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帆布に描くぎじゅつ  作者: Aa_おにぎり


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45/50

#45

北海道の紋別市より上陸を開始しらロシア軍。その報告は衝撃を持って東京まで届くこととなった。


「守備隊の奴ら、昼寝でもしてたのか?!」


千島列島の無数のレーダーサイトとミサイルサイロをすり抜けて直接本土に上陸してきたロシア艦隊に陸軍は大パニックに陥っていた。


「占守島守備隊に繋げろ!」

「しかし、回線が不通で…」

「構わん!出るまで叩き起こせ!」


すると一人の陸軍士官が飛び込んで報告を読み上げた。


「単冠湾基地から第四艦隊が出航しました!」

「やっとか」

「海軍め、どうしてすぐに動けんのだ」

「空軍もだ。なぜあの艦隊を見つけられなかったのだ」


そう愚痴を溢す士官に虎寺栄三は制する。


「文句を言うな。軍艦は戦車と違ってすぐには動けんよ」

「…」

「それより、状況はどうなっている」


栄三はそう聞くと、士官は北海道の地図を示しながら戦況を答えた。


「現在、紋別より上陸した敵戦車大隊は根室半島に向けて南下を開始。すでに陸軍第七師団隷下の第71戦車大隊が交戦に入ったものと思われます」

「…」


地図を見てどこか安堵した様子を見せている栄三に事情を知る彼の部下は微妙な表情を浮かべていた。


「(よりによって沙耶香がいる時に侵攻とはな…)」


神というのはよほど彼女に試練を与えたいのかと思いたくなってしまう。

栄三としては淑女として、どこかに嫁入りをさせたいと願う栄三としては彼女に軍人の道を歩ませたくなかった。それは先代とも同じ考えだった。


しかし、周りの環境は彼女を軍人の道に歩ませようとするかの如く災難続きだった。


春の帝都同時多発テロ、秋にはベースカラーの襲撃に遭い。そして冬はロシア軍の攻撃に巻き込まれるときた。


「天は娘に至難を与えたとでも言うのか?」


思わずそう溢してしまう栄三は天を仰いでしまった。






====






同じ頃、北海道では警報とともに避難勧告が出されていた。


『こちらは、緊急放送です。只今。政府より、避難指示が、発令、されました』


スキー場や地域一帯に響く放送は、それを聞いていた住民の不安を煽っていた。


「何なの?」

「さぁ…?」

「「…」」


その緊急放送を聞き、不安になる愛結とさくら。その二人の横で少し鋭い目を見せる冬歌と沙耶香。


「緊急放送…」

「やっぱりね…」

「?」


携帯を触る沙耶香は画面を見せる。それはSNSに上がっていた投稿だった。


「露軍が紋別から上がって来たみたいね」

「え?どうやって千島列島を抜けて来たというの?」


そこで地理的な問題に疑問符が浮かぶと、沙耶香も軽く首を振って答える。


「分からない。だけど言えるのは、北海道にロシア軍が攻めてきた。と言うことね」

「「?!」」


沙耶香の結論にさくら達は驚くと、そこで冬歌が答えた。


「大丈夫よ。北海道には第七師団がいるから」

「そうだとも、明治以降から北の守護神として君臨し続けている新進気鋭の機甲師団だ」


やや胸を張って答える沙耶香に愛結は流石だと答えていた。そしてそんな彼女は続けて言う。


「取り敢えず、我々も取り敢えずは避難だ。幸いにも此処は戦場からはまだ遠い」

「ええそうね。最低限の荷物を持って避難しましょう」


沙耶香の意見に冬歌も頷くと、四人はスキー場を後に移動して行った。




そのまま部屋に戻った冬歌は至急、持って来ていた拳銃とSCARを確認する。


「少なくとも五〇口径拳銃弾使う筋肉バカよりはマシか…」


元々貫通力の高い5.7mmのこの拳銃弾を装填した自動拳銃の弾倉を確認する。


「いや、少なくとも冬歌も術師じゃなかったら満足に撃てなかったでしょうに」


その後ろで呆れた様子で荷物を片付けるさくら。冬歌との付き合いで色々となれてしまったのか、この手の問題が起こっても恐怖に怯えて動けなくなると言う状況ではなかった。何と言うか…少々申し訳なく思ってしまうのはなぜだろう?


「何気にさくらって酷い言い方するわよね。こう、一突きで深く刺さるようなさ…」

「え?そう?」


そこで彼女は軽く首を傾げた後に冬歌の今もかけている術の札を見ながら溢す。


「だって、まともに一本のスキーすら術無しでできないのはちょっと…」

「うぐぐ…」


致死量の毒のような何かを入れられたような感覚になりながら冬歌は準備を終えると、部屋の扉が開いてそこには沙耶香と愛結が立っていた。


「終わったか?」

「ええ、いつでも出られるわ」


肩から銃入りのボストンバックを掛けて答えた冬歌に沙耶香も軽く頷くと立ち上がった。


「車はやめておきましょう」

「そうだな、街はすでにグリットロック状態だ。ヘリを呼ぶにも呼べん状況だしな…」

「ですね、すでに函館付近以外に避難指示が出ている以上。空軍の戦闘機が殺到するでしょうから…」


そう言った瞬間、丁度スキー場を横切るように戦闘機のジェット音を聞いた。


「戦闘機か…」

「この音はF-2ね」

「…本当に戦争なんですね…」

「何だか…実感が湧かないのに怖い…」


最後のさくらの言葉に冬歌達も納得していた。いくらSNSなどの情報がすぐに回る優秀な環境があるとは言え、自分たちの直接知らない場所で起きている事実に『見えない恐怖』と言うのを感じざるを得なかった。






