表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/122

第百七章 迷い

「お疲れ王牙っち。見てたよー」

 ここは居城。占拠して改築中だ。俺達は警戒兼魔素回復中だ。

 そこにパルテがやってくる。

「何か面白い物でも見たのか?」

「見えたも何もアリエスっちがガチギレしてたじゃない。まったく、いらない事してくれるね王牙っち」

 アドナキエルの一件か。それほど目立っていたのか。

「すまん。俺の意識が足りていなかった。アドナキエルとは因縁があってな。ジンバの体の元の持ち主だ。聖女でありながら魔物に堕ちてまで俺を討ちに来た猛者だ。そして人間への転生が成功した。そいつに肩入れしてしまってな」

「そっちじゃないよ。あーし達が居城の解除をしている所に投げ込んできたって意味。人間なんていないと思ったら聖女が飛んでくるじゃん? 見てたら王牙っちが追撃で人間投げてくるし、何かと思ったわけ」

「それはすまなかったな。誰もいない所に投げたつもりだった」

「ホントにそれだけみたいだね。何か言いたい事でもあるのかと思ったわけ」

「何をだ?」

「居城の仕掛けを解除してるあーしらが、逆に何かを仕掛けているように見えたんじゃないかってね。あの会話の後だったじゃん? しかもあの人間喋るじゃん? 王牙っちの差し金かと思ったよ?」

「それはないな。逆に魔物の気配などしなかったぞ。あそこにお前が居たのか?」

「その通りさね。魔物の気配を遮断して爆弾解除中ってわけ。で、アドナキエルだっけ? なんか意味深な事色々言ってたけどなんなの?」

「ああ。パルテになら話せるな。アドナキエルは転生についてリブラの恩恵を受けている。聖女の力を持った王子。聖女の栄光だけでは人間社会を変えられない。だからこその性別と家柄なのだろうな。本人は未だリブラの事を思い出せていないようだがな」

「そりゃアリエスっちが飛んでくるわけだ」

「だが背信ではないぞ。あれはリブラへの礼だ。レオニスの件でな。魔物堕ちした聖女が聖女の力で討たれてはリブラの信用が地に落ちるだろう。その誤解を解いた。それが人間の社会を変える方向へと話が動いたのだ」

「ふ~ん。まあ無駄だと思うけどね」

「俺もそうは思うが意気投合してしまってな。だが次は容赦なしだ。リブラとも話はついている。俺を退けられないようなら人間社会を変えられないとな」

「違う違う。王牙っちと話が通じるような奴はこっちに来るって話さね。王牙っちと話が通じている時点で人間社会でやっていけるわけないじゃん? 多分そいつもこっちに来るよ。あーしの話した感じじゃ聖女なら良いけど王族は無理っしょ。帝王学のての字もない。第一王子だったら殺されてるよ。夢見がちなお姫様。TS男の子じゃやっていけない。アドナキエルを助けたのは正解だよ王牙っち。魔物への背信なんかじゃない。どう転ぶかはわからないけどねー」

「いや、まて、だが、う~ん、そうだな、・・・ぐうの音も出ないほどの正論パンチだ。俺も転生前に奴をこちらに誘ったぐらいだ」

「アッハハハ! 誘っちゃったんだ、ウケル。あーしも王牙っちとの付き合いは長いからね。その顔見ただけでスッとしたわ~」

「・・・気は済んだか」

「勿論さね! あー、王牙っちを疑ってたあーしがバッッッカみたい。アンタとつるんで良かったよ」

「俺の何を疑う」

「違う違う。王牙っちがあーしを疑ってると思ったのさ。疑心暗鬼も行きすぎさね。ま、こっちは任せておきなよ。王牙っちのためにとっておきも出しちゃうからさ。楽しみにしてなよー」

