【本編】Ep.17 星の音
座敷童子の過去と、なぎの優しさが重なる夜。
小さな“星の音”が響く章です。
1. なぎの家
座敷童子の声が止まり、部屋に沈黙が降りた。
スマホから流れるギターの音が、今は少しだけ寂しげに響いている。
薄い光がカーテンの隙間から差し込み、埃がゆっくりと揺れていた。
なぎは本を閉じたまま、しばらくの間、何も言わなかった。
部屋の空気は少し冷たく、コーヒーの残り香がふわりと漂っている。
おばあさんの優しい手。
壊されていく家。
独りで彷徨った夕暮れ。
語られた言葉と一緒に、胸の奥でその音がかすかに震えていた。
座敷童子:
「……だから、なぎの声を聞いたとき、
おばあさんと同じくらい……あったかいなって、思ったの」
言葉にした瞬間、
胸の奥で固まっていた何かが、ゆっくりほどける。
ちょうどそのとき、スマホから流れていた曲が静かに終わった。
余韻だけが、薄く部屋に残る。
袖の先をぎゅっと握り、座敷童子は俯く。
その指先に、微かな温度差が伝わるようだった。
呪いの人形は何も言わず、ずっと目を伏せていた。
布がかすかに揺れ、存在だけがそこにある。
その沈黙は、責めるためではなく、
ただ静かに寄り添うためのものだった。
2. なぎの不器用な肯定
なぎはゆっくりと息を吐き、視線を宙に泳がせた。
窓の外からは遠く車の音がかすかに届き、夜の空気が静かに流れ込んでくる。
なぎ:
「……そっか。
ここは狭いけど……いいの?」
座敷童子:
「うん。
なぎがいる、”ここ”がいい」
迷いのない声だった。
なぎは少しだけ照れくさそうに首をかく。
その仕草に、部屋の空気がふっと和らぐ。
なぎ:
「……まぁ、いっか。
それじゃ、たまには金平糖も買ってくるね」
その言葉が落ちた瞬間、
胸の奥で、あの音が鳴った。
——カラリ。
なくなった家で最後に響いた、
小さな星の粒が触れ合う、あの金平糖の音。
座敷童子が顔を上げ、目を輝かせる。
座敷童子:
「……いいの!? ほんとに?」
なぎ:
「うん。駄菓子屋さんにあると思うよ」
座敷童子:
「ラムネも欲しい!」
それを聞いたなぎは
大きな声を出して笑っていた。
笑い声が小さく部屋の角に跳ね返り、温度が少し上がったように感じられた。
呪いの人形:
「…良かったね…」
布の端が、ほんのわずかに揺れた。
3. 溶けていく夜
なぎが立ち上がり、寝る準備を始める。
いつも通りの動作。
けれど、その足取りは少しだけ優しい。
歯ブラシの擦れる音。
水の流れる音。
パジャマの布がこすれる小さな音。
生活の音が、静かに部屋を満たしていく。
あの家から消えてしまった音とは違う。
ここには、続いていく音がある。
座敷童子:
「……ありがとう、なぎ」
なぎ:
「こちらこそ、だよ」
なぎが電気を消すと、部屋には暗闇と、街灯の薄明かりだけが残った。
でも、その暗闇はもう冷たくなかった。
座敷童子の輪郭は、
月光を浴びて今までで一番はっきりと、柔らかな白に染まっていた。
その白は、部屋の空気をほんの少しだけ震わせるように見えた。
4. 共鳴する心
隣の部屋の隅でふわりと冷たい風が揺れた。
風は小さな紙片をそっと動かし、静かな合図のように聞こえた。
神様は目を閉じ、静かに耳を傾けていた。
口裂け女は涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
涙の光が、薄暗い部屋の中で小さく反射している。
口裂け女:
「あんなに無邪気なのに、そんなつらい過去があったなんて…」
九尾:
「…その無邪気さに救われたことは
…その…否定はできぬ」
幽霊:
すっ……指♡(一件落着!)
風は、もう冷たくなかった。
次話:【本編】Ep.18 花粉地獄の連鎖
2026/2/24 20:00に更新します




