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『ダンジョン物語』  作者: nankul naisa
第一章
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10/20

第2話 新しい力

ハイサイ!nankul naisaです。

読んでいただきありがとうございます。




 翌朝、目が覚めると体の重さはほとんど消えていた。いつもよりかなり調子が良かった。


 影真は冷蔵庫の前に立ち、揺らぎに手を伸ばした。


 ◇◆◇


 第一層。


 見慣れた岩肌と苔の明かり。湿った空気が肺に入る。


 今日の目的はひよこモンスターを倒すことではない。


 《魔石吸収》を試すことだ。


 影真はポーチから極小魔石を一つ取り出した。換金せず手元に残しておいたものだ。


 手のひらに乗せ、じっと見る。


 選択の間では、触れた瞬間に自然と吸い込まれていった。同じようにやればいいはずだ。


 試しに右手で握り込む。


 ――何も起きない。


「……」


 左手に持ち替えて握る。


 ――やはり何も起きない。


 力を抜いて乗せてみる。


 ――起きない。


 両手で包んでみる。


 ――起きない。


「なんでだ?」


 思わず声に出た。


 ◇◆◇


 しばらく試しても反応はなかった。


 影真は岩壁に背を預け、顎に手を置き考える。


 選択の間のとき、自分は何を考えていたか。


 ――特に何も。ただ手を伸ばした。


 いや、待て。あのとき何かを感じていたはずだ。光球を前にして、直感的に何かを。


 強くなりたい。


 それだけだった。


 影真は魔石を手のひらに乗せ直す。強くなりたい、と意識しながら。


 ――すっ、と。


 魔石が指先に吸い込まれた。


「……これは、いい」


 体の内側に何かが広がる感覚。温かくも冷たくもない、ただ満ちていくような感触だった。


 ◇◆◇


 もう一つ取り出す。同じように強くなりたいと意識しながら触れると、すっと消えた。


 三つ目も消えた。四つ目も。


 影真はひよこモンスターを狩りながら、倒すたびに極小魔石を吸収していった。換金はしない。今日は全部試す。


 五つ、六つ、七つ。


 吸収するたびに、体の奥でじわりと何かが蓄積されていく感覚がある。だが目に見えた変化はまだない。


 八つ、九つ。


 そして十個目を吸収した瞬間、どっと疲労感が増した。


「……これで限界みたいだ、ここまでにしておこう」


 これ以上は探索に支障が出る。ダンジョンの中で無理をするのは得策ではない。


 ◇◆◇


 探索を切り上げ、出口へ向かう。


 足取りは普段より少し重かった。戦闘の疲れとは別の、芯からくる疲労感だ。


「……明日には、筋肉痛みたいに治ってくれてたらいいけど」


 冷蔵庫の前に戻り、揺らぎをくぐる。台所の光が目に入る。


 影真はメモ帳を取り出し、今日気づいたことを書き留めた。


 強くなりたいと望むと吸収される。一日の限界はおそらく十個前後。体力を消費する。効果はまだ不明。


 誰かに見せるためではない。自分の頭を整理するためだけの記録だった。


 その夜、影真はいつもより早くに深いに眠りについた。




最後までお付き合いありがとうございました。

ゆる~く更新出来たらと思ってます。

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