 なるほど。俺への疑いではなく、俺がパルテの背信を疑っているかの確認か。

 奴も転生者と聞いていたが転生後の話を聞いた事がない。魔王種とも繋がりがあるように見えない。余程居心地が悪かったのだろうな。そのぶん魔物との繋がりは強い。

 パルテに関しては余計な勘繰りが不信を招く。何もない藪を突いて棘に刺さるようなものだ。

 それにしても奴のとっておきか。これは楽しみだな。


ーーー


「お父様が相談なんてめずらしい。・・・私が知らなければならない事でも出来たの?」

 ここは居城の外。いつぞやの泉だ。以前とは違って水の流れが感じられる。結界のスクリーン機能は停止しているようだな。

 ここにレオニスを連れ出しのは他でもない俺の迷いを聞くためだ。

「そういう事ではない。少し迷いを抱えていてな。お前の意見を聞きたい。お前の立場での答え。それを参考にしたいのだ。お前にまったく関係のない事ではないが、それは一度忘れて欲しい」

「わかったわ。それで?」

「変な質問だが、もしお前が全知全能の神だとして、お前が俺を操っている可能性があるとしよう。外から見るとそう見えるらしい。魔物の俺が聖女を娘として囲うのがな。俺や俺達がそう思っているわけではないが、今回の件と似たような話題でな。流用させてもらった」

「つまり、私がお父様を操れる存在という事ね?」

 レオニスの顔を見ればこれがレオーネの話題だとバレているな。

「名前は出さないでくれ。用心だ」

「わかった。・・・でもそうね。私がお父様を操ったら、それこそここでの出来事を忘れたの? あれは私の本心には見えなかった?」

 ここで俺はレオニスに本気の告白を受け、親としてそれを断った。

「もっと大きな流れだな。感情の爆発ではなく、計画的な視点だ。最初にレオの体に俺を取り込んだ黒幕がレオニス。お前だとしてどうだ?」

「私が黒幕だとしたら・・・。その目的は?」

「そうだな。その目的からだな。だれか、誰もいい、仮にスコルピィ、恋人の命を救うためという展開で頼む」

「・・・その為に私は魔物の王牙を取り込んで、魔王の心臓に必要な元魔王のパルテ、聖女の因子を持つレオーネ、これでこの体の完成。私は黒幕の無力な人間。目的は恋人を救う事。お父様の信用を得た後は、レオーネを暴走させて、お父様とお母様を両親として取り込む。・・・お父様? これどこに恋人を救う要素があるの?」

「そうなのだ。誰かを守るためといって誰を守るのか。救うと言って誰が救えるのか。この一連の行動で誰が何を得られるのか。強いて言えば黒幕であるレオニスが家族を得る物語だが、それについてはどうだ?」

「相当に煮詰まってるわねお父様。それが私の目的ならもう終わっているでしょう。ここから誰かを救うために私がすることは魔物の勝利でハッピーエンドじゃないの? スコルピィという恋人の魔物の統括者を救えるわけだし」

「・・・そうだな。やはり目的が違うのか」

「恋人を救う方法があるんじゃないの? 人間の結界の塔を全て破壊すると恋人が救われるとか? もしくは救ってくれる何かが来るとか?」

 レオニスの言葉に俺は稲妻が落ちたかのような衝撃を受けた。

 そうだ。何故気付かなかった。レオーネ程の物と取引するなら他世界の神々であってもおかしくない。人質を取られているにしては焦燥感がなかった。

 何かの願いを叶えるとしたら・・・。

「思い人の復活か」

 俺は思わず口にしてしまった。レオニスが不思議そうに聞き返してくる。

「それは神でも出来るの?」

「どうだろうな。神であれば可能なのかどうかもだな。神の代弁者であるリブラには、そもそも奴は魂の循環を重視している。それを曲げて魂の復活はなさそうだ。だがこの世界の外からならばあるいは・・・」

 俺の顔を見て納得顔のレオニスが言葉を返す。

「答えが出たみたいね。でもそんなお伽噺が実現できるなら何でもありじゃない」

「それもそうだな。それにしてもレオニス、実はお前が何でも願いを叶えられる外世界の神だとしたらどうだ?」

 俺は冗談めかしてレオニスに問う。レオニスもそれに乗ってくる。

「そうね。まずはこの無礼な魔物を手打ちかしら?」

「それは怖いな。外世界の神よ。何でもするから許してくれ」

 茶化す俺にレオニスの呆れ顔が返ってくる。

「・・・あのねお父様。この話で一番それを疑われるのはお父様でしょ? 異世界転生者で私を娘にした魔物。お父様こそ私を操っているんじゃないの? 私の魂はお父様の中にあるわけでしょ」

