189話
「俺は学生時代に戻ってもう一度やりたいことがある」
「その流れ前もなかったか?」
「ネタがないんだろ」
「おい、聞こえているからな。まぁそれはいいとして。修学旅行があります」
....
教室に沈黙が流れる
「なんで無反応?」
「だって知っているから」
「今どきの高校生はノリが悪いな」
そう。うちの学校は3年生のGW明けから修学旅行がある。
入学式が終わって新入生は学校に慣れ始め、西村さんと村野の問題も一件落着した。
敬都が村野に殴られた傷も癒えて、鏡さんと初々しい空気をまき散らしていた。
そのたんびにさくらさんにいじられていたけど。
西村さんはあの日以来、どうしてかドラムを始めたらしい。
理由をきいたら「内緒」と言われたが
おそらく桐生さんの影響なんだろうなと思っている。
西村さんも桐生信者になってしまっているのだろう。
黒崎さんも弾き語りしている人がこんなに近くにいるなんて思っていないだろうな。そのうちばれるだろうな。
ちなみに村野はあれから学校にはきていない。
どうなっているかは知らないが転校はしていないらしい。
相方は教室の隅でいつもぼっちな学校生活を送っている
「今回の修学旅行の行き先は....」
「行先は?」
「長崎だ」
うちの学校は毎年修学旅行の行き先が違うから当たり年とそうでもない年があると上級生が嘆いているのを聞いたことがある。
長崎って何があるんだ?
「長崎って俺いったことないな」
「調べてみようぜ」
「ハウステンボスがあるじゃん」
「最近スタジアムシティってサッカーのスタジアムとバスケのアリーナができているらしいぞ」
「そこいってみたかった」
俺も長崎はいったことないがハウステンボスやスタジアムシティのことは知っている。JリーグやBリーグをみていたら長崎の話はよくでてくる。
一度行ってみたいと思っていたから嬉しい。
ハウステンボスは光の王国みたいなのは気になるけど、この季節やってんのかな?
「長崎って冬くんが前に住んでいたところじゃない?」
確かに!!
さくらさんが冬くんに尋ねる
「うん...そうだね」
「久しぶりの凱旋だ」
「大げさだよ」
少しだけ冬くんの返事がぎこちないように感じるのは気のせいだろうか。
確か、冬くんのお父さんは今も長崎に住んでいるんだよね
ホームルームが終わり、たまたま下駄箱で冬くんに会って一緒に帰ることになった
他の人はみんな用事でそれぞれ帰っていった。
俺たちはいっしょにはいるけど、いつも一緒というわけではない。
「冬くん、なんかあった?」
「どうして?」
「なんか、長崎って聞いてからぎこちないような気がしたから。気のせいだったらごめん」
愛は話を聞いている
「さすが松岡くんだね。なんであんなちょっとのことで気づいちゃうかな」
「多分、さくらさんは気づいていたと思うよ。あえて言わなかっただけで」
「そっか。さくらさんだったらそうかもね」
「それで何かあったの?」
「何かあったわけじゃなくて、僕は逃げるようにこっちにきたけど、お父さんとは何も解決していないんだよね。だから長崎ってきいてうしろめたさを感じた感じかな」
「どうして?」
愛が冬くんに尋ねる
急に話し出すからたまにびっくりする
「結局この恰好のことも認めてもらわなかったし、僕のせいじゃないのはわかっているけど、家族をバラバラにしてしまった理由の一つだと思うし」
「じゃぁ話せばいいんじゃない?」
「話す?」
「うん。冬くんのお父さんは長崎にいるんでしょ?なら修学旅行の自由行動のときに話して解決してしまえばいいよ」
「愛、簡単に言っちゃダメだよ」
「どうして?」
そんなまっすぐな可愛い顔でみないで
「愛も最近までお母さんと上手に話せなかったでしょ?」
「うん」
「それと一緒だよ?」
「一緒なの?」
冬くんのほうをみる
困った顔をしている
「でも、嶋野さんの言う通りかもね。もう一度話してみようかな」
「それがいい」
えっ何?愛の言葉には力が乗っているの?
「ありがとう嶋野さん」
「気にしないで。案外話してみれば変わるもんだよ」
いや、真紀の件では本当にお世話になったけど、それまでため口でも話せないようなぎこちない関係だったよね。
愛の自信はどこからくるの?
「でももう少しちゃんと考えてみるね」
「うん」
そういって冬くんと別れた
「愛ってすごいよね」
「みっちゃんのほうがすごいよ」
「いや愛のほうがすごいよ」
「みっちゃん、GWお母さん帰ってくるから予定空けててだって」
「うん。愛はやっぱりすごいよ」




