34 確実に迫り来るものと対峙する覚悟
「で、この本に書かれてるのが、ローゼンに残ったレジェルの記憶だと」
俺は頬杖を突きながら呟く。
「ええ。でも、ローゼンの中に宿っているのはその四分の一。どちらかというと、レジェル本人よりも剣聖にまつわる話ね」
「で、嬢ちゃんが分かりやすく要約してくれたその本の内容は、アーク家が代々語り継いでるってことだろ?現物を勝手に持ち出して大丈夫なのか?」
俺の隣でシャナの話に耳を傾けていたアルファルド。
コイツの話に納得した訳ではないが、シャナを信じて、一応は敵じゃないという所は認めておいた。
「問題無いわよ。どっちみち、私に残っている時間は長くないのだし」
ふと、シャナに目を向ける。
シャナの、テーブルに広がる本を眺める瞳が上に向いて、俺と目が合った。
「私の覚悟を舐めないで」
サッと出てきたシャナの発言に、俺は呆気に取られた。
「ちなみに、死ぬことなんて気にしてないから。同情とか、要らないわ。何をしてもらおうが何も変わらないんだもの。それに、ローゼンと契約を結んだ時点で、私は自分の命を失うことを、受け入れた。それと比べれば、貴方が向ける労りなんて、かえって後悔の種になるかもしれない」
そうか。そうだよな。つい先日ローゼンと契約した俺とは違って、シャナはずっと前から向き合っていた。
どこからかも分からず、けれど確実に迫る、死を。
「グレイ」
アルファルドが俺の名を呼ぶ。
「言い忘れてたが、シャナ嬢の時間が尽きるまでの残り四日間。俺はシャナ嬢と二人で、お前の稽古に臨む」




