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帆布に描くぎじゅつ  作者: Aa_おにぎり


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46/50

#46

日本帝国空軍 三沢空軍基地


ロシア軍による侵攻より一時間後。スクランブル発進をした戦闘機隊の後を基地の格納庫から一機の大型機が姿を現す。

西のB-36、東のTu-95と並び、日本が世界に誇る有数のレシプロ超大型爆撃機。七式超重爆撃機富嶽が三沢から離陸しようとしていた。

1947年の採用時からは翼が少し後退翼になってハードポイントが追加され、エンジンもターボプロップエンジンに換装されたりと、機影はかなり変わっているが、現役で80年近くも飛行するB-52も真っ青な運用歴を持っていた。


空軍は第二次世界大戦終結直後に陸軍・海軍の陸上航空隊を天皇大権によって編成された…用は宮家肝入りの部隊であり、その形態は英国を真似たものであった。それ故にパイロット達はその仕事に誇りを持つものが多かった。

海軍の艦載機や陸軍の一部回転翼機を残して結成当時の銀河や飛龍など、すべての陸上航空機は空軍の名の下に纏められていた。


「富嶽01より管制塔、離陸許可を」

『了解、富嶽01。滑走路01からの離陸を許可する』


エンジンが周り、超大型の爆撃機は離陸していく。中にはJDAMを多数搭載していた。






====






午後八時二三分

北海道 上渚滑町 南西十キロ地点


北海道に上陸したロシア陸軍は日本陸軍の新進気鋭の10式戦車の足止めを受けていた。

国道沿いに侵攻していたロシア軍はここまで押し戻されていた。


「畜生!日本人は平和ボケしてんじゃ無いのかよ」


上陸したロシア兵士がそう叫ぶ。横にいた護衛のT-72は轟々と燃えており、奥から自走砲の砲撃が飛んできていた。


「支援砲撃はどうなっている!」

「よ、洋上からの支援は敵空軍の熾烈な攻撃で支援は厳しい様です」


そう答えると遠くで海から空に向かって対空ミサイルの飛んで行く景色が多く見られた。恐らく、ウラジオストクから飛び立った直掩の戦闘機部隊は壊滅したと見ていいだろう。


「チッ、後退だ!」

「了解!」


するとその瞬間、彼らの前に接近していた日本軍の戦車や装甲車がまとめて引いていく。


「?」


歩兵も同様に撤退を開始しており、侵攻したロシア兵達は疑問に思っていた。


「撤退だと……?」

「隊長!これは好奇です!」


兵士の一人が退却していく戦車を見てそう話すと、隊長は考えた。


「(可笑しい、戦局は向こうのほうが優勢だったぞ)」


しかし、戦果を上げねば周りから白い目で見られるのも事実。


「よし、このまま行くぞ。総員突撃!!」

『『『『ypaaaaa!!』』』』


自動小銃片手に突撃を敢行するロシア兵達は徐々に内地に引き込まれていた。




「敵、揺動に乗りました」


無線で10式の小隊長が話すと、無線が帰ってくる。


『了解、爆撃編隊到着まで残り五分。爆撃予定範囲に注意せよ』

虎小隊(タイガー)、了解。予定地点までの後退を開始する」


ロシア軍の迎撃を行っていた第71戦車大隊は海岸線まで戦力をすり減らした所を後退し、戦線に空白を形成していた。


「急げ!JDAMにまとめて吹き飛ばされるぞ!」


随伴歩兵も慌てて距離を取って戦線を離脱していく。


明治維新以降、北の守りを担ってきた北鎮部隊こと陸軍第七師団。その新進気鋭の活躍は上陸していたロシア軍を恐れさせていた。上陸したロシア軍戦車の損害は二二両、対して守りに徹している10式の損害はわずか四両であった。


