表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不器用な怪異たちシリーズ  作者: 瀬戸 陽子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/33

【本編】Ep.10 にじむ気配

なぎのそばで過ごす日々の中で、座敷童子の姿は少しずつ濃くなっていきます。

その小さな変化が、静かに部屋の空気を揺らします。

Ep.10 にじむ気配


1. 静かな朝の揺れ


朝の光が、まだ眠りの残る部屋にそっと降りてくる。カーテン越しの金色が、空気の粒をゆっくり染めていく。

なぎはいつものようにパンを焼き、コーヒーを淹れる。

その小さな音のひとつひとつが、座敷童子の胸に静かに沁み込んだ。


座敷童子:

「今日も、いい音……」


胸の奥に安心がふわりと広がる。

それに呼応するように、白い袖の縁が水彩のように淡くにじんだ。


なぎ:

「……ん?」


振り返る気配に、座敷童子はそっと姿を薄くする。

そのとき、袖先が小さく震え、肩がほんの少し引けた。


なぎはパンを皿に移す手を、ほんの一瞬だけ止めた。

そのまま、部屋の隅へ視線がふっと戻る。


なぎ:

「……最近、白い影がよく見える気がするなぁ」


座敷童子:

「……っ」


胸の奥に小さな灯がぽっとともった。


2. 感情の波紋


夕方。

部屋に流れ込む音楽が、空気をやわらかく震わせる。


座敷童子はその音に吸い寄せられるように近づいた。


座敷童子:

「……きれい……!」


跳ねる音に合わせて胸がふわっと広がり、

小さな喜びがじんわり染みていく。


白い袖が、光を受けてふわりと揺れた。


なぎ:

「……あれ?」


視界の端で白い影が揺れる。なぎは目をこすり、もう一度だけ同じ場所を見た。


ほんの短い沈黙。視線が柔らかく揺れる。


なぎ:

「……まぁ、いっか」


座敷童子は胸の中で小さな弾みを感じた。

その言葉が、胸の奥にそっと落ちていく。


3. にじむ姿と“声”


夜。なぎの寝息が、静まり返った部屋にゆっくり広がる。


音楽の残り香。なぎの匂い。今日の笑い声の気配。スマホから流れる穏やかなメロディ。


それらが重なり、座敷童子の姿は自然と濃くなっていく。白い袖、淡い輪郭、霧のような影。


座敷童子:

「ここ、あったかい……」


かすかににじむような声が空気を震わせた。


なぎ:

「……ん……?」


寝ぼけた声に、座敷童子はびくっとする。だが、逃げる代わりにそっと身を寄せることを選んだ。


4. 夜のひそひそ話


部屋の隅で、小さな影がそっと動く。


呪いの人形:

「……今日、なぎに見られてたよね?」


座敷童子:

「そう……?」


人形は隣にちょこんと座る。


呪いの人形:

「…多分、声も聞こえてたよ。

 でも“気のせいかな”って顔してた…」


座敷童子:

「そうなんだ!」


呪いの人形:

「…なんで嬉しそうなの…?

 でも、あの人なら気にしないのかな…」


座敷童子の胸の奥がぽっと温かくなる。目を細め、そっと笑うように袖を揺らした。


座敷童子:

「ここ、いいよね。落ち着くし」


呪いの人形:

「…きっとそれでいいのかな…多分…」


白い袖がふわりと揺れた。


5. 小さな決意


なぎの寝顔を見つめながら、座敷童子はそっと呟く。


座敷童子:

「もっとお話したいな…」


声は少しだけ輪郭を持ち、窓の光がその縁を淡く照らす。

白い影がそっと寄り添う。


夜の静けさの中で、座敷童子の姿は今まででいちばんはっきりしていた。

次話:【本編】Ep.11 かすかな声

2026/4/01 20:00に更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