173話
「新1年生のみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんにとって高校はどのような期待を抱いてこの場所に立っていますか?私も2年前は同じ場所にたって夢や希望を抱いて立っていたと思います。はっきり言います。中学と高校は違います。人間関係や勉強面はもちろんですが、なによりも社会との距離が近くなります。1年生だから大丈夫ということはありません。みなさんも3年後にはそれぞれの進路に向かってここを飛び立つことになります。だから私から言えることは、何かあればいつでも先輩を頼って楽しいときは思いっきり楽しんで悩むときはしっかり悩んで最高の高校生活を送ってください」
生徒会長の言葉に体育館全体から拍手が響き渡る
確かに今の生徒会長の話は3年生目線で聞いていてもいいと思った
「みっちゃん、お腹すいた」
「えっまだ11時だけど」
「なんか今日はお腹がすく日みたい」
「それなら後からガムあげるよ」
「さすがみっちゃん」
隣にいる学校No1人気といっても過言ではない俺の彼女である「嶋野愛」は今日も通常運転だ。
きっと生徒会長の話もきいていなかったんだろうな
「こら2人とも!!後ろから真紀ちゃんたちがみているんだからちゃんとしなさい」
しっかり者のさくらさんに怒られる。これも日常の光景だ
「いや、俺じゃなくて愛がお腹すいたっていうから」
「言い訳しない。それで瑞樹も愛ちゃんを甘やかすからどんどん自由人度が増しているんでしょ」
「それはそうかもしれないけど」
「さくらさん。それぐらいにしておかないと、さくらさんのほうが目立ってしまっているよ」
後ろから冬くんが注意する
多分新入生はめちゃくちゃかわいい女の先輩と思っているんだろうな
「どうして冬くんが私を注意するの?悪いのはここの2人でしょ」
「まぁそうかもしれないけど、ここだけの構図をみればさくらさんが口うるさい人にみられるから僕はそれが嫌だなと思って」
冬くんの言葉にさくらさんは少し無言になってうなずいた
さくらさんは冬くんには弱いんだろうな
なんかあったら冬くんのところの逃げる事にしよう
「瑞樹、今何か悪いこと考えているでしょ?」
「何も考えていないよ」
「ねぇみっちゃん!!お腹すいたってば」
おいおい。
ここの空気を作った本人はマイペースを貫いている
「あっポケットに飴が一つ入っていたからこれをこっそり食べていてね」
「わぁい。みっちゃん好き」
可愛いな。
こんな可愛い彼女がおねだりしてきたら甘やかすのは男だったらわかるよね
「はぁ...」
さくらさんは俺たち二人をみて呆れている
「瑞樹さんや」
「どうした敬都さん」
「あなたたち目立ちまくっているから静かにしたほうがいいのでは」
後ろからの敬都の言葉でふとまわりを見ると
体育館の視線がこっちに集まっているような気がした
そして端に立っている担任がすごい顔でこっちをみているような気がする
俺はとりあえず何もなかったように前を向く
「この男何もなかったていにした」
「愛様今日も可愛いです」
なんか後ろから違う言葉も聞こえるけど、今日も俺の周りは通常運転だなと再認識した入学式だった
入学式が終わってホームルーム前に担任に普通に怒られた
しかも俺だけ
「どうして俺だけ怒られるんですか?」
「そりゃお前は嶋野の保護者的な役割だろ。ちゃんと保護者の監督不行き届きだ。他の先生の中でも嶋野のことはまず松岡に言えという暗黙のルールがあるみたいだぞ」
「なんて理不尽な」
「まぁそれだけ学校側としてもお前たちのことを認めているって思っておけばいいんじゃないか」
「なんかいい感じに俺になすりつけていませんか?」
「ばれた?」
こいつ...って心の中では思ったが、まぁ正直悪い気もしないからよしとした
愛の保護者か。あながち間違ってはいないような気がする
「お兄ちゃんたち目立ちすぎだから」
帰り道、真紀と黒崎さんと合流した俺たちはみんなでファミレスにきていた。
「確かにお兄さんたち目立ってましたね」
「俺としては目立つつもりがあるわけじゃないんだけど。俺たちのクラスってなにもしなくても目立っているんだよね」
「それはわかる。愛ちゃん、さくらさん、天音さん、鏡さん、そして冬さんも含めて学年の中でも美人が揃いすぎている」
「えっ僕も美人の中に入れてくれるの?嬉しいな真紀ちゃん」
「いや冬さんは無条件で美人に属していますか」
「むしろ、私たちの学年の人は冬さんが男って気づいている人ほぼいないと思いますよ」
「嬉しいな」
冬くんがニヤニヤしている
うん。可愛いな
「みっちゃん?」
「何?」
「今冬くんみて可愛いなって思っていたでしょ」
「その心読むのは技なの?」
「みっちゃんのことななんでもわかるんだよ」
「それはどうして」
「そこに愛があるから」
「素直にそういわれた照れるな」
「ねぇ真紀。あんたのお兄ちゃんたちは0からイチャイチャと作り出せるの?天才なの?」
「それは私たちもずっと思っている」
「まぁこの二人の世界には誰も入れないから隔離しておけばいいんだよ」
さらっとさくらさんがひどいことを言っているような気がする
それから俺たちは2時間ぐらい何気ないことを話して解散しようとしてふと外をみると知っている人が歩いていた
「あれは西村さん?」
「西村さん?」
隣にいる敬都が反応する
「そうそう。職場体験の時にお客さんで来ていて西村さん春休みやっていたコンビニのバイトで一緒だったんだよね」
「そうなんだ。って今隣に来た男って」
「村野?」
冬くんが転校してきたときに女装の写真をさらして冬くんを貶めようとした2人のうちの1人の村野が西村さんと歩いていた。
あの日以降2人とも教室の隅でひっそりと学校生活を送っていたが
確かにコンビニで働いているときに恋愛したいみたいな話はしていたが、いつの間に彼氏ができていたんだろう
まぁそれを俺がとやかく言うほど西村さんと親しいわけではないけど。
「ねぇみっちゃん?」
「西村さん全然楽しそうじゃないね」
「えっ」
確かに付き合い立てのカップルにしても西村さんの表情は少し暗いように感じた
「恋愛は人それぞれなんだよ」
「そうなんだね。私だったらみっちゃんの隣にいるだけでニコニコだけどね」
そこには太陽のように眩しい笑顔があった
「2人ともイチャイチャせずに帰るよ」
桐生さんから注意される
最近は桐生さんからも遠慮がなくなってきた
「じゃぁ桐生さんも手を繋いで帰ろう」
「えっ?」
「ダメ?」
「ダメじゃない」
「やったぁ。みっちゃんはこっちの手」
「最近この構図多くない?」
前に一度3人で手を繋いでから愛が気に入ったらしく
桐生さんもいるときは3人で手を繋ぐことが多々ある
「なんで3人で手を繋いでいるの?」
さくらさんが冷静な突っ込みを入れる
「愛がしたいっていうから?」
みんなが一斉にやれやれって顔をした




