表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不器用な怪異たちシリーズ  作者: 瀬戸 陽子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

怪異相談室⑦ 子どもが泣くと悲しい

怖がらせるために来るはずのなまはげが、

「子どもが泣くと悲しい」とこぼす夜。

優しさと役目の間で揺れる来訪神のお話です。

相談:子どもが泣くと悲しくなります


座敷童子:

「赤鬼さんだっ♪」


なまはげ:

「……ひとつ申しておきたいことがあるべ」


座敷童子:

「いきなり?」


なまはげ:

「よく言われるんだど……

俺は鬼ではねぇ」


幽霊:

指♡?(えっ?)


座敷童子:

「えっ?でも赤い顔して角の生えてるよ?」


呪いの人形:

「……包丁…持ってる…」


なまはげ:

「これは“装束”だべ。仮装みてぇなもんだ」


神様:

「ほっほっほ。来訪神じゃよ。ワシと同じじゃな」


幽霊:

指♡?…指♡!(えっ?…えっ!)


なまはげ:

「お久しゅうございます、神様。

俺ぁ年の瀬に家々を巡り、怠け心を戒め、福を授ける者だ。

……それなのに鬼扱いとは、さすがに心外だべよ」


座敷童子:

「でも“泣く子はいねが〜”って叫ぶよね」


なまはげ:

「あれは“しつけ”だ。教育的指導ってやつだべ」


座敷童子:

「包丁持ってるのに?」


なまはげ:

「いや……まぁ……そういうもんなんだど」


呪いの人形:

「…誰を呪ってるの?」


なまはげ:

「呪具じゃねぇ。厄を払うための道具だべ。

……と、話が逸れたな。

子どもが泣く顔を見ると、胸がぎゅっとすんだよ」


座敷童子:

「じゃあ、なんで脅かして泣かせるの?」


呪いの人形:

「…親より怖い存在を示し…

親が守ることで安心を与え…

反省を促す…」


神様:

「確かにつらい役回りじゃのう」


幽霊:

指♡…(うん…)


なまはげ:

「そうなんだべ。

 だども最近の子どもは、泣かねぇんだよ」


座敷童子:

「泣かないならそれでいいじゃん」


呪いの人形:

「…泣く子を連れ去るフリ…

 それが存在意義…」


なまはげ:

「よく分かってるな。

 だども今は“なまはげキター!”って喜ばれるんだべよ」


神様:

「時代じゃな」


なまはげ:

「だから親族が俺以上に驚かすんだ。

“ここに隠れてろ”って言っておきながら、俺に隠れ場所を教えてくるんだべ」


座敷童子:

「でもさ」


なまはげ:

「うむ?」


座敷童子:

「“泣く”って、怖くて泣く必要はなくない?」


なまはげ:

「……なんだと?」


呪いの人形:

「…感情が揺れれば涙は出る…」


幽霊:

指♡(いいね!)


神様:

「“泣く”とは魂が動いた証よ」


なまはげ:

「いや、俺の役目は“怖がらせる”ことでは……」


座敷童子:

「じゃあさ、

“泣く子はいねぇが〜”って言ったあと、

全力で変顔すればいいじゃん」


なまはげ:

「……はぁ?」


呪いの人形:

「…赤鬼フェイスからの全力変顔…」


幽霊:

震えながら指♡(ウケてるらしい)


神様:

「福笑いの概念を内包しておるな」


なまはげ:

「内包すんなべ!」


座敷童子:

「怖いと思ってたのに急に面白い。

子どもも、お腹痛くなるまで笑ってくれるよ!」


呪いの人形:

「…笑い泣き達成…」


なまはげ:

「それじゃ芸人だべよ……」


神様:

「進化形“エンタメ型”来訪神じゃな」


なまはげ:

「勝手に分類すんなって」


座敷童子:

「しかも最後に“今年もちゃんとやれよ〜”って優しく言う」


呪いの人形:

「…ギャップ…萌え…(*´ω`*)」


なまはげ:

「俺は萌えじゃねぇ!」


神様:

「泣かせるのではなく、泣ける存在になればよい」


(少し静かになる)


なまはげ:

「……変顔の練習、いるべか?」


幽霊:

(鏡差し出す)


なまはげ:

「なんで用意してんだよ!

