怪異相談室⑩ ほほえみ:大勢の人に見られて恥ずかしい
世界中の視線を浴び続けた“ほほえみ”が、
ほんの少しだけ疲れてしまった夜。
止まっていた時間が、少しだけ動き出す相談室。
相談:大勢の人に見られて恥ずかしい。
ぼんやりと四角い輪郭を持つ白い光が、ふわりと浮かんでいる。
どこから見ても目が合うような気がする。
座敷童子:
「……え?絵?人の顔?」
口裂け女:
「幽霊さんの知り合い?」
幽霊:
ゆらりと指♡(違うらしい)
神様:
「付喪神じゃな。長く大切にされ、長く“見られた”ものほど魂は濃くなる」
呪いの人形:
「…”もの”なのに魂が宿るの?」
皆、一斉に呪いの人形を見る。
九尾:
「お主が言うか。
それにしても“ほほえみ”か。
注目されるのは当然であろう」
呪いの人形:
「…どのくらい注目されてるの?」
白い光、ふるふる震える。
九尾:
「世界中からだ」
座敷童子:
「すごーい!」
幽霊:
指♡!(驚き)
口裂け女:
「観光名所だよね~。
フラッシュ、視線、考察、陰謀論……くちゅん!」
白い光、さらに縮む。
神様:
「……あの微笑みじゃな」
九尾:
「数百年、見られ続けている、あれか」
ほほえみ:
「言わないで……」
口裂け女:
「四六時中“何を考えてるの?”って言われるの、つらいよね」
ほほえみ:
「……そうなの。
誰も“今の私”を見てくれないの。
昔の私だけを永遠に見られてる気がして…」
呪いの人形:
「…分かる…かも…」
神様:
「お主は曖昧であるがゆえに永遠なのじゃ」
九尾:
「だが本人は“永遠の考察対象”は嫌、と」
呪いの人形:
「…つまり“世界遺産級の注目をどうにかしたい”?」
ほほえみ:
「もっと……普通に笑ってただけなのに……」
ほほえみは小さく首を振った。
座敷童子:
「え、あれ普通なの!?」
口裂け女:
「普通なのにすごいって、逆に才能」
幽霊:
指♡指♡(かわいい、綺麗)
座敷童子:
「じゃあ、たまに怒ってみたら?」
口裂け女:
「キレ顔も見たい~」
ほほえみ:
「やだっ!!」
座敷童子:
「じゃあ真顔は?」
呪いの人形:
「…存在意義が…」
数日後——
“ほほえまない”絵画、爆誕。
・考察不能
・意味なし
・深読み不可
ほほえみ:
「……あれ~?……」
呪いの人形:
「…ただの“ちょっと優しい顔”扱いされてる…」
口裂け女:
「逆に寂しくない?」
ほほえみ:
……しゅん。
「……ちょっとだけ……」
神様:
「ふむ……お主はの、
“見られることで完成する”存在なのじゃ」
九尾:
「芸術品とは因果なものだな」
幽霊、そっと鏡を差し出す。
ほほえみ、自分を見る。
ほんの少しだけ、
本当に、ほんの少しだけ、柔らかく変わる。
止まっていた時間が、ほんの一瞬だけ動いたように。
次話:
2026/6/1 20:00に更新します




