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『ダンジョン物語』  作者: nankul naisa
第一章
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12/20

第4話 防具屋へ行く

ハイサイ!nankul naisaです。

読んでいただきありがとうございます。



 目が覚めると、天井が白かった。


 ぼんやりと起き上がり、体の状態を確認する。疲労感はほとんどない。昨日より少し体が軽い気がした。気のせいかもしれないが、悪くない朝だった。


 台所へ向かい、冷蔵庫を開ける。揺らぎは今日も静かにそこにあった。


 だが今日はダンジョンではない。


「……そういえば、防具を強化しに行こうと思ってたんだった」


 朝食を済ませ、革グローブとレザーベストを確認する。目立った傷はないが、魔石で強化しておくに越したことはない。ネコ型のネコモンスターと戦うなら、今のうちに備えておきたかった。


 影真は支度を整え、街へ出た。


 ◇◆◇


 武器屋の扉を開けると、カランと軽い音が響いた。


「いらっしゃい。あら、この前の子じゃない」


 奥さんが笑顔で迎えてくれる。


「防具を強化したい」


「強化ね。魔石は持ってる?」


「ああ」


 奥さんは頷き、店の奥へ声をかけた。


「あなた、強化の依頼よ」


 しばらくして、奥の作業場から大柄な男が現れた。


 身長は影真より頭一つ分は高く、腕は丸太のように太い。革のエプロンには無数の傷と煤がついていて、長年の仕事がそのまま染み込んでいるようだった。影真を一瞥し、無表情のまま口を開く。


「防具を見せろ」


 影真は黙ってレザーベストと革グローブを外し、カウンターへ置く。店長はそれを無言で手に取り、表も裏も丁寧に確認した。縫い目を指でなぞり、革の厚みを確かめ、傷の具合を見る。


 数秒の沈黙。


「魔石を出せ」


 影真はポーチから極小魔石を10個取り出してカウンターへ並べた。店長はそれを見て、短く頷く。


「待て」


 それだけ言って、作業場へ消えた。


 ◇◆◇


 奥さんがお茶を出してくれた。影真は礼を言い、カウンター横の椅子に腰を下ろす。


 しばらくして、低い音が作業場から聞こえてきた。金属を打つ音ではなく、何かを丁寧に馴染ませるような、静かな作業音だった。


 奥さんが手持ち無沙汰な影真に話しかける。


「あのひと、無愛想でしょ。でも仕事は本物よ」


「……そうみたいですね」


「あなたも口数が少ないから、なんか似てるわね」


 影真は少し考えてから、頬をかきながら苦笑い気味に短く返した。


「そうかもしれませんね」


 奥さんはくすくすと笑った。


 ◇◆◇


 十数分後、店長が戻ってきた。カウンターへ防具を置く。


 見た目はほとんど変わらない。だが手に取ると、革の質感が違った。芯が通ったような、しっかりとした重みがある。グローブを嵌めて拳を握ると、昨日とは明らかに感触が違った。


「耐久が上がった。傷がついても少しずつ戻る。ただし」


 店長は影真を真っ直ぐ見た。


「新品には戻らん。使えば使うほど魔石も余計にいる」


「わかりました。いい感じです、ありがとうございます」


「使い倒したらまた持ってこい」


 短い間があった。


「合成してやる」


 影真は少し目を細めた。


「合成?」


「使い込んだ防具は新しいのに馴染ませられる。お前の経験が移る。形や色が少し変わる」


 それだけ言って、店長は作業場へ戻っていった。


 奥さんが「また来てね」と手を振る。影真は軽く会釈して店を出た。


 ◇◆◇


 帰り道、ギルドの前を通りかかった。


 そういえば、次のエリアのモンスターについて聞いておこうと思っていた。


 扉を開けると、カウンターでは受付嬢が別の探索者の対応をしていた。書類を広げ、真剣な顔で説明している。


 影真は少し眺めてから、静かに扉を閉めた。


 急ぎでもないし邪魔するほどのことでもない。次でいいか。


 ◇◆◇


 家に帰り、防具を身に着けたまま冷蔵庫の前に立つ。


 グローブの感触を確かめるように拳を握る。しっかりしている。


「……使い倒すか」


 自然と口角が上がった。


 揺らぎに手を伸ばす。視界が切り替わる。


 まずは強化した防具の確認から始めるか。



最後までお付き合いありがとうございました。

ゆる~く更新出来たらと思ってます。

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