した。
「そうかもしれませんね」
奥さんはくすくすと笑った。
◇◆◇
十数分後、店長が戻ってきた。カウンターへ防具を置く。
見た目はほとんど変わらない。だが手に取ると、革の質感が違った。芯が通ったような、しっかりとした重みがある。グローブを嵌めて拳を握ると、昨日とは明らかに感触が違った。
「耐久が上がった。傷がついても少しずつ戻る。ただし」
店長は影真を真っ直ぐ見た。
「新品には戻らん。使えば使うほど魔石も余計にいる」
「わかりました。いい感じです、ありがとうございます」
「使い倒したらまた持ってこい」
短い間があった。
「合成してやる」
影真は少し目を細めた。
「合成?」
「使い込んだ防具は新しいのに馴染ませられる。お前の経験が移る。形や色が少し変わる」
それだけ言って、店長は作業場へ戻っていった。
奥さんが「また来てね」と手を振る。影真は軽く会釈して店を出た。
◇◆◇
帰り道、ギルドの前を通りかかった。
そういえば、次のエリアのモンスターについて聞いておこうと思っていた。
扉を開けると、カウンターでは受付嬢が別の探索者の対応をしていた。書類を広げ、真剣な顔で説明している。
影真は少し眺めてから、静かに扉を閉めた。
急ぎでもないし邪魔するほどのことでもない。次でいいか。
◇◆◇
家に帰り、防具を身に着けたまま冷蔵庫の前に立つ。
グローブの感触を確かめるように拳を握る。しっかりしている。
「……使い倒すか」
自然と口角が上がった。
揺らぎに手を伸ばす。視界が切り替わる。
まずは強化した防具の確認から始めるか。
最後までお付き合いありがとうございました。
ゆる~く更新出来たらと思ってます。