……まぁ、考えとくべ」


なまはげ:

「……実はもう一つ相談があるんだど」


(空気が引き締まる)


「俺ぁ……酒が飲めねぇんだ」


全員:

「え?」


神様:

「なまはげは家に迎えられ、もてなしを受ける。

酒を受けるのは儀礼の一部じゃ」


呪いの人形:

「…断っちゃだめ…」


神様:

「しかも何軒も回るのじゃ」


なまはげ:

「体質的に無理なんだべ。

一口で真っ赤、二口で視界が歪む」


座敷童子:

「…神様なのに?」


なまはげ:

「来訪神とアルコール分解酵素は関係ねぇべよ」


呪いの人形:

「…神様は基本お酒好き…」


ちらりと神様を見る。


神様:

「……否定はできんのぅ」


呪いの人形:

「…でも、なまはげ酒豪じゃなきゃ…」


なまはげ:

「それは人間側の都合だべ。

俺の本質は“厄祓い”。

飲酒量じゃねぇ」


神様:

「象徴としての酒だからのぅ…」


なまはげ:

「象徴が強すぎんだよ……」


座敷童子:

「お酒飲むと、どうなるの?」


なまはげ:

「頭が回らなくなってな、

“泣く子はどちらにおられますか〜”って言うらしいんだべ。

覚えてねぇけど」


なまはげ:

「そんで、

“親の言うこと聞くんだぞ〜”って涙ぐむらしい」


座敷童子:

「優しい〜〜」


呪いの人形:

「…存在意義の崩壊…」


(静寂)


座敷童子:

「でも最後にはみんな笑ってるんでしょ?

 いいことだと思うな!」


幽霊:

指♡指♡(うんうん)


呪いの人形:

「…そうなの…かな…」


なまはげ:

「だから、どうしたもんかと……」


神様:

「来訪神の本質は“交流”じゃ。

恐怖は手段に過ぎぬ。

杯を交わし、言葉を交わすことこそ祓い」


なまはげ:

「……」


神様:

「泣かなくなったのは、

お前が“畏れ”から“親しみ”へ変わったからかもしれん」


座敷童子:

「じゃあ問題ないね!」


呪いの人形:

「…時代に合わせて儀式を変えたの…(驚愕)」


なまはげ:

「怖がらせたいわけじゃねぇ。

怠け心を剥ぎ取りてぇだけだべ」


呪いの人形:

「……“なまはげ”。

怠けて囲炉裏に当たりすぎてできる“なもみ”を剥ぐって意味……」


なまはげ:

「おめぇ、ほんっと物知りだなぁ」


関心したように目が大きく開き、白黒させた。


座敷童子:

「あ、今の顔ちょっと面白い!」


なまはげ:

「いや、今のは変顔じゃ……まぁいいべ。

そして、俺ぁ鬼じゃねぇ。

戒めと祝福のために在る存在だべ」


座敷童子:

「でもお酒飲めないんだよね」


なまはげ:

「そこは言うな!」


幽霊:

(おちょこ差し出す)


なまはげ:

「だから無理だって言ってるべよ!!」


神様:

「ではこうしよう。

酒は象徴。象徴は変化する。

来年からは“杯”を交わすことを重んじよ。

中身は……薄めてもよい」


呪いの人形:

「…“祓いハイボール(0%)”…?」


神様:

「……ありじゃな」


座敷童子:

「良かったね!神様公認だよ!」


なまはげ:

「それで厄祓いできる…のか?」


神様:

「……目に見える形では無い。本質を捉えるのじゃ。

お前は鬼ではない。

恐怖の化身でもない。

“迎えられる存在”なのじゃ」


(静かになる)


座敷童子:

「ねぇ…最近の子どもが泣かないのって、

“怖くないから”じゃなくて、

“信じてるから”なんじゃない?」


呪いの人形:

「…福、ちゃんと届けてくれるって…」


座敷童子:

「だって、なまはげさんとお話しても全然怖くないもん」


なまはげ:

「……」

(無理やり怖がらせなくてもいいのか…)


呪いの人形:

「…で、今夜はどうするの?」


なまはげ:

「……一口だけだべよ」


わずか一滴、口をつけた瞬間、

もう目元に涙が溜まっている。


全員:

「弱い」


なまはげ:

「俺にアルハラすんなぁ……」


次話:【本編】Ep.22 陰陽師、深夜の見廻り

2026/5/08 20:00に更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