【本編】Ep.11 かすかな声
体調を崩したなぎのそばで、座敷童子は初めて“できること”を探します。
静かな夜に生まれた、かすかな声のお話。
1. かすかな声
夜の気配がゆっくり降りてきて、なぎの寝息だけが部屋の静けさを揺らしていた。
座敷童子は枕元にそっと座る。昨日より輪郭が濃く、白い袖が月明かりを淡く返す。
座敷童子:
「……なぎ……」
輪郭を帯びたかすかな声が、夜気に触れて震えた。
なぎ:
「……ん……?」
寝返りを打つ気配。眉がわずかに動く。
座敷童子:
「……きこえた……?」
返事はない。けれど呼吸が少し変わり、胸がふわっと温かくなる。
2. なぎの体調
翌日。なぎの顔色は少し悪く、額に汗がにじんでいた。
なぎは布団を握る指に力が入らず、しばらく目を閉じたまま、浅い呼吸が続いていた。
なぎ:
「……寒い……」
座敷童子はそっと近づく。姿が薄くなったり濃くなったり、迷うように揺れる。
座敷童子:
「……なぎ……?」
なぎがふと顔を上げる。なぎのぼんやりとした目が合いかけた瞬間、座敷童子はドキリとして薄くなる。
3. 小さな手でできること
夜。
なぎは布団にくるまり、熱に浮かされている。
座敷童子は部屋の隅でそわそわし、迷いながらも台所へふわりと移動する。
椅子に登り、タオルを引っ張り、蛇口をひねる。
水がタオルに染みる音が、夜の静けさに小さく響いた。
枕元に戻り、そっとタオルを額に置く。ずれた瞬間、なぎが目を開きかける。
そのままタオルを不器用に直す。
座敷童子:
「……あ……ずれた……」
なぎ:
「……ん……?」
「……ひんやり……」
胸がぽっと温かくなる。布の擦れる音が、静かな夜に溶けていく。
4. 夜のひそひそ話
なぎが落ち着いたあと。部屋の隅で、布の擦れる音がそっと響く。
呪いの人形:
「……がんばったね…」
座敷童子:
「うん」
呪いの人形:
「…でも、見られること怖くないの?追い出されるかも…」
座敷童子:
「なぎが、苦しそうだった」
人形は大きく息を吐く。
呪いの人形:
「…ほんとうにあなたって…
…でも、それでいいのかも…」
座敷童子:
「……よかった……?」
ふわりと空気が揺れる。月明かりの中に、神様の影が立ち上がった。
神様:
「心配じゃった。なぎの気配が弱っておったからな。
…だが、もう大丈夫じゃろ。お主が冷やしてやったのじゃからな」
座敷童子は袖をぎゅっと握る。
座敷童子:
「うん!」
5. 小さな願いの夜
なぎが眠りについたあと。座敷童子はそっと呟く。
座敷童子:
「なぎ、早く元気になってね……」
小さな決意が混じり、白い袖が静かに揺れた。
次話:【本編】Ep.12 はじめての返事
2026/2/02 20:00に更新します