 その発想はなかった。

「確かにそうだな。異世界転生者で世界の改変を使え、お前を手に入れるために一芝居か。よほど俺はレオニス、お前に執着していると見える」

 俺の言葉が気に障ったかレオニスはむっとしながら返す。

「む。お父様? 本当に私を操ってないの? 証拠は?」

「お前のインナースペースに土足で入ればバレる。何よりもそれであれば・・・、もっと子犬の様に従順で成長しない美少女のままのお前を求めているだろう。成長を見守るのではわざわざ操る意味がない」

「む。私がお父様の望んだ美少女ではないの?」

「違うな。お前は俺を超えていく。俺の内から飛び出していく。それが寂しくもあり頼もしくもある。これを操って実現は出来まい」

「私がお父様を操るなら・・・、私は何も望まない。お父様はお父様で居て欲しい。それが望み。お父様こそ私の求める声に、救いに応えて現れた外世界の神様なんじゃないの?  欲しい願いは全て叶った気がするわ」

 なるほど、俺がこの世界の神に請われて救いに来たか。

「それは確かに良いシチュエーションだな。そしてこれまでの黒幕が実は俺で自作自演の二重人格だ。もう一人の俺が救いたいのがレオニスだとすると劇的に良くなるな。親でありながら、もう一つの本心は娘を異性として愛している。最後は娘の成長に涙して消えるエンドだ」

 俺がうんうんと頷いているとレオニスが爆弾発言をかましてくる。

「お父様。私が妊娠したいって言ったら?」

「・・・それは、傷つけられたと取って良いのか?」

「そうじゃないわ。今の顔は娘を見る顔じゃなかったけど?」

「寝耳に水だからな。リンセスが大勢産んでいるからといってお前たちまで平気だという訳ではないな。アリエスはこの戦いが終わった後だろうな。お前はまだ式すら上げていないだろう」

「うん。この先の事を考えていたわ。私の望みの先。この戦いが終わって、アリエス御姉様が人々を導いて、魔物でも人でもない私は、本当に何なのか。お父様は知っているんでしょう?」

「確証ではないがお前が中心地にいるのは間違いない様だ。だが何故なのか。それこそお前が全知全能の力が使えるわけではあるまい?」

「・・・私は鍵のような物なの?」

「鍵か本体か。どうやらレオニス、お前を生贄に捧げれば邪神大復活などという方法は使え無い様だ。レオニスの信用がいる。これがヒントであり朗報でもある。これも確定ではないがな。だが傷つける方向では無い様だ。あくまで一例の話だがな」

「お父様? もう全て話してしまってもいいと思うのだけど?」

「確証がないのだ。何一つとしてな。これがブラフでお前が巻き込まれただけなら御の字だ。いっその事超能力でも使えないのか?」

「残念ながらただの人間よ。魔王の心臓と施された体。それを鞘にした神呪。それに与えられた聖女の因子。これら一つ一つは人間でも実現できるわ。そしてこれが集まったのはどうみても私の力や意思ではないわね。これで無関係とは私でも言えないわ。でも集めた存在は思惑があってのことでしょうね」

 俺は目を閉じ今までの事をまとめる。

「それは願いの為か。思い人の復活。神でさえ成し遂げられるかわからん難事。それに他世界の神々と、何故かレオニスが出てくる。これぐらいか。すまないなレオニス。俺の相談の筈がお前の方向に話が向かってしまった」


「結局何が聞きたかったのお父様?」

「お前をここに巻き込んだ者の思惑だ。そいつを信用していいのか迷っていた所だ。状況は相変わらず不穏だが、そいつの言動や行動が信用に足る。敵とは思えん。それが精神操作による誤認だとも思えん。実際命を救われる場面もあった。やろうと思えばそいつは俺を殺せる立ち位置に居た。それにも関わらずだ。俺は何かを見誤っているのではないか、とな」