ちょうどこの頃、占守島の守備隊とも連絡が付き、千島列島のミサイルサイロから複数のミサイルが艦隊を殲滅せんと発射されていた。


「地対艦誘導弾、全弾発射!」


そして各島に配備されているミサイルサイロから発射された各誘導弾はロシア軍極東艦隊をその狙いに収めていた。




噴進弾の登場により、戦場の大きさはついに地球規模となった。大陸間弾道誘導弾なる存在も登場し、宇宙空間には軍事衛星も打ち上げられていた。


「現在の戦況は?」


東京、市ヶ谷の国防省では三軍それぞれの将官が集まって会議を開いていた。

戦後の大改革によって名を大本営から国防省と改めた日本の防衛の中枢は北海道に布告なしの奇襲を仕掛けてきたロシア軍に総軍を挙げて攻勢の準備を整えていた。


「はっ、三沢基地より離陸した第六一戦略爆撃隊は間も無く爆撃を開始します」


映像にリアルタイムの映像が映り、青い三角形の味方爆撃隊が北上していくのが見えた。


「海軍はどうなっている。第四艦隊が出ているのでは無いのか?」


草色の将官服の陸軍の一人が聞くと、紺色の海軍将官が報告する。


「単冠湾から出撃した第四艦隊は無人攻撃機を発艦…しかしその後に無人機は全て堕とされた…」

「堕とされただと?!」


顔を青ざめながら告げた言葉に灰色の空軍将官が驚いた声を出す。


「何故だ?海軍の最新鋭無人機だぞ?!」

「報告によると、奇抜な髪をした少年少女達がいきなり空に現れて無人機を落として行ったそうです…」

「…まさか…」


奇抜な髪と聞いて陸軍の士官達にある懸念が浮かんだ。そして同時に顔が青ざめた。

それは秋口に陸軍特殊部隊や他国の部隊もまとめて壊滅せしめたナチスの遺構技術の集大成にして、その力故に国防方針の転換をせざるを得なかった…それほどの脅威。


「ベースカラーか…」


栄三が溢すと、その海軍将校は小さく頷いた。それを受け、陸軍の一人が溢す。


「奴らは空をも飛べるというのか?」

「鳥人間じゃあるまい」

「だとしたらどうやって最新の無人機を落としたというのだ」


混乱している将官達に栄三が言う。


「それより、問題なのはそのベースカラーがロシア軍にいるという事実だ」


すでにベースカラーの危険性を身に沁みて経験していた陸軍は途端に険しい表情となり、痛い思いをした海軍も眉唾物だったベースカラーの実力に冷や汗を掻いていた。


「信じられないですが、彼らは無人機()()を落としたとの報告が上がっています」

「…」


通信中継兼管制を担う有人のF-35CJとの混成編成を的確に無人機だけ落とすのはまずミサイルでは不可能だ。術式で落とすには距離があるし、そもそも航空機相手に術式は効果が薄い。

術式は主に陸上での使用が前提であり、航空機を撃ち落とせる例は数少なかった。


「馬鹿な…」

「ベースカラーへの対応はどうなっている?」

「術師ならば破魔装置で抑えられるのではないか?」

「今のベースカラーの居場所は?」


そう話した時、報告官が通信を受けてそのまま読み上げた。


「現在、第六一戦略爆撃隊が攻撃を開始したと報告が上がりました」


三沢より離陸した富嶽爆撃編隊は高度一万米にて爆弾倉を開けていた。


「爆弾倉、ハッチオープン」

「了解。爆弾倉ハッチ、開きます」


富嶽はすでに旧式化が目に見えて分かっている旧式機であるが、後継の1式戦略爆撃機富士の配備が遅れ、未だ改良を重ねながら主力機としてあり続けていた。

派生系には旅客機型と輸送機型があり、そちらは現役で多数活躍していた。


「投下用意…投下!」


250kgのJDAMが投下され、地上に降り注ぐ。元々スクランブルした戦闘機達のおかげで艦隊の防空能力は大きく削がれており、爆弾投下も容易であった。飛び立った三機の富嶽は地上部隊と艦隊を狙って爆撃を敢行していた。




地上に降り注ぐ大量の爆弾を見て上陸艦隊の司令官は冷や汗をかいていた。


「なんて奴らだ…」


自国領…それも本土で戦略爆撃機を持ち出して爆撃すると言う暴挙に司令官は唖然となっていると、その爆弾は艦隊にも降り注いでいた。


「各艦回避行動!」

「ダメです!海岸に近づきすぎて満足に動けません!!」


するとウダロイ級駆逐艦に複数のJDAMが誘導されて命中し、小規模なキノコ雲を上げた。


「アドミラル・パンテーエフ、吹っ飛びました!!」

「ペレスヴェート、被害甚大!」

「第46歩兵連隊との通信途絶!」


まさか戦略爆撃機を出すとは予想外の戦略に司令官は撤退の文字すらも消えるほどの衝撃を与えていた。


「空軍はどうした?!」

「げ、現在、第23戦闘機航空連隊が日本軍と交戦。追加で第22戦闘機航空連隊が離陸したと報告があります!」

「それでは間に合わんぞ…」


そこで思考が回復してきた司令官は指示を出す。


「機関後進!現海域より脱出!」

「地上部隊は「この爆撃で残っている者などおらん」…わかりました…」


先ほどの戦略爆撃機を使ってまでの熾烈な爆撃。民間人のいない地域のみの爆撃であったが、戦線に空いた空白を埋めるべく進出中だった部隊とは全て連絡が途絶していた。


「上がった兵にも撤退命令だ」

「はっ!!」


そこで紋別より上陸する艦隊は撤退を開始していた。






====






冬の時期で、スキー客などが多数訪れる時期に北海道が戦場となり。慌てて避難する観光客達は函館空港や旭川空港、そしてこの新千歳空港などに殺到していた。


「さすがは北の成田」

「どこもかしこも避難民で溢れかえってるわね」

「ある程度予想はしていたけど…」


空港にやっとの思いで入ったはいいものの、中には大量の帰国や脱出を求める人々で溢れかえっていた。


「航空機は全便欠航ですか…」

「仕方ないわ。滑走路が戦闘機で溢れかえっている今はね」

「鉄道は?」

「無理、こっから本州に繋がる新幹線はすでに満席。通路にまで乗せているけど、それでも限界だそうよ」


本州と北海道を結ぶ青函トンネル。そこを走る新幹線や、本州と繋ぐカーフェリーなども全て寿司詰め状態であった。


「フェリーも無理そうね…」


そう言った時、空港の近くをロケット弾が飛翔し、ミサイルだと思った一部の観光客が悲鳴を上げて地面に伏せた。


「ったく、北千歳から撃っているのか」

「今のは…」

「安心しなさい。味方の長距離ロケット弾よ」


一瞬驚いていたさくらに沙耶香が答えると、それでも少し苦い表情で続けて言う。


「でも、戦場からはなるべく離れた方がいいわ。空港は真っ先に狙われるから」

「そうね。早く行きましょう」


冬歌がそう答えると、四人は荷物を持って空港を後にする。その途中、冬歌は耳にイヤホンをつけると電話をかける。


「…心陽」

『はい、お嬢様』


そこで通信が繋がると、そこで冬歌は言う。


「北海道から至急離れたいの。船を手配できる?」

『了解致しました。苫小牧にお越しください』


あらかじめ準備をしていたのだろう。北海道を出る準備は整っていた。


「あとそれから何だけど」

『御学友でありましたら、同乗は可能です』

「そう、じゃあお願いするわ」

『畏まりました。…申し訳ありません、迎えの車は周囲の渋滞の関係で』

「構わない。鉄道は幸いにも空いている」


そう言うと通信を一旦切り、話を聞いていた沙耶香が思わず溢す。


「流石は公爵の娘だ」

「あら、貴方とは格が違くて?」

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