====






「方位二二〇!距離二千!APFSDS装填!」


ロシア軍迎撃の為に出撃した第71戦車大隊は遠軽町付近で敵戦車部隊と交戦に入る。


「発射!」


最新式の10式戦車から放たれる砲弾は進撃中のT-72に命中するとそのまま貫通を起こして停止する。


「命中!続いて撃て!」


そしてそのまま次の砲弾が装填されると砲撃が飛んで行く。


「よし、このまま行くぞ。砲兵、グリットB4に砲撃。効力射、撃てっ!」


その瞬間、後方より99式155粍自走砲が砲撃を開始。侵攻してくすロシア軍歩兵部隊に攻撃を加える。


「空爆入ります!」

「対戦ヘリ小隊、間も無く現着」


その瞬間、AH-64EJが山の向こうから現れる。


「CP、こちらA01。射撃目標視認」

『了解、こちらCP。直ちに攻撃を開始せよ』

「A01、了解。射撃を開始する。射撃開始」


そして攻撃ヘリコプターからチェーンガンの射撃と、対戦車ミサイルの攻撃が飛んでいく。


「敵歩兵部隊、撤退を開始」

「よし、このまま押すぞ。北千歳の砲兵隊に連絡。攻撃開始」


旭川の司令部では刻々と変わる戦況に随時対応する必要があった。




北千歳駐屯地

第129ミサイル砲兵大隊所属 M270 MLRS


「射撃開始!撃てぇ!」


その瞬間、MLRSより長距離ミサイルが発射され。大きな煙が上がる。


「88式地対艦ミサイル。全弾発射!!」


そして同時刻に今度は艦隊に向かって長距離対艦ミサイルが発射されていた。




同時刻 紋別市上空

千歳基地から離陸したF-2三機は爆装した状態で戦闘空域に突入していた。


「爆弾投下用意」


その中の隊長機が翼下にLJDAMを懸架していた。


「投下開始、了解」

「投下まで3…2…1…今」


そして落とされた爆弾はそのまま地上に精密に落下すると、海岸線沿いの集積所を綺麗に吹き飛ばす。するとそこでアラートが響き、敵の空対空ミサイルが飛んできた。


「コンタクト、戦闘開始」


そして向こうからSu-35戦闘機が接近してきて空対空ミサイルを放ってきた。




上陸したロシア軍部隊は紋別に降りた後。順次侵攻を行なっていたが、上陸部隊は敵部隊の抵抗に遭い。その数を徐々に減らしつつあった。


「第一戦車小隊…壊滅」

「敵のミサイルです!」


その瞬間、浜辺にいた揚陸艦に88式地対艦ミサイルが着弾し、大爆発して炎上する。


「ニコライ・ヴィルコフ、被弾。炎上中!」

「消化を急がせろ。上陸部隊はどうなっている?!」

「現在、遠軽町付近で日本軍と接触。戦力は拮抗しているようです」


報告を聞くと、レーダ要員が叫ぶ。


「敵航空機群接近!」

「数は?」

「小さいです。数三十!」

「…無人機か」


するとそこで新たに士官が情報をもって艦橋に上がってきた。


「司令官、単冠湾より艦隊が進行中です」

「来たか…」


予定通りだと司令官は思うと、指示を飛ばす。


「艦隊を迎え撃つ。動ける戦闘艦は移動しろ」

「はっ!」


そして現在で戦闘可能はロシア艦隊の旗艦ヴァーリャクや僚艦の駆逐艦数隻は転舵をしていった。

そして艦隊が動いたのを当然、ロシアの補給艦に乗るセッテ達も見ていた。


「日本の艦隊が来ているみたいだねぇ」

「どうする?」

「うーん、此処で挟まれると僕たちも危ないからねぇ」


四人はそこで少し話し合い始めていた。






同時刻 国後水道

日本帝国海軍 第四艦隊旗艦『葛城』


単冠湾海軍基地より緊急出航した航空艦隊。その旗艦である葛城では運用要因がカタパルトを動かしていた。

大鳳型より発展した形状を持つ船体は雲龍型軽空母と名乗っているが、全長が三〇〇米を超える事から海外では専ら正規空母扱いをされていた。


「艦載機、全機発艦開始!」

「対空、対潜警戒を厳となせ」


カタパルトから艦載機のF-35が発艦していく中、艦隊司令は軽く愚痴っていた。


「千島列島を抜けて来たのはなぜだ?」

「何かの方法でレーダーが阻害されたとしか…」

「…まずは露軍を叩き潰した後の話だな」

「無人攻撃機、発艦します」


そう言うと、甲板に無数の小型のジェット無人戦闘攻撃機が発艦準備を進めていた。これは、元は米国で開発が中止されたX-47Bを改良した20式無人戦闘攻撃機『雷龍』と呼ぶUAVであった。


『艦載機。全機発艦始め!』


その瞬間、カタパルトから艦載機が準備飛び立っていった。

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