「・・・あえてその名は口にしないけど、私も信用している。あれが演技だとは思えないし、不自然な所も見受けられない。あれが全て私を鍵にするための行動だとは思えないわ。私は、いえ私も信用してしまうと思う」

 レオニスの笑顔に、俺もフッと力を抜く。

「そうだな。俺もそれを聞きたかった。この状況にも関わらず信用したいと思える男だ。味方に欲しい。それが俺の本音だ。助かったレオニス。この借りは常に心に留めておこう」

「ええ。お父様がそこまで入れ込むなんて以外。いえ、初めてじゃないの?」

「何を言うか。異世界の俺の国では男が男に惚れるなど当たり前だ。それほどまでに強固な繋がりがある」

「え、と、お父様? 今のは聞かなかった方が良いかしら?」

「何もやましい所はないぞ。リンセスの影響を受けすぎだ。しかしそうなると奴を手に入れるためにこちらも動かなくてはな。それこそ奴は名馬まで兼ねている」

「・・・お父様って本当に欲しいものがある時ってわかりやすいわよね。私もそうやすやすとは渡さないけど。それこそ鍵をチラつけせて引き入れる事も出来るんでしょう?」

「汚いぞレオニス!」

「お父様も同じことをしていたでしょう? お互い様。ジンバ君は渡さない」


「わたくしがどうかしたのですか?」

 そこに渦中のTSメイドの人馬ジンバが現れた。

「丁度いい。お前の話をしていたのだ。お前の望み、魔物としての原動力に付いて気になってな。俺はこの世界での戦い、ひいてはこの世界を守ることにある。レオニスはここでの生き方だ。ジンバ、お前はなんだ?」

「わたくしは前から言っているでしょう。レオニス様のメイドとして庇護下に入る事です。そのための修行も欠かせません」

 レオニスの方を見ると微妙な笑顔が返ってくる。修業はしているのだろう。だが魔物に人間の世話が出来る筈もない。

「ジンバよ。その無駄な努力よりもお前のその弓裁きを見ればどちらの庇護に入るかは明白だ。俺の所に来い。お前の本当の望みを言ってみろ。俺ならば叶えれるかもしれんぞ?」

「ジンバくん。この世界は戦いばかりじゃないもの。終わる戦いよりもこれから始まる日常に私と一緒に行こう♡」

「わたくしの思いは一つです。レオニス様。わたくしはあなたの・・・」

 俺はジンバの台詞を遮る。

「良いのかジンバ。俺が居なくなればその噛み癖と蹴り癖は解消するのか?」

 俺はとっておきを出す。案の定慌てだすジンバ。

「待ってください! それはレオニス様の前では・・・!」

「ジンバくん? どういう事? もう治ったって言ってたよね?」

 レオニスが笑顔でジンバに迫るが、もう俺はジンバの助け舟を用意している。

「どうもこうもない。俺が肩代わりしていただけだ。ジンバは既に俺のモノだ。気付くのか遅かったな愛娘よ」

 それをジンバが止めに入る。

「お待ちください! ならばレオニス様、ほんの少し、ほんの少しで良いのです。わたくしにレオニス様の袖の端だけでも・・・」

 ククク、やはり噛み癖は直らんか。業を煮やしたレオニスが怒号を放つ。

「お父様!!! 出番よ!!!」

「任せろぉぉぉ!!!」

 レオニスの言葉で俺はジンバを抱え上げる。

「何故ですかレオニス様ァァァ!!!」

「ジンバクン♡ もっと男になって帰って来てね♡」

「さあ、ご主人様の励ましだぞジンバ。これから共に訓練に励もうではないか。お前の力は知っているぞ。これから先の聖女の戦いからも逃がさんからな!!!」

「わ、わたくしはァァァ!!! メイドですぅぅぅ!!!」


 こいつは、本当の本気で何が目的なのだ?

 ボロが出る処か補強されていく。

 俺を謀ってまで会いたい人物。女神と他世界の神々が必要な程の人物。これも考え過ぎか? ただ単純に亡くなった人間に会いたい。ただそれだけのことなのだろうか? 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